熱烈なプロポーズを酔いに任せて受託したあと、もう少し一緒にいたいという和彦に連れられて近場のコーヒーショップに入った。
そこで昔話や近況のことなどをポツポツを話して、そろそろ時間だから帰ろうと提案したら、飲みかけていた温いコーヒーをワンピースに零された。盛大にだ、この酔っ払い!
慌てた和彦がすぐに染み抜きをしなければと、半ば強引にお高いホテルにももこを連行してきたのが先程の話。速攻でクリーニングサービスにワンピースを預けると、下着まで濡れてしまったからそれも脱いで手で洗った。ついでに化粧も落としてシャワーも浴びて。

そんなわけで今のももこは、真っ裸にバスローブ一枚を引っ掛けただけのアラレのない姿になっているのだった。




「で、なんでアンタもバスローブなのさ」
「僕だって寛ぎたいじゃないか」
「いやいや、下着まで脱いでる意味がわかんないし」
「酔っ払っているのさ、ベイビィ」
「裸族か」
「キミとならそれも悪くない」
おいでと手を伸ばされても、はいそうですかとすんなり応じられない程度には酔いは覚めていた。
だって今日久しぶりに再会した同級生で、いきなりこんなシュチュエーションに放り込まれてもそんな気になんてなれるわけがないじゃないか。
「キスしたい」
「そのままなし崩しにやられちゃうのは嫌なんですけど〜」
なし崩しなんて、と言いながら和彦はももこの手を引いた。強い力に抗えず、抱きすくめられる。和彦の硬い胸板にももこのささやかな胸が柔らかく押しつぶされた。
「してもいい?」
「ダメ」
「キスも?」
熱い息が顔に吹きかかる。もうアルコール臭は消えていた。むしろももこの方がビール臭いかもしれない。そうだ、きっとももこの方が今は酔っている。
鼻先が擦れるほどの近さがなんだかもどかしくて、残りの距離はももこが埋めた。
キスだけなら。キスしかしない。キスだけだから。
「ん────……」
振れるだけの口づけはたちまち深く絡み合う。僅かな隙間をぬって侵入してきた肉厚な舌が歯列を丁寧になぞり、上顎も柔らかく刺激してきた。喘ぎと息継ぎに精一杯で、つ、と唾液が細く零れた。

キスだけで、十分に蕩けさせられた。この男、かなり上手い。

「……結構遊んでるでしょ」
「昔の話だよ」
遠回しの肯定に苦笑した。
キスの途中で立っていられなくて椅子に座ったのだが、ももこは和彦の腰を跨ぐように座らされたおかげで直に和彦の昂りを感じていた。もう勃ち始めている。少し動いただけて挿入ってしまいそうだ。

心よりも身体は素直で────。
彼の肉棒が秘裂を擦った時、くちゅりと小さく水音がした。

「もう濡れてるの?」
「……アンタのキスのせい」
「それは、光栄だな」
なおも求められる唇。同時にバスローブの前をはだけられ、自慢出来るほど大きくない乳房が顕になる。膨らみをやんわりと包まれると、久しぶりに他人肌を触られる感覚に歓喜の混じったため息が出た。
「そう言えば恋人は?」
今頃聞くか。プロポーズを受けて二人で部屋に入ってから聞いてくるなど、野暮を越している。
「内緒」
「もしいても、キミを奪って僕なしではいられなくしてみせるから」
そう宣言してからの彼の舌と指の動きに、ももこは何度も高見まで上らされることとなる。

やわやわと形を変えられる胸も、ビクビクと震える腹も、暴かれた尻の丸みも濡れそぼった恥丘もその奥も。全て和彦の指が這い巡り、拡げてナカを掻き回す。
その度に情けないぐらい甘ったるい声を上げ、無意識に腰を振ってしまうのを止められなくて。
「もっと乱れて。恥ずかしいところを、僕に見せてごらん」
ベッドのシーツを握り込んだももこが涙目で見上げる男は、つい数時間前まではただの同級生だったのに。
今はももこの身体を好きにして、愛して感じさせて溢れせる人。
「いじわる……」
「なんとでも。愛してるよ、さくらクン。────いや」
秘所の入口に亀頭が擦りつけられる。早く圧迫して欲しくて腰を揺らすと、太いペニスで一気に埋められた。

「ももこ」
「……ッ、あ!」

名前を呼ばれただけで感度が一気に上がった気がする。
「────、力、抜いて。もも、こ……」
貫いたはずの和彦の方が悩ましげに眉を寄せながら、ももこにキスの雨を降らせてきた。はあ、と大きく息を吐き出しながら、ももこを抱きしめる。
「……どした、の?」
「や、ちょ……、────悦すぎ、て」
「そんな、大袈裟な」
愛撫の仕方が経験の多さを匂わせる和彦に至って、身動きできないほどももこの身体が気持ちいいとは思えなかった。ああ、だがそういえば。
「ね。ゴムさ、つけた?」
急なことで避妊具を持っているのか。遊び人なら常にひとつやふたつ携帯してそうなものだが、挿入の前段階で彼がゴムを装着する仕草はなかった。ならば生の心地良さが和彦を襲っているはずである。
「つけてない」
「デキちゃう、よ……?」
「上等じゃないか。ももことの子どもなら絶対可愛い」
「いやいや、結婚前にそんな────」
「いいかい、ももこ」
ようやく身体を起こした和彦がももこの柳腰を掴んだ。期待にさらにシーツを握り込む。甘い予感に子宮が疼いた。
始まりはゆっくりとした律動。それでもみっちりとももこを埋める熱が膣内を擦ると、なんとも言えない快感に背筋が震えた。
「ァ、ん! んんッ、ふぁッ」
「結婚が、先か。子どもが、先か、なんて、ナンセンス、さッ」
やがて激しく腰をグラインドされると、ナカを抉られる気持ちよさに腰が浮いた。それ、弱い。力強いペニスでももこのナカを掻き回されると、それに合わせてももこの腰も動く。もっと奥を突いて欲しい衝動も、入口を焦らして擦ってほしい欲情も合わせてぐちょぐちょにされたいのだ。
「そこ……! ひ、ィッ、ちゃ────」
「結局、」
痙攣し始めたももこの膣に肉棒を埋めながら態勢を変えると、ももこに跨がせてキスをしながら下からも突き上げた。
「あ! あ! ィやッ、ア!」
「愛が、あれば、どちらでも、同じ、だッ」
ももこが上になることで更に深く和彦を咥え込む。奥へ奥へ。太い異物の苦しさがやがて歓喜の源となり、天地も惑うほどに、ももこの身体は快感に押し上げられていった。
「だめ、イッちゃ……ッ」
「何度でも」
一層奥を抉られ、突き抜ける悦楽に引っぱられてももこはあっという間に達してしまった。
同時に肉壁の締め付けにあった和彦も、容易く限界を手放す。
存分に膣の中に吐精されてももこが思ったことは、精液は案外熱くはないのだなということだった。


その後も繋がったまま触り合い、キスをしながら何度もセックスをした。一度ナカに出してしまえば、二度も三度も同じである。




既成事実が先か、愛情が先か。
そんなものは結局のところ結果論なのだと思う。



                                                了





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