―――   藍染×雛森  著者:570様   ―――



藍染隊長の用意してくれた布団にもぐりこむと、何故だか急に切なくなった。


 「 あばらいくん… 」


何度言ったか分からない、
その名前にどんなに深い想いが募っているのか自分ですら理解できない一言を呟く。


好き、

あたしは阿散井君が好き。


言ってしまえば簡単だけど、認めるのとその思いを伝えるのは、至極難しい。




さっきから途絶えることのない藍染隊長の筆の音は、
藍染隊長がすぐそこにいることを頭の中から消してはくれない。
さらに意識して呼吸をすると藍染隊長のにおいが布団からして、
ふいにあたしは藍染隊長に抱かれてるような感覚に陥った。

顔が赤くなったのが分かった。

 藍染隊長が何かの拍子にこっちを見て…あたしのこんな顔、見たら嫌だな。

そう思って布団を頭まですっぽりと覆う。

 ( あ… )

布団から香ってくる藍染隊長のにおいが、ますます強くなって呼吸が出来なくなった。
呼吸するのが、切ない。


あたしは好き。
阿散井くんのことが、好き。

だけど、だけど…。


さらさらと流れる、筆と紙のこすれる音。
見えないけどそこに藍染隊長がいる、そう主張する音。
もっと耳に意識を向ければ、藍染隊長の呼吸する音だって聞こえるかもしれない。
だけどあたしの意識は、嗅覚に否応なしに集中する。

藍染隊長のにおい。

それは、藍染隊長に抱かれているような感覚を誘う。

 「 藍染隊長…。 」

熱のこもった声。それは音になって藍染隊長まで届いたかもしれない。
だけど筆の音は止まらない。
大丈夫、気付いてない。


あたしは阿散井くんのことが好き。
ずっと前から、阿散井くんだけを見てきた。

だけど。
あたしが阿散井くんを好きという気持ちは今までの延長線上で、
本当に好きなのは…、




きゅぅんと、下半身から上がってきた何かが気管を締め付ける。
息に熱がこもる。

藍染隊長…。

筆の音は止まらない。
藍染隊長の意識の中に、あたしの存在が今いるのかはわからない。
あたしが何をして何を考えているのか、きっと気付かない。
その証拠に筆の音は、さらさらと流れる。

だけどその音は、本当に近くに藍染隊長がいる事実をつきつける。

さらさら。

うるさいくらいに擦れる音。
かき消すかのように、あたしの心臓の音はどんどん大きくなり、ついには何も聞こえなくなる。

さっき気管を締め付けた何かが、再び下半身から湧き上がる。
そしてまた気管を締め付ける。

苦しくなって喉を抑えるけど、一向にやまない。
それどころかその何かは疼きへと形を変える。


 ( 駄目…っ )

どんなに否定しても、疼きは消えない。
むしろ嗅覚、聴覚、全ての五官の機能が、その疼きを増幅させる。


そろそろと、服の上からソコを抑えると、またきゅぅんと喉元が締め付けられる。

何度、阿散井くんを想ってココを触ったか覚えていない。


だけど、今は。


 「 藍染隊長…。 」

声に出したいけど、出せない。
そもそも、こんな気持ちすら、きっといけないのに。

こんな行為なんて、もっての他…、

なのに。


手を服の上から中へ。
下着の上から押えるだけでも、快感が沸く。


ソコに渦巻いていた疼きはあたしの手を絡みとり、放さない。
押えていた手を少し放し、再びゆっくりと押す。

 ん…っ、

息が漏れる。
動かす指を早めても、その行為をどれだけ繰り返しても満足は出来ない。

目を閉じると、藍染隊長の姿が浮かんだ。

どんな裸なんだろう。
やっぱり、胸板は厚くて広いんだろうか。
腕は、きっと筋肉がついてる。あんなに重い斬魄刀を軽々と振るんだもん。
ヒゲが薄いから体毛は薄いのかな。
さっき見たけど、広い背中だった。そして…


 …なんだか、オトコノコみたい。

思考がふとゆるむ。でも手は止まらない。刺激は続いている。
止まらない、というより止められない。
藍染隊長に見つかったら、隊長はどんな顔をするんだろう。何て言うんだろう。
あたしは、なんて言えばいいんだろう。
明日からどんな顔をして、藍染隊長に向き合わなきゃならないんだろう。

もし見つかったらという不安と、そのあとにもしかしたら、という期待。
でも…やっぱり、こんなの良くないよ。

湿り気を帯びた布から指を放す。
じんじんと涌く疼きも、きっと寝てしまえば気にならない。
寝てしまえば、きっとこのにおいだって音だって、何も気にならない。

目を覚ましたら、きっと朝。
朝になったら、きっと藍染隊長が笑顔で

 「 雛森くん、よく眠れた? 」

って、言ってくれるに違いない。
そしてまた、旅過の対応に忙しい一日が始まる。

明日からは、きっとあたしは阿散井くんの背中じゃなく、藍染隊長の背中を追うんだ。

広くて、優しくて。
…大好きな、藍染隊長の背中を。


浅い眠りから、ふと目がさめる。
一瞬ここがどこか分からなくて、起き上がってあたりを見回す。

 ( ああ、そうだ。 )

寝ぼけていた頭が徐々に覚醒し、記憶が蘇る。

 「 あたし、藍染隊長に… 」


そう、藍染隊長の部屋で、昨日は寝た。
そして、ちょっと変なことしちゃったけど、あたしは藍染隊長が好きだと気付いた。
ここは藍染隊長の部屋。あたしが寝てたのは藍染隊長が用意してくれた布団。
隣であたしを見ているのは、藍染隊長…。

 ( … え …? )


 「 あ…っ、藍染隊長!!? 」

 「 起きた? 」

にっこり、藍染隊長が微笑んでる。
めがねを外した顔なんて初めて見た気がして、心臓が凄い速さで血液を送り出す。
顔に血液が集まって、きっと今あたしの顔は真っ赤だろう。

 「 顔、真っ赤だよ?熱でも… 」

 言わなくていいです!分かってますから!!

言おうとして、だけど言えなくて口は空を噛む。
ぱくぱくと、金魚みたいに。

 「 な…っ、どうして、藍染隊長…がっ…! 」
 「 僕の部屋には布団が一組しかないんだよ。
   僕だって、四六時中起きてなんかいられないからね。 」

だからって、…それなら最初からあたしを寝かせなきゃ良かったじゃない、
と身分もわきまえず言いそうになり、今度は言葉を飲みこむ。
心臓の音がうるさいのに、部屋には月明かりしか入ってこないのに、周り中、ただでさえ旅禍が侵入してるってこともあって霊圧で張り詰めているのに、
なのに藍染隊長の声も姿も霊圧も、ハッキリとあたしの脳は認識する。
ううん。それだけしか、認識できずにいる。


 「 い…っ、いつから…っ? 」

 「 今入ったばかりだよ。 」

どんなにあたしが動揺しても、藍染隊長の笑顔は崩れない。
むしろあたしの動揺すら覆い隠すように、隊長の霊圧はあたしをつつむ。

落ち着いた心臓は、藍染隊長と向かい合って再び、今度は少しゆっくりと、
確認するように鼓動を打ちはじめた。


 とくん… とくん…


 「 好きです。 」

言ってしまいたくなる。

 「 藍染隊長、あたしは、隊長が好きです。 」

まっすぐ目を見て伝えたいのに、あたしの目は隊長を見ることすら出来ない。



 「 雛森くん。 」

 「 はいっ!! 」

 「 布団を貸した、お礼が貰いたいんだけど…? 」

意味が分からない。…お礼?

あたしがそれ以上思考する間など与えられず、藍染隊長は優しく、だけれど力強くあたしを押し倒した。
さっきまで至極にこやかだった藍染隊長の表情は今、寒気がするほどの鋭いものだった。


 「 あああ…藍染隊長っ!!!? 」

 「 男女が同じ布団にいる、この条件下ですることは一つ、でしょう? 」

さっきやっと落ち着いた心臓がまた、どくどくと猛スピードで血液を送り出す。
嬉しくないなんて言ったら嘘になる。証拠に、寝て忘れたはずの疼きは再び生まれ、体を駆け巡っている。だけど物事には順序があって、あたしは藍染隊長とは…少なくとも、もう少し時間をおいて…っ!!


 「 …っ、 」

 「 あっ、藍染隊長!!? 」

どう反応したら良いのか分からなくて動けなかったあたしと、
何を考えているのか全くこちらからは分からない藍染隊長としばらく見つめあっていたけれど、
二人の間に降りていた沈黙は藍染隊長が吹き出して、破られた。

 「 あっはは… 冗談だよ雛森くん。 」

 「 えっ? 」

 「 布団を貸したお礼にそこまで要求するほど、
   僕は飢えてないしこの布団だってそこまで高くはないよ。 」


また藍染隊長の顔に笑顔が戻り、優しく諭すように言う。
…そう言われて、なんだか逆に悔しくなった。
あたしは、多分藍染隊長にとって子供で、ただの副隊長で、つまり女、ではなくて。

 「 さて、明日も忙しいから寝よう。 」

一緒の布団に寝たって、あたしが今裸になったって

 「 風邪ひいたら大変だよ。 」

と笑顔で、まるで父親みたいに言うだけなんだ。

あたしが乱菊さんや七瀬さんみたいに大人の女の人だったら、きっとそんな反応はしない。

…悔しい。

 「 ? 雛森くん? 」

 「 …好きです。 」

絶対に言えないと思っていた言葉は、案外すんなりとこぼれ落ちた。
絶対に顔を見てなんて言えない、と思っていたけれど、
あたしの視線の中央にはちゃんと、藍染隊長がいる。

 「 あたし、藍染隊長が好きです。 」

なんだか泣きそうで、きっと険しい表情をしていると思う。
それは藍染隊長の表情からも読み取れる。
だけど、そうじゃなきゃ言えない。後から後から溢れる悔しさが、その表情を作ってしまう。

 「 …、阿散井くんは、どうしたの? 」

 「 え…っ? 」

思いも寄らなかった言葉が藍染隊長から返ってきて、思わず悔しさすら忘れ、ただ驚く。

 「 部下…ましてや一番近くにいる服隊長の視線の先すら知らないなんて、
   隊長としてやっていけないからね。部下のことを知るのは隊長の一番の仕事だ。 」

 「 知ってらしたんですか … ? 」

 「 ああ。 」

 ( 最悪…っ。 )

きっと、藍染隊長はあたしのことをコロコロと好きな人を変える尻軽女だって思ってる。
確かに、あたしが藍染隊長を好きだって気付いたのは、本当についさっきだけど、
でも、そんな軽いものじゃないのに。軽々しく、好きだなんて、あたしは言わないのに。

先ほど感じた悔しさと、藍染隊長があたしが阿散井くんを好きだっていうことを知っていたこと、
そしてそれに気付かなかった自分と、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、
それを浄化するかのように涙がぽろぽろと流れ落ちた。

 「 雛森くん? 」

隊長が心配そうに言う。
藍染隊長に心配かけちゃった、そんな自分への情けなさも涙の量を増やしていく。

 「 確かに、あたしは阿散井くんが、好きでした…。
   でもっ、今は阿散井くんよりも、藍染隊長が好きなんです。藍染隊長だけが、…っ!! 」

好きなんです、と続けようとして、止まった。
藍染隊長の顔がすぐ近くにあると思った瞬間、頬に生暖かい、やわらかい感触が触れ、
そしてそのまま涙の筋を下から上へとなぞった。
それが藍染隊長の舌だと気付き、泣いて赤く染まってたであろう顔がもっと赤くなるのが分かった。
あまりの出来事に、言葉を失う。

 「 最期だから、笑って? 」

 「 え? 」

少しだけ寂しそうな、残念そうな表情が、一瞬藍染隊長の顔に広がって、確かに「 最期 」と言った。
だけど聞き返そうとするあたしを阻止するように藍染隊長はにっこりとまた笑って、

 「 っ!!! 」

指先をあたしの足の裏に、触れるか触れないかくらいの距離で這わせたのだ。

 「 っ、あっ藍染たいちょ…っ!!あははっ、やめっ、やめてくださ…ッ!!! 」

こちょこちょと、その指先は足の裏からふくらはぎ、飛んでわきの下からわき腹へと何度も何度も往復する。

 「 っくすぐったいですっ、あいぜ…あはっ、あはははっやめてくださいよっ…!!! 」

酸欠になるまでくすぐられ、やっと藍染隊長の拷問が終わった頃には、
あたしははーはーと肩で息をしていた。

 「 いっ、いきなりなんですか!!! 」

それは当然の抗議だ、と前置きをし、特に悪びれる様子もなく藍染隊長はあたしに言った。

 「 泣いてる雛森くんより笑ってる雛森くんのほうが、僕は好きだな。 」

それはきっとお父さんが子供に「 好き 」というのと同じ「 好き 」だと思ったけれど、
あたしは凄く嬉しかった。

いいの。あたしは、まだ子供だし、藍染隊長は大人だし、愛して欲しいなんておこがましくて言えない。
ただ今は、こうやって、たとえ大人と子供の関係だとしても二人の時間を共有できれば、
…それで幸せ、だから。

それ以上はまだ、望まない。望んでも、表には出さない。

藍染隊長に「 好き 」
と言われて、妙に吹っ切れた気持ちでそう思う。


 「 ありがとう、ございます。 」

好きな人が「 好き 」と言ってくれた、精一杯の笑顔で言った。
本当はまた泣きそうだけど、藍染隊長が「 好き 」と言ってくれたから、もう泣かない。
涙はさっき、藍染隊長が拭ってくれた涙で最後。



 「 どういたしまして。 」

そう言って藍染隊長は寝転がり、あたしの頭の下に自分の腕を置いた。

 「 …えっ!? 」

 「 さっきくすぐったお詫び。朝まで腕枕していてあげよう。 」

 「 そんなっ、悪いです!!あたし重いしっ!!! 」

 「 何、雛森くんの一人や二人を朝まで腕枕するだなんて、そんな難しいことじゃないよ。 」

思わず起き上がったあたしを藍染隊長は優しく押え、自分の腕の上に収めた。

目の前には、少しはだけた藍染隊長の胸があって、顔を上げると藍染隊長が微笑んでる。
なんだか恥ずかしい。だからと言って目をそらす場所なんて何処にもない。
背を向けるのは失礼だし、藍染隊長は子供をあやすようにあたしの頭を空いた手で
撫でてくれているから寝返りを打つのは気が引ける。

突然。
頭を撫でていた手が離れたと思ったら、
今度は腰に腕が回され腕枕になっていた腕も藍染隊長が自分自身の方へと引き寄せ、
結果的にあたしは藍染隊長に抱きしめられる形になった。


 「 あああ藍染隊長っ!!!? 」

 「 …ごめん、雛森くん。 」

申し訳なさそうに藍染隊長は謝ったけど、体は解放してくれない。
むしろ腕に込められた力はますます強くなるようで、正直痛みさえ帯びてきた。


 「 こんなこと、今するべきじゃないって思ってる。
   もっと時期を見るべきだってね…だけど。無理なんだ。本当にごめん。
   雛森くん…、 」

少しためらった様子の後、藍染隊長は続けた。

 「 桃、…愛してる。 」


 「 アイシテル 」
言葉を頭で反芻しても、半分も理解できない。
誰が?誰を?「 アイシテル 」?

 「 藍染隊長…、からかうのは、やめてください…。 」

やっと理解して搾り出した言葉が空回りするのが分かった。
真剣な藍染隊長の表情が怖くて、思わず目をそらす。

 「 からかってなんかいない。いや、この状況だったら雛森くんの考えの方が正しいかもしれない。
   だけど…、信じてくれるか?僕は、雛森くんが好きなんだ。 」

何か言わなきゃ、半開きになっていた口に、いきなり藍染隊長の唇が触れ、舌が入ってきた。

 「 っ…!!? 」

思わず藍染隊長を押し、跳ね除けて布団の外にへたり込んだ。
床が、冷たい。

 「 あ、…藍染隊長? 」

普段と全く違う藍染隊長の行動に戸惑いながらも、あたしは正直、さっきの口付けが嬉しかった。
でも、素直に喜べない。まだ隊長の意図がわからない。
本当に、あたしを「 好き 」でこんなことをするんだろうか。
それとも誰かの代わりなんだろうか。
それともただ単に、性欲の捌け口として手近なあたしが選ばれただけなんだろうか。

でも。

それでも。

 「 、ごめん。本当にごめん…。 」

 「 謝らないでくださいっ!! 」

思いの外大きな声が出て、あたしは口を押えた。
藍染隊長の意図はわからない。本当にただ、適当にあたしが選ばれた可能性も、否定できない。
でも隊長の、普段とはかけ離れた今の全く余裕のない行動は、
薄っぺらな軽い意味しか含んでないなんてことはないだろう。


冷たい床に立ち、帯をほどいた。


息を呑み、言う。

 「 …藍染隊長の、好きにしてください。 」

 「 おいで。 」

藍染隊長に呼ばれ、あたしは再び、布団の中に入る。
強く抱きしめられ、恐る恐るだけどあたしも、藍染隊長の背中に腕をまわした。

 「 桃。 」

耳元で低い声で呼ばれ、背中にぞくぞくとした感覚が走った。
何も言えないでいると顎に手を添えられて、藍染隊長の唇があたしの唇に触れた。
最初はついばむように、そのうち深く、あたしの口内に藍染隊長の舌が入れられた。

口付けは途絶えることなく続き、抱きしめられたままあたしは布団に寝かされる。
藍染隊長の長い指があたしの髪を梳いて、流れるように指はあたしの外耳をゆっくりとなぞった。

 「 ん…っ。 」

その指が気持ちよくて、鼻にかかった息が漏れる。
そのまま指は、耳から首筋、鎖骨、そして最後にあたしの胸へと滑る。
その時、長い口付けが途絶えた。

 「 いいん、だね? 」

息が上がって何も言えなく、ただ頷く。
それを確認した藍染隊長はあたしの胸に触れていた手を、動かした。

ぜんぜん大きくない。むしろほとんど平らなあたしの胸を、藍染隊長がゆっくりと揉む。
最近出来て鈍い痛みを発しているしこりすら柔らかくするように。

 ( 藍染隊長は、何度あたし以外の女の人とこういうことをしたんだろう。 )

快感で緩く鈍った思考で、唯一そんなことを考えた。
相手の女の人は誰なんだろう。その人はどんな風に藍染隊長を受け入れたんだろう。
そしてその人との関係はいつ切られたのだろう。


だけど、どんどんぼぉっとしてくる頭ではもうそれ以上考えられなかった。
今、藍染隊長はあたしを抱いていてくれてる。それだけで充分なの。



 「 藍染隊長…っ、 」

 「 ん? 」

藍染隊長があまりにもあたしの胸を見てるから急に恥ずかしくなって、
あたしはたまらず藍染隊長、と呼びかける。

 「 あんまり…見ないで下さい…。 」

 「 気持ちよくない? 」

視線は絡み合っても、藍染隊長の手は止まらない。
思考が鈍っていく。

 「 そうじゃ、ないです…ただ、あたしのムネ、おっきくないから、恥ずかしくて…。 」

あたしの精一杯の言葉を聞いた藍染隊長はにっこりと笑って、言った。

 「 大丈夫。全然恥ずかしいことじゃない。可愛いよ、桃。
   それにきっと、雛森くんは大きくなるよ。イザとなったら松本くんみたいに豊胸すればいいしね。 」

 「 えええ!!!? 」

思考にまとわりついた痺れが一瞬、波のように引く。
そんな驚愕するようなことを言っても悪びれる様子もなく、藍染隊長は続けた。

 「 見かけなんて重要じゃないよ。僕は桃が好きだ。だからこうしたいと思った。
   恥ずかしがらないくていいよ。」

頬にちゅ、と音を立てて口付けられ、再び愛撫が始まった。
今度は手だけじゃなく、舌が這う。

 「 …っ!! 」

さっき引いた痺れは、さっきより強くなって再び思考を鈍らせる。
ねっとりとした舌は首筋を通り、揉まれていた乳房の先端へ、迷いもなく進んだ。
口に含まれ、転がされる。さらには甘噛みされ、思わず声を出しそうになり堪える。
空いた乳房を藍染隊長はさっきと違う手で揉み始め、反対の手はするすると下にくだる。

手が、内腿をなぞった。

 「 っあ… 」

さっきくすぐられた時と、指と肌の距離はほとんど変わらないのに今は笑うなんてことは出来ない。
くすぐったさより快感が、じわじわと生まれ理性を蝕み、壊していく。

 「 さっき、ひとりでココを、弄っていたね? 」

藍染隊長の指がきゅうと、下着の上から刺激を与える。
あたしがさっきしたのと同じように。だけれど違う。
中途半端な快感ではなく、的確にあたしが一番気持ち良いと思うところを刺激して、
あたしは自分で濡れているのが分かった。

 「 僕の名前を呼んで、…何を考えてココを弄ったんだい? 」

気付かれていた、羞恥心が一気に湧き上がる。
藍染隊長はなおも刺激を続け、あたしの答えを促す。
あたしは息も絶え絶えに、言った。

 「 藍染隊長の…、ことを、考えていました…っ。 」

 「 僕の何を考えた? 」

 「 …っ、 」

考えていたことが頭の中でぐるぐると回る。
でもそんなことは恥ずかしくて言えない。
言ったらきっと、藍染隊長はあたしのこと軽蔑するに違いない。

下着の上で動いていた藍染隊長の指がするりと、下着の中へともぐりこんだ。

 「 …、ぁっ!! 」

にちゃにちゃという音が耳に届く。
指の腹で全体を擦られ、ただただ快感に身をよじるしかなかった。

 「 言って、桃。何を考えていた?僕の何を考えて、一人でココを弄っていたの? 」

優しい言い方だけど、強くあたしに答えを求める。
言葉を促すためさっきとは違い、あたしが触って欲しい場所をわざとそらしているのが分かった。

 「 藍染隊長に、抱かれる、ことを、考えてました…っ。 」

 「 こうやって? 」

声が出せず、ただ頷く。
藍染隊長の指が、陰核を擦った。

 「 ああっ!! 」

声があがる。

強く、弱く。
藍染隊長の刺激は強弱を変え、確実にあたしを何処かへ連れて行くように思えた。

 ( ―――怖い!!! )

漠然とした恐怖感に襲われた。
このまま続けられたら壊れてしまう、そんな恐怖感。

 「 藍染隊長っ!やめてくださ…っ、怖い…っ!!
   どっかに、行っちゃ…ぅっ!! 」

 「 大丈夫だよ桃。僕がいるから我慢して…。 」

朦朧としてきた意識の中で、藍染隊長の声が聞こえた。
無心で藍染隊長の首に腕を絡ませ、抱きつく。応えるように藍染隊長もあたしの背中を片腕でだく。

陰核への刺激は途切れない。
強弱の速さをかえ、快感さえ失うほど恐怖感がどんどん強まっていく。

 「 怖い? 」

藍染隊長の言葉に頷くことさえできない。ただ回した腕に力をこめた。


だけど確実に、何かが近づく。
見たことの無い高みへ、連れていかれてるみたいにどんどん登りつめる。
浮遊感すら感じて、だけれど急にふ、と何かが途切れ



 「 っ、ああああっ!!!!! 」

真っ白に、なった。


体中が何かに優しく触れられる度に、徐々に白い視界が色で染められていく。

頭にもやがかかったようにハッキリしない。
四肢との接続が切れたみたいに体が動かず、それなのにあたしの意思と関係なく痙攣する。

 「 あ、いぜんたいちょ…? 」

あたしが呼ぶと藍染隊長は顔をあげ、幸せそうに微笑む。
さっきから体中に触れていたものは藍染隊長の唇だったようで、
幾つかの紅い痕があたしの体に残っていた。

 「 惣右介。
   …呼んで? 」

額に口付けされる。
頭を撫でられ、その手はあたしの唇のふちをなぞった。

 「 そう…すけ…。 」

ゆっくりと言うと、藍染隊長の唇があたしの唇へと触れた。
舌を入れられ、だけどあたしもその舌を受け入れ、絡ませる。
唾液が口のまわりを汚しても、関係ない。

気持ちよくてまたぼおっとする。
その状態のまま手を取られ、あたしの手は藍染隊長の股間へと導かれた。

 「 っ! 」

驚いて、唇を離す。
手に触れたのは、服の上からでも熱くとても硬いモノ。

 「 …いやなら、やめてもいいよ? 」

そう言った藍染隊長の表情が寂しそうで、あたしは夢中で首を横に振った。
藍染隊長はそれを確認すると服を脱ぎ始め、慣れた手つきであたしの服も下着も脱がした。
帯は解かれ、乱れて衣服の役目をしていなかったけれど、
やはり脱がされると少し寒くて鳥肌が立った。

そんな中で抱きしめられた藍染隊長の肌は、すごく心地がいい。

再び、貪るように口付けられる。
前の行動をなぞるようにまた手をとられ、今度は直接、藍染隊長のモノがあたしの指先に触れた。

どうして良いか分からず、だけど何も考えずにソレに指を這わせた。

 ( 熱… )

先端からぬるぬるとしたものが溢ている。
何処がイイかなんて考えもつかないで、無心で触る。

先端のすべすべとした場所、根元の方、藍染隊長の側も、あたしに向いている側も、
とにかくソレ自体が、愛しくて、
あたしと隊長以外の誰も、今はもう触る権利なんてないんだと思ったらすごくうれしくて、夢中でこすり上げた。

藍染隊長の指は再びあたしの内腿をなぞり上げそのまま、
もう濡れているであろう場所を弄った。

 「 ん…ぅ…っ。 」

快感の波が押し寄せるたび、鼻にかかった息が漏れる。
湿った音が部屋中に響いた。


 「 っ、あ。桃…っ。 」

唇が離れ、自然と手は止まる。
視線が絡み合い、時が止まったかのように思えた。
藍染隊長とあたしを繋いでいた銀の糸が途切れ、再び時間は動き出す。

 「 挿れて、いいか? 」

 「 …はい。 」

不安は拭いきれないけれど、頷く。
藍染隊長の指はあたしの、まだ何も入れたことのない入口からゆっくりと、中へ入る。

 「 んぅ…っ 」

表面を擦られた時よりずっと大きい快感が脳へと突き抜ける。
ぐちゃぐちゃとかき回され中がほぐされる。

指が離れ、脚が大きく広げられる。
藍染隊長はその間へと入り、視線がソコで止まったのが分かった。

 「 …っ、あんまり、見ないでください…っ。 」

 「 恥ずかしい? 」

そう聞かれて、余計に恥ずかしさが増す。
あたしは頷いた。
それを見た藍染隊長は苦笑し、少し腰を進めた。
顔があたしに近づく。
耳元で藍染隊長の呼吸が大きく聞こえるとぞわぞわとした感触が耳から広がっていく。

藍染隊長のモノの先端が、入口にあてがわれた。

 「 いくよ? 」


 「 …ッ!!! 」

押し広げられる痛みが体を貫く。
藍染隊長に抱きついてその痛みに耐える。

痛いと言うより、苦しい。


 「 大丈夫? 」

 「 んっ…はい…、 」

藍染隊長に余計な心配をかけたくなくて、頷く。

 ( 大丈夫、平気… )

呪文のように心の中で繰り返す。
この痛みは、藍染隊長があたしの中にいるっていう、痛みだから。
大丈夫。


 「 …っ、は。全部入ったよ。 」

藍染隊長が優しく微笑む。
その微笑みも何もかもが嬉しくて、あたしは藍染隊長の唇に口付けた。


慣れたのか痛みは引き、徐々に快感が生まれる。

 「 動いていいかい? 」

あたしは迷わず頷いた。
やっぱり痛みは残っているけど、気持ち良い。

 「 ん…っ。 」

藍染隊長の動きにあわせ、声が漏れる。
ゆっくりとした動きはだんだんと速さを増す。

 「 あぁ…っ、ふぁ…っ、あ…んっ 」

それにあわせ声も、喉の奥から獣が唸るような低い音へと変わる。

 ( 気持ちいい…!!! )

 「 桃…っ 」
部屋中に響いたぐちゃぐちゃという淫猥な音と肉同士がぶつかる鋭い音に混じり、
藍染隊長の声が聞こえた。

それは、とてもはっきりと、一点の曇りもなくあたしの耳に届く。

 「 桃…っ、愛してる、桃…っ 」

 「 あっ、んぅっ、そ、、すけっ、 」

あたしも、と続けたいけれど、言葉を言うことすら難しいくらい、あたしは快感に捕らわれていた。
伝えるためにただ、藍染隊長の体をきつく抱きしめ唇を貪る。

 「 んぅっ、んふっ、 」

藍染隊長の腰の動きに合わせて、あたしの意識も再び登りつめていく。
今度は恐怖は感じない。ただただ、押し寄せる悦楽の波があたしの意識をさらう。


 「 はっ、桃…、桃っ…!!! 」

 「 っ、あっ、はっ、ああああっ!! 」





意識が真っ白になる直前に、あたしの中で熱いくらいの何かが流れ出たのを感じた。





目が覚めたのは翌朝。
あたしは服を着ていて、体中に残された紅い痕さえなければ昨夜のことなど全て夢に思える。
起き上がり、下半身に鈍い痛みを覚えた。


 「 …藍染隊長…? 」

隣にいるはずの藍染隊長の姿は、もうどこにもなかった。

−糸冬−




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