闇夜

詩的に、おどろおどろしく、怖い童話みたいな、を目指しました

ざわり、ざわり。
女が近付く足音がする。
遠くをさまよっていたその音が、こちらの方へとやってくる。
どんどん、どんどんやってくる。

男はにたりと笑い、三日月の形に歪んだ口で酒をあおる。
辺りにたちこめる、酒の香り。
そこに混じるのは、男が発する、獣の匂い。
香りに酔い、匂いに惑い、女は自らやってくる。

ここはどこだろう、とか。
この甘い匂いは何だろう、とか。
わずかに残る自我のどこかで、うすぼんやりと思っていることだろう。
呼び寄せた女のその姿、綺麗な顔に瑞々しい体。
うっとりと見惚れた男は久しぶりに良質の獲物がかかった、とほくそ笑み、最後に一口、酒をあおった。

男が女に姿を見せた時。女が男の姿を見た時。
それがお互いの最後の時。

後に残るは、横たわる男の体。
傍らに転がる瓶には酒の残り香。
「さあ、何をして遊ぼうかねえ…」
女が紡いだ呟きは、それはそれは艶のあるもの。

新しく手に入れた女の体は居心地がよい。
今まで入れ物にしていた男の体を一度だけ振り返る。
狐は口を三日月の形に歪め、にたり、と笑った。

そして女は獣の匂いを身にまとい、夜の闇へと消えて行った。


某友人に頼まれて考えた、写真の添え物文章です。写真そのものを見ずに、言葉だけでどんな写真か説明してもらって、そこからイメージして書いたものなので、どこまで写真のイメージを崩すことなく引き立て役の務めを果たすことができたのか今でも不安です(苦笑)。
写真の詳細は「狐の面をつけた男と全裸の女。夜の山中、廃屋。男は浴衣をはだけていて、一升瓶を持っている」。ここに「女は始め狐が見えていない、けれど近くに狐がいる。最終的には女が狐憑きになる」という狐憑きなお話を、ということでした。



Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!