Nice to meet you , It returns !

はじめまして、おかえりなさい

 いとこのルキアが遊びに来るというので妹たちがやたらとはしゃぐ。
 それはいいのだが、ルキアが俺たちのいとこだったのは昔の話で、しかももともと血縁関係なんてものは存在していない。親の無かったルキアを伯父夫婦がひきとっていたのだ。
 ルキアだって、なにも生まれた瞬間から親がいなかったわけではなくて、ただ彼らには子供を育てるということができなかったのだ。シャカイテキジジョウなんだ、と、ずっと前にルキアは言った。意味はわからないけれど、そういうことなんだと、俺も納得することにした。
 そうやって丸くおさめてきたものを、いきなり沸騰させたのが、四年前、朽木という家だ。
 なんでもルキアの親は、2人ともその朽木につらなるものだったらしく、しかし一族の反対を押し切っての同族婚に、親族全員からつまはじきにされたのだという。古い言葉で言えば勘当。ポジティブに言い換えるなら駆け落ち。
 突然現れた朽木家の元当主(これもまた古い言葉だが本人が言うのだから仕方ない)いわく、一族の本家筋は、もうこの当主以外にいないらしい。皮肉なことに、ルキアの両親を勘当してより先に朽木家ではひとりの子供も生まれなかったのだ。不幸なことに、偶然が重なって何人かの人間が死んだ。前当主をはじめとした老人達が他界するのは目に見えていた。
 だから、代替わりしたのを契機に、数少ない本家筋のルキアを再び朽木に呼び戻したい、と。
 冗談じゃない、と俺は思った。捨てたやつらが、いまさら何を?
 しかし、伯父夫婦は了承したのだ。
 毒づいても俺はただのガキだった。ルキアは、朽木ルキアになった。戻った、というべきか。
 あれからの四年、まるで隔離されたようにルキアとは会っていない。
 実際、意図的に離しているのだとは思う。だから余計に驚いた。遊びに来る、なんて。街中で偶然ばったり、とはワケが違う。そんな確実を朽木の当主は許すだろうか。
 さして年も離れていなかった男を思い出す。当主という古めかしい言葉に違和感を感じさせない空気。異常なほど整った造作の持ち主。そこにはたしかに、ルキアの面影がある。
 到来する夏は、妙な不安ばかりを抱かせて近づいてくる。
「一護」
 いつのまにか電車は駅を出ていて、かわりに、白いワンピースを着た少女が、困惑を浮かべて経っていた。記憶の姿とは変わっていたけれども、ルキアだ。
「一護。その、…」
「おかえり」
 絡み付きそうな沈黙の気配ごと台詞を奪うと、ルキアは一瞬きょとんと目を見張って、それからすぐに笑った。うれしそうに、しあわせそうに、見たこともない笑顔を浮かべた。
「ただいま」

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