―――   烈勇烈(百合注意)  著者:3_250様   ―――



「本日から四番隊副官を務めさせて頂きます、虎徹勇音と申します」
「こちらこそ、今日からお願い致しますわね。‥‥顔をお上げなさい、勇音」

名を呼ばれ、勇音は垂れていた頭をゆっくりと上げた。
卯ノ花は座っていた椅子から立ち上がり、眼前に跪く勇音の前へと歩み寄ってその前に膝をついた。

「もう知っての通り、私の斬魄刀に戦闘能力は皆無です。‥勿論、決してその様な事にならぬ事を望みますが‥‥有事の際には、貴女の力が不可欠になります」
「‥‥は。この虎徹、命に代えても隊長をお守り致します」

勇音は、卯ノ花の腰に差された長刀に視線を移す。
命に代えてでも‥!
勇音は強い決意を胸に、自らの斬魄刀の肩紐をきつく握り締めた。

それから数週間が経ち勇音も副官の仕事に慣れてきたある夜、突然勇音は突然卯ノ花の寝室へと呼ばれた。

「隊長、勇音です」
「…お入りなさい」

普段と変わらぬ柔らかな声色に、勇音は一旦深呼吸し静かに襖を開け、室内へと踏み入った。
卯ノ花は何時もは結い上げている緑の黒髪を下ろし、寝間着に羽織を羽織った姿で正座をしていた。
「すみませんね、この様な夜分遅くに呼び出したりなどしてしまって……副官の仕事で疲れているでしょうに」
「いえ、そのような事はございません。それに、隊長からの呼び付けとあらば、直ぐに馳せ参ずるのが副官の義務ですから」

勇音は副官の心得として習い聞いた事を一言も間違わずに言い、卯ノ花を見つめる。

「御用向きは?」
「ええ……まずそれを言う前に、湯浴みをしていらっしゃい?また夜遅くまで資料纏めをしていたのでしょう?」

卯ノ花はそう言ってにっこりと微笑むと、所々に埃がついた勇音の頭を一撫でする。

「!!申し訳ございません、今直ぐにでも!」

大慌てで自室に戻ろうとする勇音を、卯ノ花はゆるりと手を伸ばして優しく止める。

「お待ちなさい勇音、貴女の部屋と此所を往復しては時間が掛かりますでしょう、私の部屋にあるのをお使いなさい」
「ですが……」
「遠慮をする事はありませんわ。ささ、着物の替えは用意しておきますから…」

そっと卯ノ花に背中を押され、そこまでおっしゃるならばお言葉に甘えて、と勇音は頷き、部屋の奥へと姿を消した。

「…はぁ……」

白い湯煙が立ち込める中、勇音は大きく息をついた。
風呂場には甘い香りが漂い、微かに白味を帯びた湯面には鮮やかな花々が何輪もぷかりぷかりと浮かんでいる。

「これは薔薇の花か……あれ、でもこの花は一体…」

勇音は湯面に浮かぶ花々の内、山吹色をした一輪を手に取る。

「丁子にも似ているけど…見た事がないな」

鼻を近付け、その香りを嗅いでみる。
甘い中にも涼やかさを持つその香に、勇音はうっとりと目を細めた。

「……隊長の香りに似ているかも」

その香りを楽しんでいる内に頭に血が昇ってきたのか頬が熱くなり、上せてはいけない、と勇音は慌てて風呂から出た。
卯ノ花が用意した、彼女の体格に合わせてあるせいか勇音には少し小さめの小袖に腕を通し、急いで卯ノ花の元へと戻る。

「お待たせ致しました」
「いいえ……あら、少し小さいようですわね」

すみませんね、と困った顔で笑う卯ノ花に、勇音は驚きそんな事はない、と首を振った。

「それで隊長、ご用件とは…」
「そうでしたわね……勇音、こちらへいらっしゃい」

ゆったりと手招きをする卯ノ花に何の疑いも持たず、勇音は膝を進める。

―――ガシッ!

「……っ!?」

後一、二歩と言う所まで近付いた途端、腰に手を回されて引き寄せられた。
勇音はその腕から逃れようとするも、普段のか弱い姿からは想像出来ない卯ノ花の力の強さと、何かそれとは別の物が相俟って上手く腕を振り払う事が出来ない。

「……力が入らないでしょう?」

耳元に、面白そうな声色と共に吐息がかかる。

「何故……っ…」
「貴女が入った湯船に……何があったかしら?」

つうっと背筋を撫で下ろす手に体を震わせつつも、勇音は風呂にあった花々を思い出そうとする。

「薔薇……と、何か、黄色い…」
「そう、薔薇と、その黄色い花は蔓丁子ですわ。それから、バニラオイルにイランイランのエッセンス……頭の良い貴女なら、もうきっと分かる筈…」

卯ノ花が告げた品々に、勇音はただただ呆然とするしかなかった。

「そんな……」
「"どうして隊長が媚薬なんて"…そう、お顔に書いてありますわね」

卯ノ花はくすりと微笑み、その笑顔を近付けた。

「私、貴女が四番隊に入ってからずうっとずうっと貴女の事が欲しくて堪らなかったのですわよ。ようやっと貴女が私の手が届く所まで来て下さって……」

そう言って、卯ノ花は息を荒くし始めた勇音の顎を持ち上げる。

「私嬉しくて嬉しくて、貴女を壊して差し上げたい位ですわ」

その笑みは、慈愛に満ちた物から狂気染みた物へと確実に変貌していった。

「ひ……ぅむうぅっ!」

勇音が悲鳴を上げるよりも早く、卯ノ花がその唇に自分の唇を重ねた。

「う……む、ふぅっ…ん…!」

首を振ってもその唇が離れる事はなく、媚薬のせいか逆にその刺激で甘い疼きが全身へと広がっていく。

「むぅっ……ふ…」

勇音の体からは次第に力が抜けていき、口許からは一筋の滴が垂れ落ちた。

「ん…あら、勿体無い……」

卯ノ花はそう言って僅かに唇を離し、うっとりとした様子でその滴の跡を舌でなぞり下ろす。

「隊、長……お止め下さい…」

その舌は喉元をなぞり、鎖骨を通り過ぎて着物の袷目へと容易に辿り着く。

「折角着て貰いましたけれど、邪魔ですわね…」

卯ノ花は一旦顔を上げ、勇音ににっこりと笑ってみせる。

「嫌がる理由なんて何処にもありませんでしょう?貴女も私も気持ち良くなれるのですから…」

そう言うと卯ノ花は勇音の着物の肩口を口に咥え、すす、とそれを引きずり下ろした。
勇音の肌からはまだ湯気が微かに立ち上り、ほんのりと紅く色付いている。

「まぁ……なんて美味しそうだこと」

卯ノ花は、まるで新しい反物でも手に入れたかの様にきゃあっ、と小さく喜びの声を上げ、恐怖のせいか微かに震える勇音の肌にむしゃぶりついた。
余すところ無く舌を這わせ、露になった乳房をやわやわと捏ねくり回す。

「ひ……あ、うぅ…!」






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