―――   ギン桃 著者:&様   ―――



冷たい手が、少女に伸びる。
怯えと恐怖が、足を走らせることを忘れさせる。
追い詰められた小動物のように、体を震わせて。

「や…やっ!来ないでっ!」

選択肢は拒絶のみ。
実力では適わない。

「嫌われたもんやな、ボクも」

男は少女の柔らかな髪を優しく撫で、震える睫に溜まった雫をぬぐってやる。
その仕草に、閉じた瞳は見開かれて、男を視界に捕らえる。

「ほら、笑ってみ。ボクな、雛森ちゃんがわろとる顔がいっとー好きやねん」
「笑え…るわけないっ…こんなに人が死んでっ、愛染隊長も殺されてっ、貴方…何なの?何を考えて…」

最後まで言葉は紡げなかった。
冷たい唇が押し当てられ、遮られたのだ。

「んっ!?ん…!!」

一瞬何をされたのか理解出来ず、頭が真っ白になるが、視界の銀色と、唇を塞ぐ冷たさに、嫌悪感が沸く。
男の胸板を必死で叩くが、無駄なことだった。

「生きてるうちに、楽しんでおこ、な?」

肩を強く掴まれ、壁に押し付けられる。

「何…?市丸隊ちょ…っ!?」
「どうせ、もう死んでまうんやし」

走って汗ばんだ首筋を、唇がなぞる。冷たくて、気持ち悪くて。
『死』という単語が頭の中を駆け巡ったが、思考と言葉が一致せず、口は虚しくパクパクと開かれるだけ。

硬直した少女を横目で見やり、心底可笑しそうに肩を震わす男。
袴を押し上げ、太ももに手を滑らせる。まだ、子供同然の体型だ。
内側の柔らかな部分を揉みながら、顔を少女の胸に押し付け、同時に顎で器用に襟元を開き、薄い胸元に唇を寄せる。

「なんや、ちいちゃいなぁ?着やせするんかと思てんけど。でも好きやよ、こういうんも」

そのまま、胸の頂に歯を当てると、少女の体がビクリと跳ね上がる。

「や…だ!何で…どうして…」
「何でもだっても聞きとうないよ。ボクはただね、楽しみたいだけやねんて」

右手で押さえつけた肩に力を込め、抵抗させないようにする。
袴の中の左手は、足の付け根に辿りついた。

「見た目はアレでも、いっちょ前に大人やねぇ」
「いやっ!離して!助けてっ…藍染隊長っ!!」

その瞳に、初めて涙が浮かぶ。滲む世界に、彼はいない。
いるのは、笑顔の仮面をつけた男。そして、血に塗れた部屋と、人の残骸。
否、恐怖そのものだった。

五月蝿い口やな、塞いでしまおか?」

言うと同時に、幼い入り口に指先が触れる。冷たさと、言いようの無い恐怖とに、瞳は涙で濡れる。

「こっちの口も、塞いだるけどなぁ」

まだ濡れてもいない入り口に、強引に中指が突き立てられる。
人差し指と薬指で割れ目を開き、中指は更に奥へと挿入された。

「ひ…っ!や!!痛い…っ痛いよぉ!」
「きついなぁ、何?まだ初めてなん?」

中指は乱暴に動き回る。その動きからは、少女を気持ちよくさせようという雰囲気は感じ取れない。
男はただ、単純に楽しみたいだけなのだ。
か弱い動物を追い詰め、皮を剥ぎ取るように、残酷に。

「雛森ちゃんが泣いとるとこも好きやで。ゾクゾクすんねんで、背中あたりが」
「や…だ!やだぁ!助けてっ!痛い…っ」
「ほーら、いい子やから大人しくしとき」

指が、唐突に引き抜かれる。少女は安堵の表情を浮かべたが、それも一瞬だった。
出された中指を、男が舐め上げていたからだ。
自分の中に挿れられた物を、口にしている男に、改めて言い表せない恐怖が込み上げてくる。

「美味しいで?雛森ちゃんも舐めてみ?」

口元に、唾液で濡れた指が押し当てられる。歯で唇をかみ締め、必死に抵抗するが、男は右手を少女の鼻に持っていき、摘み上げた。
呼吸出来ない苦しさに、思わず口を開くと、指がすかさず進入してきた。

「ふむ…ぅあ!ん…ぐっ」

その指を、思い切り噛んでしまえばいいのに、出来ない。

指で歯列をなぞられ、舌を弄ばれると、諦めに似た感情と、言いようの無い快楽が溢れてきた。
頭が、靄に包まれていく。
両足を抱えられ、濡れも不十分な性器に、男のそれを宛がわれても、抵抗する気は失せてきた。
痛みが体を貫いても、何も感じなかった。

だから、最愛の人が滲む世界に現れた時も、何も感じなかったのかもしれない。
幻だったのかもしれない。そう思ったのかは、定かではない。

「藍染隊長…あたしっ」

胸に突き刺さったのが何なのか、そして服を熱く濡らすのが、何なのかさえも。

「さよなら」

ただ、その言葉だけが虚しく響き渡った。
見下ろす男は、変わらない笑顔を湛えながら。
もう一人の男は冷たい瞳で、崩れ落ちる少女の体を見つめていた。






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