―――   一護×織姫  著者:笹葉様   ―――



「井上、今日お前ン家行ってもいーか?」

割と簡単な一言‥の筈である。
例えば授業と授業の間、例えば教室移動の時に歩きながら、ちょっと呼び止め
「いーよ。」と返事を貰うだけで良い。
だが、それだけの一言がなかなか上手く言い出せずに、先週、昨日、そして今
日を迎える。黒崎一護は、自分の情けなさを思い返して大きくひとつため息を
つき、鞄の中に入りっぱなしのシャツを見てもうひとつ、ため息をついた。
借りっぱなしのシャツは井上織姫の今は亡き兄のもので、借りることになった
経緯は‥語れば長くなるが、短く纏めれば、まァ汚してしまった為である。他
ならぬ、一護と織姫自身の‥言うなれば状況の流れと粘液によって。
二人はクラスメートだが付き合っているという訳ではない。
訳ではないのに、もうそのシャツは二度も一護の白濁液やその他諸々で汚され
る羽目になっている。
今日こそ、ちゃんとこいつを返して、織姫と話をしなければ。

織姫に対する一護の気持ちは大方決まっていた。というか、正直なところ、は
っきりと好きという気持ちは判らない。だが、単純に可愛いと思うし、初めて
の相手であるし責任を取らなければいけないと思っている。ただ、女と付き合
う、という形があまり自分の中で現実味がなく、想像できない事と、クラスメ
ートにそういうのはすぐに知られてしまい、その対処が面倒臭いだろう、とい
う想像の為になんとなく引き伸ばしていたのだ。
そんな訳でかれこれ一週間くらいあまり織姫とは口を利いていない。これ以上
間があくと二人の間は気まずいものとなる気がする。いや、そう意識する時点
でもう気まずいな、と感じているのであろう。
一護は、鏡台の前で、もう一度「今日、お前ん家、行っていーか?」とシミュ
レーションをしてみた。別に織姫の家である必要もないのだが、学校では誰の
目につくか判らないし、一護の家は賑やかな連中が織姫を放っておく筈も無い。
おそらく家に連れてきた途端に、
『お兄ちゃんのカノジョ祭り〜シャイなお年頃めこんちくしょう〜』
が開催され、織姫は食人族のメインディッシュのように祭りあげられることだ
ろう。そのまま第二部、『ミッション・インポッシブル0015〜盗☆聴』までも
自分の中で想像して一護はぐったり青くなる。二人っきりは少し、いやかなり
緊張するが織姫の家が一番無難かつ安全なのである。
今日こそ。一護は決意を胸に、鞄を閉じて立ち上がった。

「オイ一護!出かけんのか?」
突然声を掛けられて振り向くと、しゃべって動くぬいぐるみ―――改造魂魄の
コンが居た。
「今日はお前に言っときたい事があんだよ!」
ライオン形のぬいぐるみは鼻息(?)も荒く、出かけようとする一護の前に立
ちはだかる。立ちはだかるといってもぬいぐるみと高校生の身長差なので、ス
ルーは可能である。っていうかスルーする。一跨ぎにコンの頭上を越え、一護
は扉に手を掛けた。
「オイオイオイ待てコラァ!」
慌ててコンが一護の右足にしがみつく。
「何だよ。」
煩わしそうに返事をして、コンの平たい頭を乱暴に掴んで脇に除ける。掴んだ
瞬間にぬいぐるみの口からぐぉ!という奇妙な声がした。
「て、テメエ!もっと優しく扱え!俺のプリティバディを‥!」
「うるせえなァ‥」
こっちは考えなきゃいけないことがいっぱいあるってのに‥。
「そんなんだから女の扱いも下手なまんまなんだよ!」
ポロ‥と一護の手からぬいぐるみは離れ、コンは床にへぶっと顔面をしたたか
に打ちつけた。
「イテテ‥」
とコンは顔をさすって、何しやがる!とプンプンと上に叫び上げる。と、一護
が顔中に汗を滴らせこちらを睨んでいた。
コンは一瞬ビクっとする。殺られるか?いや、その前に殺ってやる!

「‥フッ、俺ァ情報通なんだぜ‥一護、てめぇが井上サンとあんなコトやこん
なコト、あまつさえ、あーんなコトをしたってのは、一面トップから三面記事
になるくらいまで、とっぷりと承知済みよ。」
『あんなコト』『こんなコト』の一言が出るたびに、一護の身体がビクッ、ビ
クッ、と過敏に反応する。効いてやがる‥。コンはニヤリとぬいぐるみの口を
歪ませる。だが、その勝利はほんの一瞬だけのものであった。一護の手がガッ
と伸び、コンは鷲づかみに頭をきゅーっと掴まれて、一護の凶悪な目線の高さに
吊り上げられる。
「誰から聞いた‥?」
少々掠れた声で一護は低く尋ねる。言葉と同時に掴んだ指先に力を入れたので、
これはもう尋問というか拷問である。コンがどんなに虚勢を張っても所詮はヒ
トとぬいぐるみ。力でいったら勝敗はついている。ぬいぐるみは戦う前に死を
覚悟したが、今回は逃げも引きもしなかった。
「井上サンからだよ。オメー、井上サンとヤるだけやっといて、そのまんまに
してるらしいじゃねーか!ガキが放置プレイなんて20年早いんだよこの野郎!」
一護が硬直する。最も気にしていて、最も痛いところを突かれたのだ。
「あんまり寂しそうだったから、俺が慰めてやったぜ。」
コンが憎々しい素振りでそう付け加える。一護はその言葉にバネ仕掛けのよう
に動き、「てっ‥!」と声をあげる。
「てめえ井上に何したんだよ!まさか‥」
「テメーに責められる謂れはねえぞ甲斐性無し。彼女じゃねーなら俺が井上サ
ンに何しようと文句は言えねえ筈だろ。」
「ざけんなよ!彼女じゃなくったって井上は‥!」
井上は‥。
放っといた自分にその先を言う権利はあるのか‥?
それに、俺が好きなら何でコンなんかと‥。
自分に、織姫に、そんな疑問を抱えて一護はそのまま黙ってしまった。コンは
一護の手を剥がして床に降り立ち、ケッ、と一言吐き捨てた。
「判ってんならさっさと決着つけろよな。」

‥判ってるよ。
教室への階段を上る最中も、一護はそんな事判ってるっつーの‥とブツブツと
独り言を繰り返す。ケイゴのグッモーニン!の騒がしい挨拶も水色のエセ爽や
かな挨拶も耳を素通りしていき、脳内はひたすら織姫に掛ける言葉を検索し続
けている。該当する上手い言葉はパソコンのように上手く浮かんでくれないの
だが。そうこうしている内に教室にたどり着いてしまった。
空きっぱなしの扉から教室を見ると、もう織姫は登校しており、例によってた
つきや国枝、小川らと集まって笑みをこぼしている。
本匠が織姫の腕に自分の腕を絡ませ、たつきに引き剥がされる。いつも通りの
風景だ。織姫に視線を合わせていると、彼女はこちらに気付き、「黒崎くん!」
と手を振る。女子たちの視線が一斉に自分に集まり、一護はなんだか妙に落ち
着かなくなる。
「おはよー!」
織姫はいつもと変わらない、寧ろいつもよりも大きな声で朝の挨拶をして、こ
ちらに近づいてきた。ここ一週間はこんな風に元気良く声を掛けられることは
なかったので、一護は戸惑いながら、お、おう、おはようと返そうとする。だ
が、うまく声が出ず、挨拶の表情も作れなかった。
朝の言葉が一護の中に響いて残っている。
コンと織姫の関係が本当だとしたら、なんで‥。
なんでヤッてんだよ‥。

一護の頭の中にその疑問が巡る。織姫の変わらない笑顔を見れば見るほど、尚
更にそう思ってしまう。一度は自分に告白したそれは、一体何だったのか。
そりゃ、コンの身体は自分の身体であった訳だから、自分と言えなくも無いし、
自分であるなら浮気とは言わないかもしれない。いや、浮気っつーか付き合っ
てる訳でもないのにそういう事を言い出すのもおかしいのかもしれねーし、だ
けど返事云々の前にそんなコトがあったらどう井上に接していいかっつーか何
つーかああもう!
「あー!めんどくせえ!」
思わず口をついてその言葉が出てしまった。
自分が言った言葉を認識した時には、教室は気持ち悪いくらいに静まり返り、
織姫と、女子たち、そして男子までもが自分に注目していた。
気まずい。
なんてもんじゃない。挨拶してくれた女に「あーめんどくせえ」などという言
葉は、どんな会話術の本にも出てこない。当然その後のフォローの仕方もマニ
ュアル外である。一護は自分の顔から血が一斉に引くのを感じた。
言葉を受けた織姫はおはよう、の笑顔のまま固まっている。声を‥声を掛けて
やらねえと‥

「あ‥い‥」
井上と言おうとした瞬間に、一護の眼前に何かが飛んできた。
「うぇおぁ!」
飛んできたものが幼馴染のたつきの足だと気付く前に、一護は芸術ともいえる
飛び蹴りをこれ以上ないほどモロに喰らった。教室の壁にしたたかに叩きつけ
られる。痛みを堪えて身体を起こす前に、蹴りをよこした本人が一護のシャツ
の胸倉を掴んで持ち上げた。男一人の体重を軽々と、である。
「ちょっと黒埼!あんたアタシのヒメに暴言吐きやがって!貧弱なアンタの腐
れチ〇ポ晒して剥いて(他女子により一部規制)して、切り落とす位じゃ済ま
ないわよ!」
千鶴の声が奥から響く。だが、その声の後にゆっくりと、たつきの声が低く、
重たく一護に圧し掛かって来た。
「一護‥アンタ‥どういうつもり?」
一護はどう答えて良いか判らない。自分に対して言った言葉かもしれないが、
織姫の事を考えていて出た言葉でもある。関係ないとは言い切れない。仮に別
のことを考えて出た言葉だと取り繕ってもたつきにはすぐに判ってしまうだろ
う。一護のそんな様子を見て、たつきはそのままグイ、と教室の外へ連れ出し
た。

「たつきちゃん!」
慌てて織姫がちがう、ちがうよ!と言いながら追ってくる。
フォローをしようというのだろうが、何がどう違うのか。一護が思った事をた
つきはそのまま口にした。織姫にも咬みつかんばかりの勢いである。
「何がどう違うのさ!朝の挨拶をめんどくせえ、で返されたのはアンタだよ織
姫。」
「だから違うんだよ。今朝は、その‥と、特別な挨拶をする予定だったの!」
「ハァ?」
たつきと共に一護も声をあげる。
「この前黒埼くんと約束したの。「おはよう、黒崎君」てあたしが言ったら、
黒埼くんは「く」「ろ」「さ」「き」「い」「ち」「ご」それぞれの文字がつ
くドラえもんのひみつ道具を言わなきゃいけないって。例えば「く」なら空気
砲、「ろ」ならロボッター、「さ」は先取り約束機、「き」着せ替えカメラ、
「い」石ころ帽子‥」
「も、もういい、もういいよ織姫‥」
たつきがどうしようもない子を慰めるかのように織姫をなだめ始める。だが織
姫は止まらない。ただ単にひみつ道具を言いたいだけなのかもしれない。
「ち、「地底探検車」「ゴ‥ゴ‥ごろばし屋‥?あ、ゴルゴンの首!」
誰も知らねーよそんな道具まで!と一護とたつきは突っ込みたかったがとりあ
えず止めておく。織姫は全部出した事に満足したのか、ふう、と一つ息をつく。
それから、二人の何とも言いようがない表情を見て当初の目的を思い出し、あ
わわ、と再び喋りはじめた。
「で、えーと何だっけ、あ!そうそうそれで、自分の名前のひみつ道具を答え
るのが面倒になっちゃって、ついめんどくせーって‥ね!ほら!」
何が「ほら」なんだか。だが、兎にも角にも、織姫のその無理のあるフォロー
は、たつきの殺気を削がせる事には成功したようで、力の入っていた拳は一護
のシャツを解放した。

「‥わかったよ織姫。アンタが良いならアタシは良いし、アンタが一護のボケ
と何かあっても、そっちが言うまで聞かない。」
それでいい?とたつきは織姫に確認を取る。織姫は笑顔でこく、と頷き、
「たつきちゃん、ありがとう。」
と付け加えた。たつきはその笑顔に同じ笑顔で返してから、再び一護を睨んで
顔を間近に近づき、先程と同じ、低く、ゆっくりとドスの利いた声で呟く。
「とりあえず、さっきの件はナシって事でクラスのヤツらにはアタシが話付け
とく。だから気にすんな。」
一護は気おされて、お、おうと答えるばかりである。たつきはそのまま、ただ
し‥判ってると思うけど、と言葉を続ける。
「昔から織姫を泣かすヤツはアタシにぶっ倒されるって決まってんだ。」
それを忘れんなよ、と言ってたつきは立ち上がり、教室へ戻った。一護も立ち
上がり織姫を見る。とりあえず、礼のひとつくらいは言わなければいけないだ
ろう‥。だが、口を開く前に織姫が視線に気付いてこちらを振り向いた。
「い、井上‥」
一護はドギマギして言葉に詰まる。織姫が先に促した。
「授業、そろそろ始まるけど‥」
織姫は一護の目を確りと見据えて言葉を続ける。
「少しだけ、サボっちゃだめかな?黒崎くんと話、したいんだけど‥」

「あー‥俺も、話あるんだけど‥」
一護は頭をがしがし、と掻きながら織姫に答える。だが、
キーンコーン‥
無情にも授業開始のチャイムは鳴り響き、廊下の奥から担任の越智美諭が、立
ち尽くす二人の教え子に声を掛けてきた。
「おーい、そこのオレンジと茶色いのー。授業はじめるぞー。」
織姫が苦い笑みを零して一護に笑いかけ、教室に戻ろうとした。一護はその時、
自分でも驚くほどにすんなりと織姫に声を掛ける事ができた。
「井上、今日お前ン家行ってもいーか?」
ガッコじゃゆっくり話、できねえからさ、とフォローめいた言葉を続ける。織
姫は瞳を大きくし、少し驚いた顔で振り向いてから、サラ、とした明るい色の
髪を揺らして答えた。
「あ、うん。いーよ。」

織姫の家に入るのはこれで二度目である。
一度目と全く変わらない居心地の悪さが一護の周りを支配する。帰り道、学校
から織姫の家まで一緒に歩いて来たのだが、一言も口をきかなかった事が家の
空気をより重くしていた。いつもならあれこれと馬鹿話をする織姫もずっと黙
ったままだった。気を遣っているのか、さっきの発言を怒っているのか、一護
には判断がつかず、更に気まずい思いになる。ソファに腰掛けたまま、一護は
大きく息をついた。以前来た時に織姫と一護の二人の身体を預けたソファはど
こも変わらず、一護は何となく妙な気分でソファの背を手の平で撫ぜた。
ほどなくして、織姫が茶を淹れて部屋に入ってきた。
「あったかいのでよかった?」
織姫が言いながらカップを手元に置く。前回の紅茶キノコではない、普通の紅
茶色がカップの中でたゆん、と揺れている。一護はサンキュ、と小声で呟いて
口をつける。そして噴く。
やはりそれは、紅茶とはかけ離れた味がしたのだった。
「‥美味しくなかった?高麗人参茶。」
「お前‥健康オタクのジジイかよ‥。」
どっから仕入れてくるんだか、本当に不思議だと思った。とりあえず、これ以
上飲むのはある意味我慢大会に近い。だが、それ以上にこの気まずい空気に我
慢できない一護は、状況を打破すべくカップを置いて織姫を見た。

「井上。」
「は、はい。」
一護の表情に織姫はかしこまり、姿勢を正す。一護は返されたその瞳に言葉を
詰まらせる。
「その‥今朝‥悪かったな。」
考え事してたもんでよ、と一護はぎこちなく謝る。織姫はあ、ううん。全然と
ひらひらと手を振って答え、美味しそうに人参茶を一口飲む。
だが、その後彼女の口から出た言葉は、一護を一層慌てさせるものだった。
「何、考えてたの?」
「あー‥その‥。たいした事じゃねーよ。」
一護は言葉を濁しながら、結局人参茶を誤魔化しに飲む。苦味と甘味のある気
持ち悪い味が口と鼻腔に広がっていく。
「そっか‥たいした事じゃないか‥。」
織姫がそう返した。
再び、沈黙が部屋を支配してしまった。

織姫は、すう、と息を吸い込み、もう一度一護を見て、この部屋で言われたコ
ンの言葉を思い出す。
―――何もしないうちから諦めんなよ―――
黒埼くんが私のこと好きじゃなくても‥ちゃんと、がんばろう。振り向いても
らえるように、好きになってくれるように。織姫はそう決心して一護に声を掛
けたのだ。もう一声、気持ちを振り絞るだけなのに。思ってはいるが、「たい
したことじゃない」という言葉に少し怖気づき、中々口には出せない。だが、
その視線に一護が気がついた。
「な‥なんだよ。」
別にそうしたい訳でもないのに、やけにぶっきらぼうに言葉を放つ。一護は自
分でも判らないうちにイラついていた。この状況を作り上げているのは、他な
らぬ自分なのだが、上手く気持ちを抑えられない。織姫は少しその声に怯えた
ようだった。怖がらせるつもりなんて無いのだが。何で、自分はこんな気持ち
で居るんだろう。織姫を見ているとなんだか気持ちが妙にざらつく。この感情
が何なのか、一護は判らないまま今日半日を過ごしていた。織姫は何かを言お
うとしている。どうやら言葉を選んでいるようで、途切れ途切れに一護に語り
かけてきた。

「あのね‥、色々考えたんだけど‥あたし、その‥黒埼くんの事‥好きで。今
までは、ただ好きでいるだけで良かったんだけど、それはホントは嘘で‥思っ
てるだけじゃ、なんかどんどん足りなくなってきて、黒埼くんに触れたい、と
かキスしたい‥とか、デートしたい、とか‥色々思うようになって。えっと‥」
織姫はなんだか今にも折れてしまいそうなか細い声になってきている。だが、
その詩のように途切れ途切れの言葉は、一護には素直に受け入れる事が出来な
かった。
「だったら‥」
ぼそ、と織姫に呟く。織姫は顔を赤らめたまま、え?と聞き返した。
「だったら、何でコンとヤッてんだよ。」
言葉に出して漸く気付く。これは嫉妬と独占欲だ。

織姫の事を好きかどうか、はっきりと判らなかった癖に、嫉妬だけはしていた
のだ。一護は、そのバツの悪さを塗消す為に織姫を責めた。卑怯だと自分でも
思ったが、言葉は止まらない。
「あいつは俺のカラダだけど俺じゃねえ!井上お前、俺の顔なら何でもいいの
かよ!」
「そんなんじゃないよ!あたしが好きなのは黒崎くんだけだよ!」
織姫は即座に返す。
いつもののんびりとした口調ではなく、はっきりとした言葉。織姫が酷く傷つ
いた顔をしていて、一護は胸をぐっと掴まれたように苦しくなる。
じゃあ、何でだよ‥と先程よりもだいぶ勢いを失った声を出す。
「何でって‥」
織姫も一護の声に比例するように勢いを無くし、えーと‥と言葉を繋ぐ。
「初めて‥したとき、コンくんは黒崎くんの代わりをしてくれて、あたしを抱
いてくれて‥で、次はコンくん本人と‥って約束したから‥。」
「‥それだけ?」
「それだけ‥なんだけど‥。」
「な‥約束って‥!おま‥馬鹿か!!そんな約束すんじゃねえ!!」
「ご、ごめんなさい!」

一護の怒声に織姫は即座に謝ってしまった。こうなると言葉に詰まるのは一護
の方である。いざ、謝られるとこれ以上責めようが無い。
というか、怒鳴った瞬間にごちゃごちゃしていた感情も一気に吹き飛んでしま
ったのだった。
「‥お前なァ‥、そんな理由でな‥もっと自分を大切にしろよ‥。」
説教親父のようなありきたりな言葉をフォローのように付け加える。織姫は、
しゅんとして、あ、はい‥と答えた。
「で‥じゃあその、コンの事は好きとか、そーゆーんじゃねえんだな‥。」
妙な確認を取る自分が、何だかやたらと恥ずかしい。一護は髪をがしがしと手
で掻きながら、ぶっきらぼうにそう聞いた。
織姫はその言葉にコンの事を少し考える。何よりも、誰よりもきっと優しいあ
の笑みには確かに少し惹かれもした。でも。
「あたしが好きなのは、黒崎くんだけだよ。」
よどみ無く、織姫は一護にもう一度そう伝えた。その透きとおったような言葉
と表情に、一護は鼓動が高くなる。
「そ‥そっか‥ありがとう‥」
漸く言葉を返し、そしてまるで瞳に吸い込まれるかのように、一護は織姫に近
づき、長い髪の零れている細い両肩に手を掛けた。俺も‥とごく、と唾を飲み
込み喉を上下させる。織姫も同じように、息を呑みこんだようだった。
「俺も‥井上のコト、好きかもしんねぇ‥。」

微妙な発言をした。織姫が「かも?」と小首を傾げて不思議そうにこちらを見
たので、漸く一護は自分が言った言葉に気付き、あ、いや‥その、としどろも
どろに続けた。
「その‥よくわかんねーんだよ‥。好きとかそういう気持ちって。オフクロを
好きだってのは違うだろうし、俺、女好きになったコトとかねーし‥だけど‥、
だけど、お前がコンと‥ったって聞いて、凄えヤだったんだよ。ヤキモチとか
ってダセエけど、考えてみたら好きじゃなきゃ妬いたりしねえなって、そう
思って‥。」
だから、「かもしんねぇ」な訳である。不器用だが素直に答えてくれた一護に、
織姫は笑いかけた。
「ありがとう‥黒埼くん‥。すっごい、嬉しい。」
「お、おう‥。」
「ほんとに‥すっごい嬉しい‥。」
言いながら織姫は、瞳を閉じて俯いた。ちょっと涙を堪えている様子で、一護
は少し戸惑ったが、そっと、織姫の頬に手を触れて顔を上げさせ、キスをした。

「ん‥っ」
織姫は唇が触れた瞬間は瞳を大きく開いたが、すぐにまた目を瞑り、一護に答
えるように唇をついばみ返していく。一護も少し強く織姫の小さな唇を甘噛み
していき、やがて舌を侵入させた。
熱い粘液が唇の端から少し零れているのが感じられたが、止める事は出来なか
った。上手ではない、だが互いにがむしゃらに唇を求め合い、舌を絡めていく。
一護はキスで織姫の唇を塞いだまま、織姫のシャツに手を掛けはじめる。
「んっ‥あ‥、あ!まッ‥まって‥。」
織姫が自分の胸元に伸びていた一護の腕を掴む。濡れた瞳で一護を見上げて、
上気させた頬で聞いてきた。
「あの‥シャワー‥浴びて・いい‥?」
一護は、あ、ああ、と頷き、俺も借りていいか?と聞き返した。

結局、先に借りることになった一護は、見慣れないバスルームで全裸になり熱
い雨を頭から一気に浴びた。今までずっと衝動的に織姫を抱いてきたので、こ
んな風にその場に臨むのは初めての体験である。鼓動が酷く早い。
心の準備なんて、するもんじゃないと思った。
自分たちのこの後の姿を思い浮かべる。織姫の細い首、腕、すらりと伸びた足。
大きくて白い胸。その中にあるやけに卑猥な桃色。
身体が自然に反応をはじめる。
一護は右の蛇口を捻った。熱い湯は急激にぬるくなり、そして冷たくなる。顔
中に浴びる冷たいしぶきが、逆に体温の高まりを感じさせる。頭を冷やせばい
いのか、もっと熱に浮かれたようになるべきなのか、よく判らなかった。
でもとりあえず右手で己を扱き、あらかじめ抜いておく。また早くイッちまう
のも格好悪いし。

「サンキュな。」
オレンジ色の髪にタオルをぞんざいに宛がいながら、一護は織姫に言った。
「あ、うん。じゃあ、いってきます。」
小走りに織姫が一護の脇を通る。ふわり、と織姫の匂いがした。
シャワーなんて浴びる必要ないんじゃないか。
そう思うくらい一護を酔わせる香りだった。

織姫の帰りは思った以上に遅く、待っている一護はすこし気まずい思いをする。
何が気まずいって、一度抜いたにも関わらず、一護のそれは待ちきれずにその
身を再び大きくしはじめたからである。若いから、と片付けてしまうのは簡単
だが、自分の身体の聞き分けのなさにウンザリする。
頭の中に虚や授業やら色々とごちゃごちゃと無理矢理思い浮かべて、押さえ込
む。そうこうしている間に、扉が叩かれる音が部屋の中に響いた。
「黒崎くん‥入っても、いい?」
扉越しに織姫の声が聞こえて、一護は落ち着きなく立ち上がり、無意味に落ち
てもこない髪などを掻き揚げる。自分の部屋なのに入ってもいい?などと聞く
のも妙なもんだ、と一護は心の中ほどで考えながら、ああ、と声を掛ける。
織姫が扉を開いた。
そこには、まだ濡れたままの長い髪と、露になっている白く細い肩。やわらか
なタオル地の下に、それ以上の柔らかさがあるふくらみ。しっとりした太腿、
その下の細い足首も隠されずに、タオルを一枚だけ纏った織姫が立っていた。
一護の、再び落ち着けたはずの中心が早くも反応しはじめた。

「あの‥電気、消していい?」
おもむろに織姫が言う。
「え」
予期していなかった言葉だが、経験の決して多くない女子としては当然のセリ
フだったかもしれない。一護は、内心渋りつつだが、天井へ手を伸ばし、明か
りを消した。一瞬目の前が暗くなるが、まだ夕方前である。カーテンは閉まっ
ているが全て闇というわけではない。織姫の恥ずかしげな表情もその肢体も、
一護にはよく見える。当然、自分の緊張した表情も向こうには見えているのだ
ろう。そう思ってなるべく平然とした表情でベッドに腰を掛けなおすと、織姫
がゆっくりと、ベッドへと細い足を運んできた。
「‥な‥なんか、緊張しちゃうね‥。」
初めてじゃない筈なのに、なんか初めてみたい、と織姫は笑う。一護もそうだ
な‥とぽつりと言葉を返して
「いいか‥?」
と織姫に呟いた。
「あ、う、うん、よろしくおねがいします!」
ぴょこん、と織姫が頭を下げる。何だか妙な返事だ。一護は少し笑って緊張を
緩め、織姫の身体を守っていたタオルを取り払った。
はさ、とタオルが落ちる音がやけに耳に残ったが、視線は全裸の織姫に集約さ
れた。


一糸纏わぬ織姫を見るのは初めてだった。
まだ昼間の外界からの光は二人の部屋を薄く明るくさせ、織姫の肢体を艶やか
に彩っている。部分的に見たことがある細い腕、腰、脚。細い身体にはあまり
にも不釣合いな大きな胸。清楚な感じのする中にやけに淫猥な中心の桃色の突
起も、織姫の一番大切な部分を守る陰毛も、そして戸惑い潤んだその表情も、
長い睫も、何かに耐えるような唇も。全ての部位が薄明かりの中で一護を誘っ
ているようで、一護は、まるでそれらを生まれて初めて見たかのように、凝視
してしまった。
「く‥黒埼くん‥」
織姫が恥ずかしそうに俯いて一護を促す。一護は両手で織姫の背中に手を回し、
細い身体を抱き寄せる。座っている一護の目の前は、当然のように織姫の大き
なふくらみが視界の全てとなる。何の焦らしも躊躇もなく、一護は織姫の中心
の突起にむしゃぶりついた。
「んぅ‥っ!」
一護の中心が硬くなっているのと同様に、織姫のそれも既に少し身を固めてお
り、舌触りにコリ、という感覚がする。舌先だけでぷるぷると乳首だけを弾き、
更に口の中で舌を絡めて交わせ、唾液と共に滑りやすくさせてまた弾く。

「っはぁ‥っ‥あぁん‥っ」
背中に回していた両手を両乳に移動させて、下からたっぷりと掴み上げて揉み
しだきながら、乳首への舌の愛撫は剥がさない。だが、胸自体を大きく揺さぶ
っている為、織姫の突起は口元から逃げやすく、その度に一護は唇で大きく乳
輪を甘噛みし、捕らえる事となる。織姫は自身の敏感な部分が一護に囚われる
度に、あぁっ!と甘い声を上げた。興奮が高まるほどに声のトーンも高くなっ
ていく。一護は揉みしだく手を少し和らげると同時に、口に含んだそれをちゅ
うう、と吸い上げた。
「んぁあ!」
織姫が身体をびくん、と反らせる。逃がさないように片手で織姫を抱え、もう
一方で自らのズボンを下ろし、その手で空いて居る乳を揉み続ける。舌の表面
のざらついた部分で早くも硬く尖った織姫の乳首をざらりと舐め上げる。びる
ん、と戻る弾力のある突起が、酷くいやらしい。
一護は舌先を尖らせて、織姫の尖りを突くように責め立てた。まるで何かのボ
タンかスイッチのように押された乳首は織姫の嬌声と共に潰されてすぐに元の
形状を取り戻す。勢い良く戻るそれは益々一護を溺れさせていき、舌の動きは
強く活発になっていく。
織姫の股間からぷちゅ、という音が漏れ、透明な液体が内側の腿を伝って滑り
落ちていった。
「く‥くろさきくん‥っ‥やぁ‥っ」
織姫は立っているのが少し辛いようで、一護に縋るような瞳を向ける。だが、
その視線は一護をより奮い立たせるばかりであった。

一護は手と舌を運動させながら、織姫の膝の間に自分の膝を割り入れ、織姫の
脚を開かせた。
「ぁあ‥っ」
開いた脚の間から、透明な液体が粘り気をもってつうー、と垂直に落ちていき、
一護の膝を濡らす。織姫をそのまま降ろして膝に座らせると、ぺちゃりという
蕩けた熱さと、柔らかい肉襞の感触ががした。一護は膝を軽く動かす。
「あぁっ‥っあ‥!」
果肉が擦られる度に織姫は短く声を上げ、粘液の跡を広げていく。太腿を上下
に揺らすと、プチャ、ピチャ、と粘り気の混じった音が弾け、織姫の乳房もそ
の音と共に上下に揺れ動いていく。一護は、更にぐっと膝を持ち上げて、織姫
の秘部に腿を食い込ませて、揺れる乳房を再び撫で回し、両指で二つの突起を
摘み上げた。
「っぁああっ!」
一際大きく上がった織姫の声と共に、熱い液が一護の腿にとくとくと広がる。
一護はそのまま手を止めずに指先の数本で乳首を転がし続けた。引っ張り、押
し込み、弄り続ける毎に織姫の下肢から、熱いものはとめどなく流れ続ける。
「く‥くろさ‥っ‥あぁ‥っ!やぁん‥っ、あたし‥それ‥ッ‥」
頬を真っ赤に染めた織姫が一護に哀願をする。だが、一護は愛撫に夢中で聞こ
えていないようだった。織姫は残った理性で激しい快楽から逃れようと身をよ
じる。膝から落ちそうになる織姫を一護は支えなおし、体を捻ってベッドに織
姫を倒しこんだ。そして膝は織姫の両脚の間に押し入れたまま、織姫の乳首に
唇を吸い付け、支える必要がなくなり空いた手のひらを、織姫のもう一つの突
起に擦りつけた。

舌で満遍なく乳首を舐め上げると、また一護の膝には熱い感覚が染みる。
「あぁ‥はぁ‥んっ‥はぁんっ‥駄目ぇ‥それ‥だめ‥っ‥!く‥くろさ‥き
くん‥っ!お‥おっぱい‥だめぇ‥!気持ちい‥っああっ!あぁん!」
織姫の激しい声に漸く一護は気付き、唇を剥がす。腿に感じるとろりとした感
触はもう膝の下まで垂れており、早くもベッドを湿らせていた。
一護はシャツをぞんざいに脱ぎ捨て、胸に宛がっていた手を下方へ滑らせた。
そのまま織姫の熱が零れたところへと指を這わす。
花弁のやわらかい感触にぬるりとしたものがあり、一護の熱も同じように高ま
っていく。織姫が荒く息を吸い込むと、汗の香りがした。
(黒崎くん‥カラダ、熱い‥)
一護の生身の上半身は、幾度か目にしたことがある。体育の授業の後や喧嘩の
後などで目にする光景だ。だが、こんな至近距離で、こんな風に肌と肌が触れ
合うなんて、想像もしなかった。胸板に触れ、織姫は一護の片胸の中央にそっ
と、唇を寄せた。
「‥ッ!」
織姫の唇は熱く、その舌はそれ以上だった。一護は予期していなかった自分の
乳首への刺激に身体を震わせ、織姫はその反応に舌先を動かすことで応じた。
今まで感じたことも無い刺激が一護を襲い、思わず声を上げてしまう。下着だ
けに守られた一護の中心は、力強く屹立し、織姫の下腹部にその存在を誇示し
てしまった。織姫はその感触が何なのか気付き、かあっと赤くなる。
はぁっ、と息を吐いた一護が、ぼそっと呟く。
「‥井上‥お前エロいよ‥。」
「えっ!えええ!?く、黒崎くんのほうがやらしいこといっぱ‥っ!」
一護は織姫に最後まで言わせず、宛がっていた指を織姫の中にくちゅ、と入れ
込んだ。
「ぁあ‥っ」
指を二本。第二関節の辺りまで押し込み、折り挿れて膣の中で掻き回す。ぬる
ぬるのそこは熱く滑りよく、一護の指を包み込む。

指を抜き差ししながら、親指で織姫の核を責める。
「ひぁん!あぁあっ!あひぃあ!」
既に充血して勃ちあがり、主張をしていた織姫の陰核は、親指の刺激に耐えか
ねて織姫の内部に鋭い電流を流していく。
蜜壷からは更に熱いものがこぼれ出てきた。
一護の下肢も同じく熱い液が滲んでいる。もう我慢は限界に近くなっていた。
「井上‥挿れて‥いいか?」
一護はそう言いながら、下着に手を入れ、逞しく聳えた己を取り出した。
織姫は潤んだ瞳でそれを捕らえて、一護の方を見直し、
「あ‥うん‥いーよ‥」
と答えた。
そしてそこで一護は、はた、と止まる。

コンドームがない。

毎度の事なのに、そして今朝は織姫の家に行くことで少し予想をしていた事だ
というのに。
(場慣れしてないと、けっこうそーゆーダッサイことになっちゃうんだよね。)
小島水色がしれっと言ってケイゴに責められていた言葉を思い出す。
(いいんじゃない?ナマでも。中出ししなきゃ。)
いい‥かな‥。
何故か水色の言葉に後押しされて、一護はそのまま、織姫の泉の源に己を近づ
けていく。このまま挿れたら、途方も無い快楽が一護の一物を包み込むのだろ
う。膣に入りたい欲求が一護の理性を蝕んでいく。水色の声がまた聞こえる。
(ナマはやっぱ、良いからね。比べ物になんないよ。)
そうだよな‥
(ま、ボクはしないけどね。危ないから。)
だよな!やっぱマズイよな!
一護は慌てて引き戻した。織姫は覚悟を決めていたところに一向に一護が来る
気配がなく、不思議そうに聞いてきた。
「どう‥したの‥?黒埼くん‥。」
「あ‥悪ィ‥その‥。」
俺、準備とか何も考えてなくて‥と一護は心底申し訳なさそうな、情けなさそ
うな顔をした。織姫は何の事かさっぱり判らずに、まだきょとん、としている。
「ゴムとか‥無いんだけど‥」
正直にぼそぼそ、と伝える。織姫は漸く察したようだった。
「ゴムって‥あの‥?」
「‥コンドーム。」
「コンドーム?あるよ。」
「あぁ、そ‥えぇ!?」
驚く一護を尻目に織姫はベッドの下へ、んしょ、と手を伸ばすと、確かにその
手にはコンドーム《USUI:0.03》などと書いてある箱がある。思わず一護
が何で持ってんだよ!と突っ込むと、織姫は素直に答えた。

「コンくんがね‥一度帰った後に、買って来たの。黒埼くん、きっとそういう
の用意してないから‥って‥。」
道理で今日購買で金が足りないと思った‥。一護は心の中であのヤロウ人の金
を‥と思いながら、そしてコン如きに自分が全て読まれてしまっている事を悔
しく思いながらも、心の隅のほうでちょっとだけ感謝する事となったのだった。

コンドームを付けるのは二度目であった。
実は一度、高校に上がりたての頃に、そういう状況になった時の為にこっそり
装着の練習をしていた一護であったのだが、その夜に親父に無言で肩を優しく
叩かれて頷かれて以来(今思えば最高級の嫌がらせだ。)手にしていない。
当然手つきは不慣れで、時間が掛かった。
漸く準備を整え織姫を見ると、布団を被って寒そうにしている。待たせた時間
が少々長く、少し体が冷えてしまったのだった。
「すまねぇ‥井上‥。」
あ!ううん、全然!と織姫はぶんぶんと首を振り、一護に再び身を重ねる。肌
の温さが心地良く、織姫は一護をぎゅ、と抱きしめた。
「黒埼くん‥キスしたい‥。」
言われるままに織姫に唇を重ね、ついばむような軽いキスを二度、三度。ぷる
んとした柔らかい唇に舌を滑らし、奥へ侵入すると、「んぅ‥」と声を上げた
織姫が舌を応じさせ絡めて来る。一護は織姫の形の良い尻を片手で掴み、撫で
上げ、指先で後ろから花弁に触れる。
そこはまだ濡れたままで、弄るとくちゅ、くちゅと音がした。塞いだ唇から
「んふぅ‥ッ」という声が漏れ、果肉をきゅっと締める動きが指を包む。一護
はしゅ、しゅっと指の腹でそこを擦り、溢れる蜜をすくい取った。織姫の体が
熱を徐々に取り戻していく。
一護は織姫の太腿を開き、正面から、織姫に挿入した。

「くぅ‥っぅん!」
ずぷ‥という音と共に、まだ慣れない痛みが織姫を襲う。熱い逞しい異物が抉
る感覚に、息を吐いて受け入れようと力を抜く。
充分過ぎるほど濡れていた秘部は、素直に一護を迎え入れた。
「はっ‥!」
一護は花弁の奥の締め付けに息を漏らす。ゴムは薄く、感覚は前とほぼ変わら
ない。初めての時の千切れそうな痛みと頭が真っ白になりそうな快楽を思い出
させるそこは、熱く、死ぬほど気持ちよかった。一護は、快楽に己を任せて強
く腰を動かし始める。
「いっ‥!痛い!くろさ‥く‥んッ」
「わ、悪ィ!」
慌てて動きを止め、織姫に合わせてゆっくりと奥へ突く。織姫がんぅ‥っと答
え、一護の背中を抱きしめる。一護は唇に、首筋に、耳に唇を這わせ、両手で
尻を、背中を、胸を摩り、指先で織姫の指を、髪を、大きく硬く成長している
胸の突起を摘んでいった。

織姫は全身で一護を感じ、喘ぐ。
「はぁ‥っ‥あはぁ‥っ!」
一護は少しずつ腰を動かし、浅く、深く織姫を責めていく。
「はぁんッ‥あぁんッ!」
ズン、ズンと奥へ押し込む毎に織姫から熱っぽい声が溢れ、蜜が織姫の桃尻を
伝ってシーツを濡らしていく。一護の手が織姫の乳房を掴み、指を柔らかい白
い膨らみに食い込ませ、むにゅむにゅ、と揉みしだくと、織姫は更なる嬌声を
上げた。
「井上‥胸‥弱いのな‥。」
「あっ‥やあっ‥!」
一護の言葉に織姫はカッと赤くなり、目線を逸らす。自分の大きな胸を厭でも
意識してしまうのを、好きな相手に指摘されたようで、居た堪れない気持ちに
なる。だが、胸を大きな手で揉み続けられ、指の間で乳首を挟まれ引っ張られ、
熱い舌で乳首をたっぷり嬲られると、その言葉に反論はできない。織姫の身体
はあまりにも正直に一護に反応し、織姫の声も身体の反応そのままに、高く、
甘く善がってしまう。
「ふぁ‥っあはぁん‥ッ‥それ‥ダメぇ‥きもち‥い‥いいよう‥っ」
腰の動きを少しずつ速める。織姫の豊かな胸が柔らかくたゆん、たゆんと動き
にあわせて揺れ、一護は興奮を高めて、織姫の中で更に巨きくさせていく。胸
を両手で掴み揺らす。中心の成長しきったた赤い突起を捕らえ、まるで、自身
の一物を扱くように激しく乳首を擦り上げた。

ぷるんとした塊が上下交互に激しく揺さぶられ、更にその中心でこれ以上ない
ほどに勃起した乳首を捻り擦り上げられて、織姫は、はぁっ、あはぁっ、と息
を吐きながら、無意識のうちに自らも腰を動かしていた。
「はぁっ!あぁん!‥っはあっ!っはぁん!」
ジュプ、ジュップと二人を繋ぐ部分から音が卑猥に奏でられ、織姫と一護は昇
り詰めていく。
「ッ‥はッ‥!くッ‥!」
「はぁあん!ああっ!くろさきくんッ!く‥さきくんッ‥!いっ‥!」
「ッ‥!‥のうえッ‥!すげ‥!‥‥っああぁっ!」
一護が先に絶頂を迎えた。先端からブプッっと飛沫が弾け、織姫の中でどく、
どく、と脈打った。織姫は自分の中で熱く染みたそれに反応し、一護とほぼ同
じく決壊を迎えた。
「はぁあん!あぁッ!あぁあ―――ッ!」
織姫の熱い飛沫が、二人の繋がりから噴き零れた。
二人は小さなベッドの上で、重なり抱き合ったまま脱力した。

「‥あぁ、そうだ井上、これ。」
織姫よりも先に服を着た一護が、カバンから袋を引っ張り出した。入っている
のは織姫の兄のシャツ。
「悪いな、ずっと借りっぱなしで。」
んーん、と頭を振りながらシャツにボタンを止め終えた織姫は、一護の方へ向
い、ゆっくりとシャツへ手を伸ばして、それを受け取った。
ふ‥と息をひとつ吐き、一護を見る。
「ん?どうした?」
「なんかね‥」
馬鹿みたいなんだけど、と織姫は前置きしてからぽつぽつと話し始めた。
「なんか、シャツが黒埼くんのところにあった間ってね、わくわくしてたんだ。
次、また会えるなーって。あ、もちろん学校では毎日会ってるけど、なんてい
うか、二人っきりの雰囲気、みたいなのは無いでしょ。」
緊張するけど、黒埼くんと二人の時間、すごく好きで。と、落ちてきた髪を耳
に掛けながら続ける。
「だから、シャツが返ってきちゃったら、そのドキドキが無くなっちゃうな、
と思って、ちょっと残念だな‥って思っちゃって。」
‥だから、だから付き合って欲しい‥。そう織姫が声を振り絞ろうとした時、
一護の方から声が掛かった。

「じゃあ‥さ。」
「え?」
織姫が一護の方を向くと、少し照れ臭そうに短い髪を弄りながら一護が
「デートしようぜ。いつにする?」
と言った。
「えっ?えぇ?」織姫は慌てふためき、もう一度えぇー!?と聞き返す。一護
は同じことをもう一度言うことは出来ず、だから、と少し言葉を強める。
「‥その、次に会う約束すりゃ、また、わくわく出来るだろ。別に、シャツが
無くてもよ。」
「そ‥そっか。そうだね。凄い!黒埼くん!」
いや、別にすごくねえよ、と一護が返し、織姫はえへへ、と笑い、一護に向っ
てこう言った。
「じゃあ、明日!明日の放課後にしようよ!たつきちゃんとかも一緒にどっか
行こ!」
「や、それデートじゃねえし。」
一護は突っ込みながらたつきを思い出す。自分と織姫の事を明日知ったらなん
というだろう。きっと自分の胸倉を掴んで、据わった目を一瞬見せて、
(付き合うのはいーけど、判ってるよね。織姫を泣かす奴はアタシにぶっ倒さ
れる決まりがあるってコト。)
そう言ってアイツは笑いかける気がする。
一護はなんだか胸がすっと軽くなった気がした。クラスの誰かに冷やかされて
も全然大丈夫だ。そんな気がして織姫に答える。
「じゃあ明日な。どうするかは学校で決めようぜ。」
織姫はその言葉に大きく頷く。いつも、否、いつも以上に幸せな表情で。
「あ、うん!いーよ!」









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