―――   雛森×・・・  著者:雛森×・・・様   ―――




雛森は隊長室に呼び出されていた。いつもどおり、きれいに整頓された藍染体長の部屋だ。
当の藍染はというと、雛森に背を向けて机に向かっていた。
すでに雛森が呼び出しを受け、この部屋に入ってから10分がたとうとしている。
二人とも、まだ一言も発していない。
本当は、なぜ呼び出されたのか気になってしょうがない雛森だが、いつもの慈愛に満ちた様子とは打って変わって
まるで思いつめているかのような藍染を前にしてなかなか口を開けないでいた。
「藍染隊長・・・」
「・・・」
「藍染隊長、今日はどういったご用件ですか?」
痺れを切らした雛森がたずねた。
「雛森君・・・」
「はい」
・・・・・・・
再び沈黙が流れた。そして数分の後、藍染が口を開いた。
「雛森君、今日君をここに呼んだのはね・・・隊主会から呼び出し命令があったからなんだ」
「え?」隊長がですか?」
「いや、呼び出されたのは君だ。」
「え?私がですか?」
「そう、今日の夜零時ちょうどに隊首会が開かれる。これが山本総隊長からの通達状だ」


護廷十三隊五番隊副隊長 雛森桃 殿
本日零時より行われる隊首会への出頭を命じる。
なお、この隊首会は極秘で行われるため、他言は一切無用とする。
               護廷十三隊総隊長 山本元柳斎重國」

通達状を読んだ雛森の顔が青ざめた。普通副隊長が隊首会に出頭するなんて、よっぽどのことをしでかさない限りはありえないことだ。
「・・・あの・・・私、何か重篤な失態でも・・・本当にすいません!私、藍染隊長にご迷惑ばかりおかけして・・・」
ほとんど泣きそうな顔になりながら、雛森は藍染に何度も頭を下げた。藍染は困ったような顔をしながら少し微笑み、
雛森の目にたまった涙をやさしくぬぐって、頭をなぜた。
「いや、そういうわけじゃないんだ、君は何も悪くない、今回の隊首会は・・・そういう内容じゃないんだ・・・」
一瞬やさしくなった藍染の顔が、隊首会の話に及ぶと再び硬くなった。
「それじゃあ・・・この隊首会では何を・・・?」
「・・・それはいえないんだ・・・総隊長からの通達状にも書いてあるとおり、一切他言は禁じられているからね・・・じゃあ、今日の零時、忘れないで・・・」
「わかりました・・・それでは失礼します」
そういって雛森が部屋を出て行きかけたときだった。
「・・・雛森君・・・すまない・・・本当に・・・僕は本当に・・・ごめんよ、雛森君・・・」
藍染は泣いていた。涙を流しながら、雛森に詫び続けた。雛森はわけもわからず立ち尽くすのみだった。
「た・・・隊長・・・!・・・あの、やっぱり何か私・・・」
「・・・行ってくれ・・・」
「え?あ・・・」
「すまない雛森君・・・もう・・・行ってくれないか・・・すまない・・・」
「は、はい・・・失礼・・・します・・・」
雛森はそっとすまを閉めた。ふすまを閉めるまでずっと藍染はこうべを垂れた。
なんで?いったいなんで藍染隊長は・・・今日の隊首会と関係があるの?
・・・吉良君に相談・・・でも他言は無用なんだっけ・・・

雛森はわけもわからぬまま、隊長室を後にした。

今宵は新月だった。深夜にこっそりとでかけるには好都合だ。雛森は可能な限り注意を払い、限界まで霊圧を押し殺して隊首会へ
向かった。
「ここね・・・」
扉の前に雛森がたったら、扉はひとりでに開いた。
「えと・・・護廷十三隊五番隊副隊長 雛森桃にございます・・・本日山本総隊長の名の下に呼び出しを受けました・・・」
「入れ」
山本総隊長が言った。雛森は中に入った。その瞬間、ものすごい不快感、不安感を覚えた。
無理もない、隊長たちが同じ部屋にひしめき合っているのだ、その霊圧は桁違いだ。雛森は、そこから一歩も前に出ることができなかった。
目の前に山本総隊長、その左右に二番隊隊長砕蜂、三番隊隊長市丸ギン、四番隊隊長卯ノ花烈と並んでいたのだが、五番隊の場所は空席になっている。
藍染隊長がいない・・・雛森は急に心細くなった。
「それでは隊首会を始める」
「あの・・・その前にひとつ、質問してもよろしいでしょうか?・・・藍染隊ty・・・」
「ならぬ!」
厳とした山本総隊長の声が響いた。声を発すると同時にすさまじい霊圧が飛んできた。雛森は、思わず身をすくめた。

――助けて!シロちゃん・・・!!

日番谷に助けを求めるかのような視線を向ける雛森。しかし日番谷は視線を下に落とし、あからさまに雛森と目を合わせないようにしている。
「本日の隊首会は雛森副隊長、そちの身柄についてじゃ」
「・・・え?」
「山護廷十三隊総隊長 山本元柳斎重國の名の下に宣する」
山本総隊長が威厳たっぷりに言った。
「護廷十三隊五番隊副隊長 雛森桃、この者は本日より第十四番隊に移籍される」
「は・・・はい?・・・じゅうよん・・・ばんたい・・・?」
雛森は困惑していた。十四番隊なんて、今まで一度も聴いたことがなかった。
隊長たちの反応はさまざまだった。砕蜂は高慢な笑みを浮かべ、市丸は意地の悪い笑みを浮かべている。
卯ノ花は同情するような表情で、朽木は無反応、狛村はわからんけど、春水は卯ノ花と同じで同情するような表情、
東仙もわからん、日番谷は相変わらずうつむいたまま、歯を食いしばっていた。更木はなめるような目で雛森を見つめ、
マユリはぞっとするような笑みを浮かべていた。浮竹はため息をひとつ漏らした。
「この十四番隊は極秘機関じゃ。このことを口外することは決して許さぬ。普段は五番隊副隊長として行動しておれ、有事の時には
隠密機動が伝令に向かうであろう」
「・・・あの・・・十四番隊とはいったい何なのですか?」
山本は雛森の質問を無視した。
「それでは本日の隊首会は終了じゃ。皆夜遅くにご苦労じゃった」
隊長たちは解散し、ぞろぞろと出口へ向かっていった。
「そのうちわかる日がくるよ、それまでごきげんよう」
すれ違いざまに、市丸がささやいた。







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