――― 京楽×七緒 著者:886様〜 ―――
「京楽隊長、…あの……このまま、…お帰りに?」
何でかは忘れたけど、宴会があってね。
お酒にはそう強くない愛しの七緒ちゃんを、部屋まで送っていったんだ。
そしたら、最初のあの言葉。きゅっとね、衣の背のところを引っ張りながら。
参ったね、どうも。
送り狼にならないよう、これでも結構頑張ってたのに。
キス一つで離れるの、苦労したのに。
…知らないよ?
「催促?いけないなぁ」
向き直って、紅葉みたいに赤くなっちゃってる頬に手を伸ばす。
顔がにやけちゃってるのは…バレバレだね、きっと。
軽い意地悪も、これじゃ無駄かな?
と、思ったんだけど。
ふるりといつもより熱をもった頬が、震えてね。
「…私から求めては…いけないの、ですか?」
見据えてくる瞳が月明かりに揺れて、眉なんてもう、泣き顔のそれで。
あぁこれはまずかったと、気付く。
恥ずかしいのを我慢してまで引き留めてくれたのに、苛めちゃうなんてあんまりだったね。
「ごめん。そうじゃないんだ。いけないって言うのは…」
引き寄せて、雫の浮いた目元に、反射的に降りた瞼に数度口付けて。
おずおずと回される腕に安心しながら、色々調子に乗っちゃうからと囁く。
視線外す仕草が、どうにも愛しかった。
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