聞こえたならば かかってよ

フリでもいいから 

ボクの魔法に




 言葉の魔法




「あんたが好きなんだけど。」

本日15回目のその言葉。
うららかな昼の日差しさす木陰の下に少年はいた。

木の上にだらしなく腰掛けている人物は呆れた顔をして見下ろしてくる。その手
には14回目の言葉まで読んでいた本。

「なぁ〜にぃ〜?またそれ?」

間延びした声が耳に入る。かなりバカにしたというか本当に呆れたような声だっ
たがこっちを見てくれただけでよしとしよう。

「あんたが振り向くまで何度だって言ってやる。」

木漏れ日の差す木の上を見上げているせいで目つきの数段悪いオレを見て彼は笑
った。

「サスケ、ださい。」
「ださくて結構。あんたに対してオレはいつでも真剣なんだからな。」

こちらをおもしろそうに見下ろしていた彼はその言葉を聞いてフイと目を逸らし
た。

「誰だろうね、本当に。サスケのことをクールだなんて言うやつは。」

明らかに今の言葉には棘が含まれていた…気がする。だがオレはめげない。
あんたが好きだから。

「あんたが好きなんだけど。降りて顔見せてくれよ。」
「やっだね〜♪お前が来ればいいでしょ?」
「あんたこないだもそんなこと言ってオレがそっち行った瞬間突き落としただろ
。」

彼は声をあげて笑った。銀色の髪が揺れて日差しの中キラキラと光った。オレは
目を細めてそれを見つめた。

「アハハ、だ、だってあれはサスケが変なことしようとするからっハハ!」
「笑いすぎだろ…」

あ〜やだやだとかなんとか言ってまた本に目を落とそうとする。
こっち向けよ。

「本気で好きです。お付き合いしませんか!」

気を引くように無駄にでかい声でヤケクソに言ってみた。
頭上でぶっと吹き出す声が聞こえた。

「何それ?」
「プロポーズ!」

真顔で言うと彼は更に声をあげて笑った。オレは真剣なのに。
ふと頭上の影が揺らいだので顔をあげるとヒラリと舞い降りるカカシの姿が目に
入った。あんたは猫か。

「残念ながらそのプロポーズは受け取れまっせ〜ん♪」

彼は楽しげに目を細めつつ目の前でバツ印をくれた。

「なんでだよ!」
「サスケ君はまだ子供だからで〜す☆オレとのお付き合いはR指定〜」

アハハ〜と笑いながら背を向けた彼。

振り返れ。

薄情なその後姿を睨みつけ念を送ってみた。それが効いたのかカカシは立ち止まって少
しだけこっちを振り返った。

「ねぇ、こーいうのいい加減飽きない?」

さっきとはうって変わって冷たい声だった。やっと少しは本気になったか。

「飽きない。それにやめる気もない。オレはあんたが本気で好きだからな!」

また歩きだした彼の細い背中にオレは少し大きな声で答えた。

「あ、そ。」

返事はそれだけ。でもオレは知ってる。あんたの心が揺らいでいることを。
これを言ったらあんたは笑うかな?怒るかな?
自意識過剰だって言っていい。
厚顔無恥だって言ってもいい。
どっちにしたってオレは本気さ。生涯の恋をあんたにかけてる。

オレはあんたの心を揺さぶるであろう言葉をその背中に投げかけた。

「あんたはオレを好きになる!!」

いつか覚えてろよ。すぐにあんたなんか追い抜かしてやるんだからな。
ヒラリと振られた白い手をいつかつかんでやろうと思った。





唱えてみよう

魔法の言葉

『愚かな僕に恋をする。』

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