--- 『男ってよく分かんない』 『女ってよく分かんない』 ---

恋人同士が喧嘩したり不安になると口にする言葉。




「もうっ!!ヒサシ君って何考えてんだか意味分かんないよ!!」

「俺だって、ジロウの事なんて全然分かんねぇよ」



喧嘩した。

理由は、結構小さな事。

普段ならそんな事では喧嘩なんかになんないけど、

今日の僕は何だかイライラしてて・・・。

今日だけじゃなくて、ずぅっとイライラしてた。

その原因は、一応僕の恋人であるヒサシ君。

何でヒサシ君が原因なのかって言うと、

それは、ヒサシ君が何考えてんのか全く分かんなくて、

僕の事、本当に好きなのかも分からなくて。

色々分からない事だらけで。

分からないから自分なりに考えてみたりして、

でも、それでもやっぱり分からなくて。

何回考えても全く分かんなくて、それでイライラしちゃって。

今日の喧嘩は、ヒサシ君への八つ当たり。


「・・・って事なんだ」

喧嘩した僕は、ヒサシ君の家から飛び出し、

その足でテル君の家に押しかけた。

今まで、僕の話をジッと黙って聞いていたテルが口を開いた。

「ん〜・・まず俺が言える事は、ヒサシはジロウの事を好きだって事」

「そんな事ないもん!!・・だって、僕がヒサシ君ちに遊びに行っても、

 ずっとパソコンいじってるんだよっ!!」

自分でそう言って、結構ソレって惨めだな・・って思って

少し泣きそうになった。

「う〜ん・・でも、ヒサシの性格上、嫌いな人と遊んだり、

 ましてや自分の家に何か入れないと思うんだ。

 だから、ヒサシはジロウの事が好きなんだよ」

テルはいつものテルスマイルでそうハッキリ言ってのけた。

この笑顔は、何だかとっても落ち着く。

「後ね、俺思うんだけどね、ヒサシの事全部分かんなくてもイイと思うよ」

「え?」

「俺だって、タクロウの事全部分かってるわけじゃないし、

 たぶん分からない事の方が多いと思うよ」

「・・・テルは、不安じゃないの?タクロウ君の事全部知りたいって思わないの?」

「知りたいなぁ〜とは思うけど、不安じゃないよ。

 だって、俺はタクロウの事が好きだし、タクロウは俺の事好きだもん」

そう言って、テル君は照れ笑いをした。

イイなぁ、お互い好き同士で。

僕とヒサシ君なんて・・・

「僕とヒサシ君なんて、きっと、僕が一方的に好きなだけで・・・」

「もうっ!!またそんな事言う!!・・・なんなら、実験してみようよ。

 ヒサシがジロウの事好きかどうか・・・そろそろ来る頃だし」

「え?」

--- ピンポーン ---

・・・ガチャッ

「おい、テル上がるぞ」

「え?!ヒサシ君??・・・・・うわぁっ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい、テル・・・テメェ何やってんだ?」

ヒサシ君が見た光景は、

テル君が僕を押し倒して馬乗りになってる光景。

・・・もう、一生の終わりだ・・・

ヒサシ君完全に僕の事嫌いになっちゃうよ・・・。

「あれぇ?ヒサシ来るの早かったねぇ〜」

そう言いながら、テル君が僕の上からどいた。

・・・テル、次やったらただじゃ済まないから・・ジロウ帰るぞ!!」

そう言ってヒサシ君が僕の腕引っ張って連れて帰ろうとした瞬間。

テル君は僕にしか聞こえないように小さな声で、『お幸せに』と言った。








「・・・喧嘩した時さ、俺の事分かんないって言ったよな?」

ヒサシ君の車の中。

長く続いた沈黙をヒサシ君が静かに破った。

「・・・うん」

「イイんじゃない?それで。俺だってジロウの事分かんないし」

「え?・・・どういう事?」

やっぱり・・・もう嫌われちゃったんだ。

僕達別れちゃうんだ・・・。

「だから、今すぐお互いの事分かんなくてもイイんじゃない?って事。

 ちょっとずつ時間掛けて分かってけばイイじゃん。ジロウも俺も」

そう言って、ヒサシ君が笑った。

久しぶりに見るヒサシ君の笑顔。

・・・ねぇ、それってさ、これからもずっとヒサシ君のそばに居てもイイって事?

「・・・そばに居てイイの・・?」

僕がそう言うと、ヒサシ君は笑いながら

「当たり前じゃん。何言ってんの〜??」

そう言って、僕の頭を撫でた。






僕さ、ヒサシ君と好き同士みたい。

だから、もう不安じゃないよ。

後ね、今日ヒサシ君の事少し分かったんだ。

いつでも、無表情で自分の感情をあんまり出さないと思ってたけど、

ヒサシ君のあんなに怖い顔初めて見たのと。

後ね、以外にイッパイ笑うってこと。

これからも、こんな感じで付き合ってけばイイんだよね?







--- 『男ってよく分かんない』 『女ってよく分かんない』 ---

好きだから、相手の事を知りたくなる。

でもね、焦んなくてイイんだよ。

ちょっとずつ相手の事知っていけば。

その方が、恋愛楽しそうじゃない??

                                byテル
あとがき。

蝶姫は、「男って何考えてるか分からんっ」ってたまに言います(笑)
メール来なかったりするとね(笑)
でも、やっぱり相手が何考えてんのか分かった時嬉しくなりますね。
それがイイんですよねぇ??テルさん??(笑)

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