「ケンちゃん。俺な背中に刺青いれた」
そう言って、ハイドが俺に背中を嬉しそうに見せてきた。
背中には、天使の羽が描かれていた。
正直驚いた。
・・・あまりにも似合いすぎて。
「ケンちゃん・・・泣いてるの?」
ハイドに言われるまで気付かんかった。
何故だか分からんけど・・・涙が出ていた。
何故だろう・・・?
羽が・・・天使の羽が・・・
今にも羽ばたきそうで。
何処かに、飛んで行ってしまいそうで・・・。
俺の元から居なくなってしまいそうで。
俺なんか居ない、何処か遠くに飛んで行ってしまいそうで・・・。
だから・・・涙が出たんやと思う。
「ハイド・・・何処にも行かんで・・・」
今の俺は、すっごく情けなくて格好悪くて。
でも、そんなんどうでも良かった。
「ケンちゃん?・・・俺はずっとケンちゃんのそばにおるで?」
ハイドが俺の涙を手で拭う。
「羽・・・飛ばんで・・・俺のトコから飛んでかんで・・・」
思った事をそのままハイドに言う。
馬鹿だと馬鹿だと思われてもいい。
・・・ハイドが優しく微笑んだ。
「何言うてんの?この羽はな。
何処に居てもすぐにケンちゃんのそばに戻って来れるようにつけたんやで」
そう言って、ハイドは俺を抱きしめた。
「俺がケンちゃんから離れるわけないやろ?」
安心したのか、涙が止まらなかった。
「・・・なんや俺、めっちゃ格好悪いやんっ」
「そうやね。でも、そんなケンちゃんも大好きやで」
いつまでも、いつまでも涙が止まらなかった。
----2年後。
ハイドは飛び立った。
白くて綺麗な翼を生やし。
俺の手が届かない場所へ・・・・。