欲望―Loss of Memory
がアイツを忘れたと知った時、
心配する反面、喜ぶ自分が居た。
なんて私は嫌な人間なのだろう・・そう思いもしたが、
結局は人間は欲まみれの生物だった。
私はを手に入れたさで欲望に支配されているのだ。
欲望
「ね、ロイ。」
「なんだ?」
「今日、お風呂貸してくれない?」
何を言い出すやら。
私を誘っているのかね?
そう言ってやりたかった。
「なにかあったのか?」
「それがね、お風呂が壊れちゃって、今水しかでないの!・・ダメ?」
お願い!と手を合わせられると私も断るわけにいかない。
否、最初から断る気など満更無かったと言った方が正しいか。
「いや、構わないが。」
「なら、一緒に帰ろうね。」
「暗くても大丈夫なのか?」
「ロイが居てくれたらバッチリOKだよ!」
入院した日以来、は暗闇を恐れた。
しかし、笑うに私は納得した。
こんなことを何も違和感無く尋ねられるのは異性として見られていないためか、誘惑しているのか。
大方、後者はないであろうが・・・・。
「補佐官、私は出かけてきます。大佐の見張りをお願いしますね。」
ホークアイ中尉の声が聞こえた。
「は〜い!任せてください。」
はそう言って私を見た。
「ってことだから、デスクから逃がさないよ。」
書類の束を私の前に置き笑う。
それと同時に12時の知らせが鳴る。
「さぁ。昼食を済ませようか、。」
「・・・食べたらちゃんとやってよ?」
「ちゃんとやるさ。」
2人で昼食を食べに行く。
それは恋人のようで、それでも違って。
ただ、見かけの恋人で・・・私が望んでいることで。
「でね・・ってロイ聞いてる?」
「聞いてるさ。」
「勤務疲れってことは無いよね。」
「失礼だな。私だってやるときはやっているじゃないか。」
「戦闘ならね。」
「相変わらず口がきついな。」
でも、そんなところさえ愛しかった。
意地悪そうに笑う彼女が大好きだった。
「ね、ロイ。」
「なんだ?」
「私、誰を忘れたのかなぁ?」
その言葉は私を現実に引き戻す。
例え、他から見て恋人でも本当は違って。
ただ、現実は望みどおりにいかない。
「・・・・・思い出さなくてもいい。」
その言葉が精一杯だった。
名前を言うとはきっと思い出すから、
名前を出すと私が嫉妬に狂ってしまいそうだから、
「そっか・・・。」
それ以上聞かないも
それ以上話そうとしない私も
2人とも
何か望みを持っていて
その形が違うけれども
ただ、
2人がお互いに持つ欲望は
神が嫌う汚いものでしかなかった。
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