ナンパ師の称号は伊達じゃない、と確信している。
 だって女の子なんて馬鹿みたいにころころと感情を変える生き物だから、揺らぐポイントを見定めて、ちょっとこっちに目を向けさせれば一発で落ちるのだ。打率維持よりベリーイージー!
 そんなこんなで冗談半分に狙い始めたマネージャーは意外に手ごわくて、そろそろ本気でいってみるKa?とか思っていた矢先、そんなの全部ふっとぶような女が現れた。そう、ありきたりな女の子じゃなくて。
「腐るほど甘やかしてみて」
 しかたなく俺は「腐るほどの甘やかし」の一環として座り込んだと目線をあわせるためにしゃがみこんだ。そのままキス、もちろんお姫様向けトクベツ仕様の甘いやつを。
 は俺の顔を両手ではさむと、酔った様子もなく、物怖じせずにこう言った。
「それが君の花束なの?」
 言葉は会話の流れを無視してするりと流れた。
「おまえ、今度の休みは予定空けとけYo?」
「いいね」
 はじめてにこりと笑って、は立ち上がり俺を見下ろす。離れた距離に風が吹く。
「ファーストからホームに逆走するような馬鹿じゃないと信じてるよ」
「…HA!」
「ちゃんと回り込んであたしを落としてごらん。虎鉄君」
 ファースト、セカンド、サードで俺たちはどこまでいけるんだろう。
 技巧派の花束なんてかなぐり捨てて、狙うはスライディングでホームイン!

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