―――   一×織  著者:笹葉様   ―――



化学の教師の都合により、二時間もの自習時間となった五、六時間目。
自習と聞いたケイゴのはしゃぎ様はいつも通りで、いつもの面子でカラオケだボーリングだと遊びに
精を出しに早々に学校を立ち去っていった。部活がある奴らは暇な時間をゲーセンなり何なりで過ごす
つもりなのか、或いはやけに天気のいいせいか、こぞって出て行き、教室にはもはや人は居ない。
一護はケイゴの熱い(熱苦しい)ラブコールをぞんざいに断って、一人教室の中に居た。
そして彼は、悩んでいた。

悩める青少年の目の前にあるものは、洗濯と乾燥と、更にはアイロン掛けまで終えて綺麗に畳
まれた一枚のシャツ。
それを几帳面に洗って干してアイロン掛けしてきっちり畳んだ張本人が、受験の問題用紙を目の
前にしたかのように眉間に皺を寄せて、机上の難問であるそのシャツを延々と見つめているので
ある。昼休みの学校、誰もいない教室で。
「どうやって返しゃーいいんだよ‥」
そのセリフは、シャツの持ち主がもうこの世に居ないせいではない。
返すべき相手は持ち主の妹であり、一護のクラスメートであり、一護の初めての体験相手である
井上織姫である。

織姫がコン(の姿をした一護の肉体)としたのが一昨日。
そして織姫に告白されて、初めて織姫を抱いたのも一昨日。
今日はそれから2日もの月日が流れている。

昨日学校に行ったとき―――
一護はさりげなく、なにげなく織姫に挨拶をするつもりだった。今までどおりのクラスメートで。
勿論、責任とかもあるわけだから、何事もなかったようにする、という訳ではなく誰の目にもつか
ないように屋上などでこのシャツを返して軽く話でもして、今後の事、つまり、付き合う云々(まだ
全然考えが回らないのだが)を決めていこう、と思っていたのだ。
だが。
「織姫?なんか今日休むって。」
一時間目を少々遅れて行った一護に、織姫の親友であり幼馴染のたつきはそう一護に伝えた。
「な…なんで?」
一護は焦った。自分のせいかもしれないと咄嗟に思ったからだった。
「あんたこそ、なんで?」
たつきは聞き返した。親友の織姫の気持ちは知っているが、一護にとって彼女はクラスメート以
上の感情は持ち合わせてないように思っていた。それが、今日に限って織姫の事を妙に案じて
いる様子である。教室に入った時から妙に落ち着かず、そわそわと織姫の席を見ていた。
「あ、いや、別に…」
普段はさばさばとしている幼馴染の妙に煮え切らない答えに、たつきは片眉をあげる。

一護は、たつきに嘘をつくのが苦手である。
正しく言えば、どんな嘘をついてもたつきにはバレてしまうのだ。
教員に平気でつく嘘や、家族を心配させないでっちあげ、平均的高校生並みの嘘や誤魔化しを、
そこそこ吐いてきているが、たつきには「嘘ついてんじゃねーよ」と蹴りの一発で毎回敗北する。
そのくせ、たつきの吐く嘘は、まるで一護にはわからないから腹立たしい。
まあとにかく、たつきには嘘はつけないと判っている一護は、これ以上問いただされるのはまずい
とばかりに、織姫の席から離れ、普段は大して話しかけない男子に白々しく朝の挨拶などをしてみた。
「一護。」
背中越しにたつきに呼び止められる。
ぎくっとするが、極めて平静を装って振り向いた。「あぁ?」
「あたし今日、織姫ンとこ様子見に行くけど、あんたも来る?」
「…あ…」
一護は躊躇した。学校内ならともかく、織姫の自宅で普通の顔をして彼女と会える自信はない。
それに、織姫もたつきが居ては動揺するだろう。

「何ィ!井上さんのお見舞いぃ?だったら自称看護上手、このアサノケイゴが手取り腰とり…」
「誰もテメーなんか誘ってねっつーの。」激しくケイゴの胸倉を掴んでたつきがドスの効いた声で
刺す。速攻で二の句をつがせないたつきのやり口は、彼女の空手の先制攻撃と同じである。ハッ
キリいって、めっちゃ怖ええ。
ケイゴはススススイマセン、とすごすごと引き下がり教室の奥で水色に泣きついていた。
「いや、俺はいーよ。」
井上によろしくな、とたつきに伝えて、一護は席に着いた。
それが昨日の、井上織姫に関するやり取りだった。家に帰った後電話をしようかとも考えたが結局
出来ず仕舞いだった事を一護は思い返す。

そして今日も織姫は学校に来なかった。
一護の動揺はいうまでもない。
で、これから様子を見に織姫に会いにいくかどうか、皆が帰って誰も居なくなった教室で一人で
悩みに悩んでいる今現在なのである。
たつきに昨日の織姫の様子を聞けば良かった。と、今更後悔した。
だが正直、聞き出すのが怖かったのだ。織姫が親友のたつきに一昨日の出来事を話した可能性も
あったし、そんな時に幼馴染とどういう顔をして話していいのかなんて判るわけもない。たつきの様子
は、さほど自分に対しておかしな感じはしなかった‥と思うが今日は殆ど言葉を交わしていない。

本匠千鶴がたつきにしきりに、大丈夫なのかケガなのか風邪なのかとたつきに聞いて騒いでいた。
「何ならアタシがヒメの全身くまなく、タオルで汗を拭きとって、ううん、寧ろ隅々まで舐めとって、
それでも熱が冷めないようなら解熱用の『特製愛の浣腸』をあのやわらかい桃尻の奥‥もう一つの
ヒメの秘密の花の扉‥すなわち菊‥ごふぅっ!」
‥と、たつきの手痛い一撃を喰らっていたのを思い出す。千鶴は女だが、まあ、あの発言はあれくらい
喰らっても仕方ない、と耳にして赤面していた一護は思った。
あのエロ発言のせいで、織姫の体を妙に思い出して机の下で自分を落ち着かせる羽目になっ
たし、しかも肝心の織姫の容態は聞こえず仕舞いだったのだ。
「見舞い‥か‥。」



キンコーン‥
昼休みの終わりと5限目の開始の合図が誰もいない教室に響く。
静かな所為か、自分の胸の中にもやけに大きく響くように感じられ、一護はその音に反応する機械
仕掛けの人形のように、自分の机に額をごとん、と落とした。
突っ伏した状態で隣の教室に足音たちが入っていく音を聞く。
パタパタと急ぎ気味の足音も聞こえる。
音が近づき、ガラガラ、と扉が横に開く音。
‥あれ?今の音はこの教室から聞こえた気がする。思った瞬間に声がした。
「まだ先生来てない!?‥って、あれ?あれえ!?」
聞き覚えのある声に顔を上げると、井上織姫が所在なげに入口に立っていた。


「井上‥」
「く、黒崎くん、あ、おはよう!じゃないやこんにちは!」
「お、おう。」何も変わらない元気そうな、いつも通りの織姫の様子に一護は少々拍子抜けた感じで
相槌を打った。みんなは?と織姫が聞く。
「そっか、お前知らないで登校したんだな‥今日化学の坂本、急用とかで自習になったんだよ。皆
帰ったか、どっかで部活まで時間潰してるみたいだぜ。」
自分も意外と普通に喋れる事に、少々驚きを覚えながら一護は織姫に説明した。
「そうなの?なあんだぁ。」
午前中思いっきり寝過ごしちゃってさ、午後からだけでもって思ったんだけど‥そう続けながら織姫は、
一護の前の席にちょこん、と腰掛けた。

「‥大丈夫なのか?その‥体調とか。」
体とか‥と言いそうになって一護はちょっと詰まって言い直す。意識しすぎかもしれない、と自分でも
思うのだが。
「え、あ、うん大丈夫。昨日はね、ちょっと‥」
そう言って織姫は一護をじっと見て聞いた。「黒崎くんは?」
「お、おれ?俺は別に‥」
そっかあ、と言って、織姫は一護には聞こえない声でつぶやいた。
(男の子はずるいなあ‥あたしなんて昨日は痛くて上手く歩けなかったのに‥)
え?と一護が聞き返す前に織姫があーあ、と大きな声を出した。
「せっかく来たのに、どうしよ。お弁当だけでも食べて帰ろうかな。」
「午後から出たのに弁当はあんのかよ。」
一護が軽く突っ込む。そりゃあもう、健全な女子高校生ですから!と笑顔で返して
「屋上で食べよっかな。黒崎くんはお昼食べた?」
と織姫は一護を促した。

昼休みも終わっていた訳だから、購買にはロクなものは残っていなかった。
自販機で紙パックのカフェオレと、一度も買った事のないパサパサに渇いてそうな「抹茶クリーム
入りコッペパン」とかいうものをとりあえず買って一護は織姫と共に屋上に上がった。
天気はやたらと良くて教室内よりもあたたかい。
「黒崎くん、こっち」
と言って織姫は屋上の更に梯子を上った、最上階のところへ登って行った。

梯子に足を掛ける織姫は制服のスカートの短さもまるで気にしていない。
んしょ、と梯子を登ると当然のように一護の位置からはスカートの中のオレンジ色のストライプが
しっかりと見える。
一昨日、あの薄い布を越えた中を見て、触って、挿れたのだと思い、一護は思わず唾を飲み込んだ。
オレンジ色のストライプの下、白い太腿がせっせと動いて梯子を登り、頂上で大きく縦に開く。織姫
の形の良い桃形が縦に割れ、その向こうのほんのりとした膨らみが、やけに一護の目に入る。
「ちょっとは意識しろっつーの‥」一護は確りと見てから目を伏せて呟いた。

「やった、誰もいないよ。」
頂上で一護のつぶやきはまるで聞いていない織姫は喜びの声をあげた。
普段は人気で競争率の高い場所だが、授業中の為だろう。この場所も屋上にすら誰もいない。
追って登った一護もおっ、と声をあげた。日差しはあたたかく、風通しも爽やかで気持ちの良い
絶好の場所だ。
ひょっとしたら、6時限の授業が終わるまであと2時間弱、ここは二人だけかもしれない。
そう思ったら一護の中で妙な緊張が走った。あんなもんを見たせいだ。
織姫とちゃんと話をしようと思ったのに、一護の頭の中はさっきの光景で半分くらいが下半身と同じ
考えになりつつある。何考えてんだ、と自分をたしなめる。
織姫は一護のそんな様子はまるで気づかずに、弁当の入っているらしい包みを開く。
「黒崎くんのお昼なあに?あたしはねー、秘密おにぎり。」
「秘密?」
なるほど、見ると織姫の顔近くある巨大なおにぎりは、海苔でマル秘と書いてあり、中から笹カマボコ
やらポッキーやら、何だかよく判らない食べ物が入っている。闇鍋のおにぎり版だ。バカだ。
先程のやましい気分が少し薄れる。織姫の調子の外れたところに少し救われた気がした。
俺は普通のパンだよ。一護が答えた。抹茶クリームは旨いかどうかは判らないが、少なくとも
秘密おにぎりとやらよりは普通だろう。

日当たりの良い屋上から沢山の屋根を見下ろして、二人は大して喋らずにちょっと遅めの昼食を
とった。

「黒崎くん‥」
食事を済ませてお茶を飲んでいた織姫が、ごはん粒を頬にくっつけたまま声を掛ける。
「んぅ?」
不意に声を掛けられて、一護はカフェオレをゴクン、と飲み込む。
「その、あの、ひょっとして‥ひょっとしてだけど、違ったらいいんだけど、違ったらあたしの自意識
過剰とゆーか、アレなんだけど‥」
「な、なんだよ」織姫が何を言おうとしているのか、途端に一護は落ち着かない気分になる。
「ひょっとして‥あたしが休んだの、心配してくれた?」
申し訳なさそうな、それでいて不安そうな瞳で織姫は一護を見た。たつきちゃんから、ちょっとだけ
聞いて、それで‥と織姫は語尾を濁らせて目を逸らす。
一護の方をじっと見はするが、いざ、一護と目が合うと彼女も戸惑うようである。
「まぁ‥そりゃ‥うん」
一護の方も目線を慌てて逸らして煮え切らない返事をする。
屋上で、二人だけで、目も合わせるのが恥ずかしくて。なんてどこのBOYS BE‥だこりゃ!という
心の声もするのだが、もう今更どうしようもない。気恥ずかしさと居心地の悪さが同居する。
織姫が再び話しかけた。
「ご、ごめんね。別に大丈夫だったんだけど何かちょっと‥疲れちゃって、学校行くの面倒に
なっちゃったんだよね。たつきちゃんが心配して来てくれて、でもあたし全然元気で悪いなー
とか思って‥それで‥」
織姫はちょっと言葉に詰まってから一護を見て続ける。空中に投げ出した足をブラブラとさせて、
少し気まずそうに、少し、心を落ち着かせるようにしているようだった。
「それで、黒崎くんも心配してた、ってたつきちゃんが言ってくれて‥あたし、うわーどうしよう、
悪いことしたなーって思って、でも悪いって思いつつも本当かな、本当だと考えたらすごい嬉しく
なっちゃって、嬉しくて昨日眠れなくて、で今日昼まで寝ちゃって‥起きて慌てて出かけようとしたら
ブラジャー忘れて制服着ちゃって、思い出したらやばい!お弁当も忘れるところだった、って思い
返して‥」
何を言おうとしているのか、織姫は混乱しているようだった。身振り手振りが派手になって
あわあわと説明を続ける。おにぎりの中身など、どーでもいい事まで喋っている。

「あ、と、とにかくね!」
ようやく本筋に戻らなければ、と思い出したのだろう。
「とにかく‥あたし‥すごい嬉しくて、今も本当って聞いてすごい嬉しくて‥」
織姫は顔を赤らめながら、一護に向って正直に打ち明ける。そんな様子を一護は黙って見つめて
いた。純粋に織姫を可愛いと思った。
「それで、黒崎くんの顔見てたら‥‥‥したくなっちゃって‥」
「んな!?」
広い青空に響く程の声を上げてしまった。織姫は慌てて顔を伏せる。
「ご、ごめん!き‥キスしたい‥なー‥なんて思ったんだけどやっぱねえ、駄目だよねーあはあは‥
ごめんね、へ、変なこと‥」
「ああ!キ、キスね!そうか!い、いいんじゃねえ!?」
別の「したい」を瞬時に妄想してしまった一護は、慌てて取り繕った。
いや、取り繕ったとは言えない言葉を咄嗟に言ってしまった。

あれ、俺いま何を‥
そう思った瞬間に、織姫の顔が近づき、一護の唇をやわらかく熱いものが包んだ。
「んぅ‥」
織姫の唇はしっとりと熱を帯び、触れた顔も熱かった。咄嗟のことで目を開いていたので、織姫が
ぎゅ、と目を瞑っている様子が至近距離で見える。
「っ‥は‥ッ‥。」
一護に任せていた唇を離して一息ついた織姫は、一護を見てくすっと微笑んだ。
「黒崎君、ごはんつぶ付いてる‥」
テメーが今つけたんだよ。一護はごし、と手の甲で顔を拭って、織姫の肩を抱き寄せた。
「うわ!」
石畳に腰掛けて足を投げ出していた織姫はバランスを崩し、結果一護の胸の中に体を預ける形に
なってしまった。

黒崎くんの鼓動がきこえる。

自分の心臓と間違えそうな早い鼓動に、織姫は胸をきゅ、と締め付けられた。
顔をあげるとすぐそこに一護の顔がある。さっき口づけたばかりの唇も。
織姫は再び顔を上げ、一護にキスをした。

一護は一瞬驚いたが、すぐにそれに答えた。自分からするつもりだったのでそのまま素直に返す。
さっきよりも深いキスを織姫は求めているようだった。一護は織姫の唇をついばみながら、徐々に
舌を織り交ぜていく。
「ぅうん‥ん‥」
今度は織姫が答える。一護の舌を熱い舌で受け止め、絡ませる。無意識にかそうでないかは判ら
ないが、一護の胸に置いていた左手は軽く一護の肌を制服の上を擦っている。一護は舌の侵入を
続けながら、織姫の制服のボタンに手を掛けた。

普段から織姫の大きすぎる胸を窮屈に押さえつけている制服は、ボタンの封印が解かれると勢い
よく左右へとその扉を開く。中から出てくるのは織姫の肌と下着を守るにはあまりにも脆弱な白い
シャツだ。制服のボタンを全て外し、そのシャツのボタンに手を掛けた時に、一護は織姫の異変に
気が付いた。
シャツを脱がそうとすると、細い腕を胸元に押さえ、脱がされるのを少し躊躇しているのだ。
一護は織姫を塞いでいた唇を離し、織姫を見た。
「井上‥?」
「あ‥」
ひょっとして、嫌なのか‥?そう思った一護の心の内を読み取ったかのように、織姫が勢いよく
かぶりを振った。
「ち、違うの。ちょっと‥その‥。」
変な目で見ないでね‥?と、よく判らない事を言って、織姫は一護を見た。「何が‥」と言いかけて、
一護はすぐにその意味が判った。
開かれた制服の中から覗く白いシャツが、普段見慣れているものと違う。
否、正確にはシャツはいつも通りだ。だが、織姫の体のラインが普段よりもより鮮明に色濃くシャツに
映っている。
つまり、織姫の豊かな乳房がやけにシャツにはっきりと浮かび上がり、その大きな乳房の両方の
頂きは、それよりも更にシャツを突いて自らを主張をしているのだった。ノーブラだ。

一護は白いシャツに浮き彫られた生々しい影の形にゴクリ、と唾を飲み込んだ。
「弁当は思い出して、こっちは忘れたのか‥?」
先ほどの弁解を思い出して、一護が聞くと、織姫は赤くなってこくん、と頷いた。
「は、走ったときやけに痛いから‥気がついたんだけど、5時限目に遅れちゃうって‥思って‥」
蚊の鳴くような弱々しい声で織姫が答える。
一護は織姫の胸を、シャツの上からそっと撫ぜた。
「ひぁっ!」
「いーよ、この方が。俺、はずし方とか良くわかんねえし。」
そう言って、織姫のシャツのボタンに手を掛けた。

ひとつ、ふたつ‥制服のときはスムーズに外れたのに、シャツのボタンは妙に時間が掛かる気がする。
みっつめ‥両手で外していると拳の外側に、柔らかい感触がある。
よっつ、五つ‥開かれている白いシャツの間から、白い谷間が見えて来ている‥乱暴にシャツを
取り払ってしまいたい衝動に駆られる。このシャツを掴んだ両手を思い切り左右に開いたら、またあの
大きな胸が大きく揺れてその全貌を自分の前に露にするのだろう。
最後のボタンを外して、シャツを開いた。
一昨日見た大きくて白い乳房が、一護の目の前に変わらぬ姿であらわれた。日の光に照らされて
織姫の胸の下と石畳に濃い影を落としている。桃色の先端は、既に少し尖りはじめていて、硬い石にも
硬そうな影を映す。
一護は息を呑んで織姫の乳房を、その先端を彩る乳首を見つめた。

大きな胸は昔から注目の的だった。中学3年くらいから急成長した自分の胸が、織姫はあまり好きでは
なかったので、一護に見つめられるのはより、耐え難い。
「く‥黒崎くん‥あんまり‥」
そう言おうとした瞬間、一護の大きな手が胸を掴み、少し強めに揉まれ始めた。
「あぁ!んっ!」
急な刺激に織姫が声を上げる。校内であることなど、とうに忘れてしまったかのような激しい愛撫に
激しい声で返してしまう。たっぷりと上下、左右そして円を描くように揉みしだかれ、そして雨のように
降りしきる唇の感触を乳房に浴びる。舌の感触と唇に吸われる感触。その度にじゅぱ、ちゅぽん、という
卑猥な音が織姫の耳に届き、甘くて激しい快楽と同時に居た堪れないような気持ちも襲ってくる。
まるでパン食い競争を暗闇でしているかのように、一護はめくらめっぽうに織姫の乳房にむしゃぶり
ついて、熱い息を漏らしながら甘噛みを繰り返す。その度に織姫の下着はじゅく、と湿り気をもたらし、
瞳は熱く潤む。一護が自分の胸に興奮している、という事実が、織姫を昇らせていく。

一護は唇で乳首を捕らえ、じゅぷ、と吸い上げるが、唾液にたっぷりと濡らされたそれは、一護の口から
逃れるように滑る。チュプ、プルン、チュプル、と何度も捕らえては逃す一護に、織姫が激しく感じる。
「っああっ!はぁっ‥あはぁ‥っあん!」
唇から逃げる度に震える織姫の突起は、口から出るたびに成長をしているかのようで、隆々としこって
いった。もしも今、シャツを戻したら先ほどとは比べ物にならない主張を見せることだろう。
勃起、という言葉が似合うほどになった織姫の乳首を、一護は両手の両指、一指し指と親指で摘まんで
クリクリと捻った。
「ひぁあ!やぁん!」
織姫が一際大きな嬌声を上げる。桃色の突起を指の腹で擦られ、ひねりあげられ続ける。

誰かに乳が大きい、といわれる度に恥ずかしさがこみ上げ、胸を意識せざるを得なかった。
その胸を今は大好きな人の前で丸出しにして、あろうことか弄られている。織姫のスカートの下から
熱い蜜が太腿へとつう、とこぼれていく。恥ずかしい。でも死ぬほど気持ちいい。
「いぃ‥くろさきくん‥気持ちい‥はぁん‥っ!」
織姫の声がだんだん甘く溶けるような音を響かせていく。一護は指で愛撫を続ける。
俺って結構胸フェチだったんだな‥とかどうでもいい事を一瞬考えるが、ただ、ただ織姫の体と、
その潤んだ表情に一護は溺れていった。
愛液の零れ落ちた足を開いて、右手をオレンジ色のストライプに滑らせる。そこはもう熱く、湿っている
という言葉では無理がある状態だった。濡れている。否、びしょびしょである。腰を浮かせると、石造りの
床に濃く染みが残っていた。
女って、こんなに濡れるのか‥。指先を這わせて足の付け根の方からオレンジ色を捲って侵入する。
ざら、とした陰毛の感触の更に奥に、ぬる、とした熱いものを感じる。一護の中心がどく、と脈打つ。
さらに奥に。指を探索させ深く這入る。「んぅ!」と織姫が声を上げ、右手の中指がぬぷっ‥という
感触をさせた。一護は織姫の乳房に舌を這わせながら、中指を挿れては戻し、弄り始めた。
織姫の体を熱い電気が走る。
ヂュプ、ぬぷぅ、という水気を伴った音と共に、はぁん、あぁはん‥と織姫の声が協奏する。一護は織姫の
体への好奇心と興奮で、指の動きを加速させる。舌の動きも自然早くなり、織姫の乳首をプルプルと
上下させ、弾かせる。指は更に人差し指も伴い、二本で更に深く、更に激しく膣を抉る。
「あっ!あぁあっ!ひああ!」
上と下の両方の責めに織姫の体がびくんと跳ねあがり、一護の指にぶしゅぶしゅと熱い液体を漏らした。
一護が驚いて指の動きを止める。織姫は荒い息を吐いて、下と同様に熱い涙も零していた。

「わ、悪ィ、井上‥大丈夫か?」
「‥い、じょぶ‥」
息も絶え絶えに織姫が答える。全然大丈夫じゃない。
胡坐に組んだ片膝を枕にしてやり、織姫を労わる。やわらかい、長い髪の感触が布越しに感じられる。
えへへ、ありがと、と織姫が力なく笑った。どうやら呼吸困難もあったのだろう。息を吐かせる暇もなく
責め続けた自分に反省した一護は、そっと、織姫の髪を撫ぜた。

本当は、この後ズボンを下ろして猛った自分を開放してやる筈だったが、流石に無理だろう。自分で
宥めてやるしかない。考えてみればゴムもないわけだし。いつも相当の数を持ち歩いている水色に
一個でも貰っておくんだった。(過去にこれ、良いやつだからあげるよ、と言われたのを丁重にお断り
したことが悔やまれる。その時はまるで必要ないと思っていたんだが。)
しかし、織姫の前で出してするわけにもいかない。
だが、既にズボンの前のテントは数人のキャンプ用、とばかりに大きく張られていて、考えてみれば
そのすぐ近くに織姫の顔がある。一護はカアッと顔に火がついたように赤くなり、織姫の体勢を変え
ようとした。せめて顔だけでも向こう側に‥
だが既に織姫は一護のそれを凝視していた。遅かった。
「あ‥その‥」
一護はしどろもどろに答えようとする。何を答えようというのか自分でもわからないのだが。
「黒崎くん‥」
自分の呼吸を取り戻して少し元気になったのか、さっきよりもハッキリした声で一護の名前を織姫は
呼んだ。
「恥ずかしいから‥ちょっと上向いてて。」
「え?あ、ああ。」
言われるままに、一護は上を向く。雲ひとつない青い空。そういやここは学校の屋上だった。
しかもまだ授業中だ。何やってんだろ、俺ら。っていうか井上、何を‥
そう思った瞬間、ジィイ、という聞きなれた音が自分の下半身から聞こえた。見ると、織姫がジッパーを
下ろそうと奮闘中だった。しかも一護の。

「んな!?何してんだよテメーは!」
「ああ!み、上向いててって言ったのにぃ!黒崎くんのバカバカえっち!」
「エ、エッチはオメーだ!何脱がそうとしてんだよ!」
「だって‥!」
織姫は一護の胡坐をかいた中央に移動しており、うつ伏せに腰を曲げている。自分がこれからやろうと
している事が判っているようなポーズだ。
「井上‥お前‥」
「‥うまく出来ないと思うけど‥黒崎くん‥いい?」
「‥‥‥」
一護は、顎をぐい、とあげて上を見つめ、ジッパーを下におろした。
織姫の細い指が数本触れる。一護はぎゅ、と目を瞑る。
両手で取り出される。勢いよくズボンから開放されて、猛った一護のそれはぶるん、と震えて織姫の
前でそびえ立った。織姫のふぁあ‥という声が耳に入り、一護は一瞬だけ、自分が辱められて
嬲られてるような気分を味わった。
織姫の指の感触。指から手の平の内側に包まれる感触が続く。
軽く触られてるだけなのに、それだけでもう果てそうなほどに気持ちいい。一護のモノの頂きからは
熱いものが少しずつ溢れている。
(えっと‥どうやるのが気持ち良いって言ってたっけ‥)
二日前のひと時、初めて抱かれた事を思い出す。一護の顔をした優しいあのひとは、どういうのを
喜んでくれたか、浅い経験のなかで、織姫は必死に思い出して実行に移した。
唇で、キスをする。根元に、筋に、頂上の濡れた割れ目のあたりに。
「うぁッ‥はッ‥あ‥」
一護が声を漏らす。自分で手淫を行うことはあるが、こんな感触は初めてのものだ。自分でするのとは
比べ物にならない感覚が一護の脳天を襲う。

織姫が舌先でちろちろ、と舐めてきた。遠慮がちな舌の動きがかえって挑発をしているかのようで、
一護は激しく興奮する。手のやり場に耐えられず硬い石の床を掴もうとするが儘ならない。
ガリガリ、と爪を石床に立て、歯を食いしばり空を見上げる。青い空がめまいを起こして揺れる。
「んぅ!」
織姫が大きく口を開け、一護のそれを頬張った。
「くぁあッ!」
勿論、全てを包みこめるほど熟練している訳ではなく、頑張っても呑みこめたのは先端の部分だけで
あった。だが、上昇を続けていた一護にはそれは十分すぎるほどの刺激だった。
ビクビクッと大きく反応し、先端が放出を求め理性を奪う。
「いッ‥井上ッ‥で、出る‥ッ出ちまうッ‥!くぅッ!」
「ぷぁっ!?」
ぬぽっ、という音を立てて織姫が一護から唇を離し、慌てて回りを見る。とっさにタオルか何かないか探し、
一護の鞄からはみ出ている布を見つけた。力まかせにグイッ、と取り出し一護のそこに宛てがう。
布のざらりとした感触が、一護に止めを刺した。
「っくうッ‥!!ぁ‥」
ドプッ、ドプ‥と溢れるそれを吸い取っているその布を見たとき、一護は酷く情けない顔になった。

「いやーあ‥ナイス機転だと思ったんスけどね‥えへへ‥」
「えへへじゃねーだろ‥」
だって、制服汚した方が大変だったと思うし、と織姫は反論する。それは当然で、一護は更なる言葉は
返せない。苦し紛れに「だけどなぁ‥」などと言ってみる。
汚れたのはまたしても織姫の兄のシャツ。
「あー、折角洗ってくれたのにごめんね。これはあたしが洗うから‥」
織姫はそう言うが付いているのは殆ど一護のモノである。んな事させられっかよ。
いーよ。俺が洗う、とぶっきらぼうに織姫から顔を逸らして一護は言い、
「んで、返しに行くよ。今度はちゃんと。」
と付け加えた。
織姫はその言葉を聞いて、またしてもえへへ、と笑って答えた。
それは何気ない一言だったが、一護にはちょっと痛恨の一撃だったらしく、バツの悪さと恥ずかしさの混じった
なんとも複雑な表情を作らせるものだった。
「今度はちゃんと、汚さないようにしよーね。」








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