「テッちゃんっ!!」
釈放されたハイドは近くに繋いでいた馬に乗り、
吹雪の中テツを探し、やっと見つけました。
「・・・ゴホッ、ゴホッ・・・ハ、イドっ?」
テツはとても弱っていて、凍るように冷たくなっていました。
「テッちゃんっ。家に帰るんや」
ハイドはテツを馬に乗せ、急いで家に帰りました。
「ハイド、よくあのお城から脱走してきたな?」
ハイド達は家に帰ってきて、テツの体力も大分回復してきました。
「違うんよ。俺は釈放されたんや」
ハイドがそう言うと、テツは信じられないといった顔をしました。
「ほんまに?!あの凶暴なやつから?!」
「今は違うんよ。あんな・・・」
ハイドが今までのお城での事をテツに話そうとしました。
すると、ドアをノックする音が聞こえてきました。
「はーい。どちら様ですか?」
ハイドが扉を開けると、いかにも怪しそうな男が立っていました。
その人は、サクラが計画した作戦の協力者でした。
ハイド達が帰ってきたのを確認したサクラは、
計画を実行したのです。
「私は、トロール精神病院の者ですが。テツ様を引き取りに参りました」
その男は計画通り、精神病院の者と偽りハイドを騙そうとしました。
「え・・なんで?テッちゃんが・・・そんな筈はありませんっ」
「そんな事言われてもですね。テツ様が森の中にお城があり、
そこには、喋る燭台が居るとか、凶暴な王様が居るとか、
変な事ばかり言っていて異常だと、町の人から苦情がありましてね」
「そんなっ・・・テッちゃんの頭は正常やっ!!お引取り下さいっ」
そう言ってハイドはドアを閉めようとしました。
「困りますよ」
怪しい男がそう言うと、他にも人がやってきて、
無理やりテツを連れて行こうとしました。
「なんやっ?!やめろっ!!」
テツが必死に暴れて抵抗します。
「待ってやぁっ!!」
ハイドが止めようとしたら、横からサクラが出てきました。
ここまでは、計画通りです。
「待てハイド。俺ならテツを助けてやれるぞ」
サクラがそう言うと、ハイドがサクラの服にしがみ付きました。
「お願いっ!!!助けてや!!サクラっ」
ハイドが必死にそう言うと、サクラはニヤッと笑いました。
「ハイドが、俺と結婚するなら助けてやる」
ハイドは悩みました。
(サクラと結婚なんて死んでも嫌だ。
でも、テッちゃんを助けたいっ・・・)
悩んでいるハイドを見て、サクラはとどめとばかりに、
テツに聞きました。
「なぁ、テツ。あのお城には何が居るんだ?」
テツが答えます。
「話す燭台や時計・・・とにかく色んな物が喋ってて、
それに、あの凶暴でわがままな王様!!
あんな王様は見た事がないっ!!・・・あの、凶暴さと言ったらっ」
そこまでテツが言うと、町の男達がテツを馬鹿にして大笑いをしました。
「あっはははは!!!そんなのあるわけないじゃないかっ!!」
「そんなのあるわけないだろ!!早く行っちまえ!!」
それを見たハイドは、我慢できなくなり、叫びました。
「テッちゃんの言う事はほんまや!!!嘘やないっ!!!
俺もそのお城に居たんやっ!!!」
ハイドがそう言うと、町の男は笑うのをやめました。
ハイドに惚れている男が多かったので、ハイドに嫌われたくないと思い、
その男達がハイド信じたのです。
サクラもその一人。
「もし、ハイドの言う通りだったら、その乱暴でわがままな王様は、
この町を自分の物にしようと、町を襲ってくるぞ!!」
サクラの言葉を聞いた男達は、
口々に、『そいつを殺せ!!』と言いました。
「みんなで、王様を殺すんだ行くぞっ!!!」
サクラがそう言って、森へ歩いて行きました。
男達もサクラの後を着いていきます。
「待って!!みんな待ってやぁ!!ケンちゃんはそんな事しないっ!!」
ハイドが必死に止めても、もう遅く。
サクラと男達は森の中に入っていき、
サクラの命令でハイドとテツは家に閉じ込められてしまいました。
外から鍵をかけられ出ることができません。
「ごめんな・・・ハイド、俺のせいで」
テツが謝ります。
「ええんよ・・・。テッちゃんのせいやない」
二人が暫く黙っていると、ハイドの鞄の中から、
モゾモゾと何か出てきました。
「・・・ふぅっ・・・」
「チップ?!」
出てきたのはチップでした。
「ねぇ、ハイド。お城にはもう帰って来ないの?」
チップが寂しそうに聞きます。
「そんな事あらへんよ。・・・ここから出られたやけど・・・」
ハイドがそう言うと、チップは喜びました。
「分かった!じゃぁ、僕がここから出してあげるっ!任しといて!!」
そう言うと、家の隙間から外に出ていきました。
外に出たチップは辺りを見回します。
すると、変てこな機械を発見しました。
それは、テツが発明大会に持って行こうとした、発明品の『自動薪割り機』でした。
チップは自動薪割り機に登ると、ヒモみたいのを引っ張りました。
すると、自動薪割り機が動きました。
「やったぁ!レッツゴー!!行っけぇ〜」
自動薪割り機は、ガションガション動きながら、
ハイドとテツが閉じ込められている家に突っ込みました。
-----ドッカーン
爆発音とともに、家がバラバラに壊れてしまいました。
「あぁ〜・・・こんな事するはずじゃなかったのにぃ・・・」
とにかく、家から出れたハイド達は、
急いでお城に向かいました。
『サクラの作戦』