――― 阿近×ネム 著者:3_126様 ―――
水曜日の情事
「遅ぇぞ」
「‥‥申し訳ございません」
薄暗く、少しすえた臭いのする部屋で、男は女を待っていました。
男は、明らかに怒っている様子で歩み寄って来ると、女の髪を鷲掴んで顔を近付けます。
「作りもんの癖に人を30秒も待たせるたぁ良い度胸してるな。‥次やったらぶっ壊すぞ」
「‥‥はい‥」
「分かったら、さっさと着物を脱げ」
男は黄ばんだ診察台に女を放り投げるようにして手を放し、診察椅子を引き寄せそれに腰掛けました。
女は抵抗する事もなく死覇装の帯紐に手をかけ、言われた通りにその場で着物を脱ぎ始めました。
「モタモタしてんじゃねえ!」
5秒もすると、男は苛立った様子で女を怒鳴りつけます。
女は、此処で返事を返せば、返事をしている暇があったら手を動かせ、と男を余計怒らせてしまうのは知っていましたから、無言のまま、出来るだけ手早く死覇装を脱ぐ事に専念しました。
「阿近さん、お願い致します」
身に纏っていた物を全て脱ぎ去り、女は診察台に腰掛けて男に深々と頭を下げました。
苛ついた様子で煙草を吸っていた男は、半分以上残っていたそれを無造作に灰皿に押し付けて、椅子に座ったまま女に歩み寄りました。
「‥‥ったく。先週と比べて外見に変わりはねぇようだな」
今回は皮膚組織の交換は必要ねぇか、と、男は、女の肌を丁寧に、傷一つ見逃さないように見つめ、冷たい指を滑らせて行きます。
首筋から始まって、肩、腕、乳房、腹、尻、足、と、何度も何度も、執拗に指や掌が行き来して、その度に女は堪らず、声を押さえるのに精一杯で体が震えてしまいます。
「関節はどうだ」
「‥は、ぁ‥大きな問題は、ございません」
息を吐いて、女は男の手の動きをじっと見つめました。
その時、いやらしく腫れ上がった女の乳首を男の爪が少し掠って、思わず女は身を引いてしまいました。
「動くな」
「‥、申し訳ございません」
すかさず男にきつく睨み付けられて、でもそれにすら、女の体は感じてしまいます。
男の手が女の肩にかかり、一通りそこを撫でたり掴んだりした後、右足の付け根に降りた男のもう一方の手がぴたりと止まりました。
「‥少しズレてるか?」
そう言うと男は、人差し指と中指を揃えてぐるりと足の付け根を一周しました。
そうして女の右足を掴んで大きく開かせると、確かに男の言うように関節がずれているのか、女の体に俄かに痛みが走ります。
「やっぱりな‥‥大方、下衆共に股開き過ぎたんだろう?」
にやり、と笑みを浮かべ、男は女のそこに手をあてがいました。
そうすると、丁度、男の親指の爪先がクリトリスの僅かに上に食い込むような形で、元々濡れ始めていた陰唇の奥から、更に愛液が溢れてきました。
「‥よっ」
「あぁんン!!」
男が足の付け根を掴んだその手をぐいっと手前に引くと、女は一瞬強い痛みを感じました。
同時に、クリトリスに触れている男の指が必然的にそれに深く刺さって、痛みを上回る快感に女は潮を吹いてしまいました。
絶頂の余韻に朦朧とする女の様子を知ってか知らずか、男はもう一方の関節も同じように治し、やはり同じように女は絶頂を迎えてしまいます。
「‥‥‥‥」
男は大して驚いた様子もなく、びちょびちょに濡れた自分の手と女の恥部を一瞥すると、何事もなかったかのように自分の手だけを拭いました。
「‥はぁ‥‥はぁ‥」
息を荒げる女を余所に、男は次々と女の体を調べていきます。
そうして全てを調べ終えると、男は立ち上がり、終わったぞ、と女に一声かけました。
「‥‥‥‥」
勿論、高められた女の熱は、そのままです。
少し触れればすぐに爆発してしまいそうなそれに長い時間耐えられる筈もなく、はい、ありがとうございます、という返事の代わりに、女は男の顔を見据えてこう言いました。
「もっと‥‥‥"診察"を、して下さい」
そうして女は、てらてらと濡れ光る陰毛を、誘うように撫で上げて男に見せつけました。
もし"診察"し足りない所があったのならそうしろ、と、女は男にそう教え込まれていたからです。
しかし、男はただ一言こう言いました。
「面倒臭ぇ」
「‥ぇ‥‥」
女は茫然としました。今までそんな事を言われたのは、初めてだったからです。
「そんな‥‥お願い致します、私‥」
「体が疼いて堪らねぇってか?」
男はにやり、と笑うと、図星を突かれ微かに頬を染める女を見据えて再び椅子に座り直しました。
「じゃあ、全部一人でやるこったな」
女は、当惑しました。
けれども、本能の欲求には耐えられずに、診察台から降りて男の前に跪きました。
手慣れた手付きで男の袴の腰帯を解き、褌を緩め、顕わになったものをそっと握りました。
それはまだ柔らかい儘で、先走りの液すら零れていません。
「‥‥‥んふ」
女は握ったその手を上下に動かし、先端を軽く咥えて丁寧に舐め回します。
そうすると、男の自身が少しだけ、ほんの少しだけ固くなりました。
女は上下させている手はそのままで、ゆっくりと身を屈めながら男のもの全体に舌を這わせました。
少しエラの張ったカリの部分を舌先でくすぐり、ぴくぴくと浮かび上がり始めた血管を辿るように舐め下ろし、袋を口に含んで口腔内で十分に愛撫します。
「‥‥くぅ‥」
そうすると、次第に男のものから液体が溢れて独特の臭いが漂います。
男の口からも微かに呻きが漏れ、自身がぴくぴくと震えて固く起立するようになりました。
「‥‥ぷはぁ」
それを感じた女は、男のものを咥え続けて少し痺れた口をゆっくりと離し、のそのそと男の膝の上に跨りました。
女の股からはぽたぽたとしとどに愛液が滴り落ち、剥き出しになった男のものに降り注ぎます。
「はぁ‥‥」
女は大きく息を吐くと、秘唇に指を添えてぱっくりと開かせました。
そして迷う事なく腰を落としていき、男のものを胎内に迎え入れて行きました。
「あ‥はあぁっ」
女の甘ったるい声とにゅぷん、と濡れた音と共に、何の苦もなく男のものは根元まで女の秘部に飲み込まれました。
「ん、ぁ‥‥あはぁ」
女の顔は恍惚としていて、これ以上ないという程に満面に悦びをたたえています。
その表情を見た男の脳は言い様のない満足感に満たされ、思わず乾いた唇をぺろり、と舐めてしまいました。
「あぁっ!あ、はあぁっ!!」
女は必死に腰を動かして、自分の感じるところに男のものを擦り付けました。
その度にずちゅずちょと蕩けた粘膜が絡み付いて、流石の男の額にもうっすらと汗が浮かび始めました。
「‥‥ったくトロいんだよてめぇはっ!!」
「あはぁンっ!?」
女が一心不乱に動き続けていると、突然男が立ち上がりました。
勿論跨っていた女はバランスを崩し、背中をしたたかに診察台に打ち付けてしまいました。
「か‥‥は、はぅっ‥っ‥!!」
痛みに呼吸の詰まった女の足を抱え上げ、男は激しく腰を打ち付け始めました。
ぱんぱんと肌がぶつかり合い、女は苦しげながらも、口許から涎を零して喘ぎ声を上げます。
「ぁん、あ、あン、も、駄目っ、‥‥ひあ、っあああぁぁっ!!?」
「‥‥‥ク」
女が、駄目、と漏らすや否や、男は一際奥を強く抉り、中に精液を吐き出しました。
女の体はびくんびくんと痙攣し、中に入り切らなかった精液が診察台を少しだけ汚しました。
「‥‥ありがとうございました」
全てが終わった後、身嗜みを整えた女は机に向かって書き物をしている男の背に深々と頭を下げました。
「今度遅れたら、本気でぶっ壊すからな」
「はい‥‥分かっております」
そして女はもう一度頭を下げ、去り際にこう言いました。
「それではまた、一週間後の水曜日に参ります」
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