―――   一×織  著者:笹葉様   ―――



―本日の死神業を終えた一護は、自分の体に妙な違和感を覚えた。
「‥なんだ‥?」
何がどうかと言われると良くは判らないのだが、奇妙な倦怠感と、
妙にすっきりとした爽快感の入り混じったような、そんな微妙な
据わりの悪さが体に残っていたのだった。
「おいコン。」
一方で、珍妙なライオンのぬいぐるみ姿に戻ったコンは、一護の
自問には聞こえない振りをして部屋を出ようとしていたが、
さすがに呼び止められては止まらざるを得ない。
コンは、力の限りさりげなく振り向いて答えた。
「おっ!そこを行くは一護じゃねえか!どうした!
俺に何か用かい?」
実にわざとらしく、実にいかがわしい。
仕事を負えた高校生死神は、眉間の皺を通常の倍ほど深く刻み、
ヤクザがチンピラ三下を見下すような、凶悪な目つきをぬいぐるみに
向けて放った。
「何かあったのか‥?」
ライオンの尻尾を掴みあげ、同じ高さにその目線を合わせる。
「ななななな何が?」
「『な』の数が多すぎるんだよテメー。俺の体に何かしたろ。」
まるっきりシラを切る事は不可能だと咄嗟に考えたコンは、非常に
大雑把な回答をした。
「‥ちょっと‥運動‥。」

運動ォ?と怪訝そうに一護は聞き返し、何の?と、更に
突っ込んだ質問をしてくる。だからといって突っ込んだ運動です、
とは答えられる筈もない。
「最近運動不足かなって、思って、ちょっと‥。」
「なんだよ、クソ親父と格闘でもしたか。それにしちゃ、ケガは
してねえな。」
あんまり相手にすんなよ、あいつ調子に乗るからな。と一護は
コンを放り投げてベッドの上に転がった。興味を手元にあった
雑誌に移したらしく、コンは心から安堵した。

一護にとっては記念すべき童貞卒業日な訳だが、自分の知らない
間にクラスメートの井上織姫と、しかも彼女の家の玄関でして
しまったと聞いたら、冗談ではなく一護の血管はひとつやふたつ
切れるだろうし、自分が原型をとどめたぬいぐるみでいられる
自信はない。秘密のままにしておくのが最良というものであろう。
(いずれ思春期の小僧らしく、恋なんかしてぶっきらぼうに下手くそに、
大人になる自分を味わうんだな‥。ゴム忘れんなよ‥。)
ぬいぐるみの顔をニヒルにフッ、と歪ませてコンは部屋から抜け出そう
とした、その時。
突然扉が開いて、コンの顔面をしたたかに打ち据えた。

「一護‥てめえ‥」
噂の一護の親父である。先程まで仕事着である白衣姿だったが、今は
室内用のラフな、しかし無駄に派手な模様のシャツの肩を怒らせている。
「なんだよ。勝手に開けんなよ。」
一護は寝そべって雑誌を開いたまま、平均的高校生男子のセリフを
そのまま親に言った。虚退治で疲れているところに、親父との無駄な
格闘は避けたいのだろう。目線を合わせない。だが親父はそんな事には
お構いなしに一護を抱え上げ、見事なジャーマンを喰らわせた。
「ぐはあ!」
突然の問答無用の攻撃に、反撃体制を立て直す間もなく第二撃が来た。
天井まで届こうかという見事なアッパーカットである。容赦ない。
一護が一瞬気を失った。
「‥てめえ何を‥」
一瞬の空白を取り戻し、ようやく口にした言葉だったが、黒崎一心の
手から投げられたモノに再び言葉と視界を奪われる。

一護がそれを今朝着ていたシャツであると認識するより先に、
一心が口を開いた。
「一護‥てめえもアレだ。健全なる男子だって事は判ってる。だがな‥
可愛い可愛い遊子にてめえの汚えエロカルピスを洗わせるのは、父親と
して断固として許せん!」
「あぁ!?」
「てめえの不始末はてめえで洗え!風呂場でまっぱでシコシコ虚しく洗え!」
なんの話だ!と一護がようやく反撃の蹴りと共に返したが、親父はその
一撃にはびくともせず、もう一度シャツを奪い返して大きく広げて見せた。
先程まで、呆然と成り行きを見守っていたコンが、ぬいぐるみであるにも
関わらず蒼白になった。
「これだけ元気な印をベッタリつけといて、何の話もねえだろうよ、
マイサン。」
よっく目を見開いてとっくりと拝みやがれ、てめえの白濁液を!と親父は
ご近所にも響き渡る大声で一護の跡を晒し上げる。覚えのない当人は絶句
するしかなかった。
「ついでに風呂の掃除もしとけよ。」
そう吐き捨てて嵐のような親父は扉を閉めた。

しまった。
タイミングを逃した。
親父と共に部屋を出るべきだったー‥。
そう思ったコンの背中に殺気がした。
「‥そーゆー事か‥」
まて、早まるな、ぬいぐるみ虐待反対、落ち着け、コンの頭の中を沢山の
なだめる言葉が巡り巡ったが、どれも有効そうではない。一護はシャツを
握り締めたまま、ゆらりと立ち上がる。

「てめえどういうやり方したらあんな風にがっつり付けられるんだ
この野郎!俺のイメージ崩しやがって!だいたい朝とシャツが違ってると
思ったら‥ん?なんだ‥これ。」
俺こんな服持ってねえぞ。一護がコンに向かって言った。
一番やばい所に気付いてしまった。一護が着ているシャツは、織姫の家で
汚したものの代わりに、彼女が着せてくれたものだった。
今は亡き兄のものらしい。
「‥説明してもらおうか‥。」
背景にゴゴゴゴゴ‥といわんばかりの迫力をひっさげて、一護がこちらを
見た。その足は既にコンの胴体を捕らえ、逃げ出さないようにしっかりと
踏みつけている。
「服は‥借り物です。」
「誰から。」ぐいぐいと、足に重力が掛かる。
綺麗なお姉さんならともかく、男に踏まれる趣味はない。が、その名を
言えば未来はない。
一護はコンを踏みつけたまま、着ていたシャツを脱ぎ念入りに調べ始めた。
匂いで判るわけでもなし、コンが口を割らない限り、出所がわかる筈は
ないだろう。

だが、その考えは甘かった。
「‥い‥のうえ‥?」
いきなり本命の名前が一護の口から出てきて、ぬいぐるみの口から魂魄が
出るほど仰天した。
「‥な‥んで‥?」
「シャツに名前がある。」
踏まれた姿勢のまま見上げると、シャツの裏地の裾の方に確かに井上の兄の
名前が糸で縫いつけてある。まるで小学校低学年生のように。兄思いの
織姫の手製なのだろう、なのだろうが、
何て事してくれたんだあの天然女!特盛りだからって許されねえー!

コンは心の中で先程までの恋人を思いつく限りの卑猥な言葉で罵った。
罵ってみてもどうもならないのだが。
「お前まさか、井上に‥!」
「うるせえ!同意の上だ!」
逆ギレた。恐怖と織姫への理不尽な怒りが混ざった結果である。
しかし、結果は瞬殺であった。床にめり込み、体からは綿がひでぶと溢れる
結果となった。人間ならふた目とは見れない無残なカラダになったコンは、
薄れ逝く意識の中で一護が部屋を飛び出すのを見たように思った。


さほど近い訳ではない井上織姫の家の前まで走ってきた一護は、扉の前で
往生してしまった。心配して勢いで来てしまったものの、どうしていいか
判らないのだ。
謝ろうにも、説明しようにも、どう言っていいのか思いつかない。自分の
体だが、自分ではないという面倒極まりない説明をして、果たして許して
貰えるのか、それ以前に改造魂魄の説明などしていいものか。
いっそ彼女の兄の時のように記憶を替えるなり出来ないものか‥
いや、そんな事をしたらルキアに事情を話さなければならなくなる。
それは拙い。別に自分が何かした訳ではないのだが、なんとなく
弱みを握られるような、そんな気がする。

思い返せば、コンは同意だとか言っていた。本当だとしたら、織姫が何を
考えて同意したのか‥それすらも一護には判らなかった。
傍から見れば至極簡単な理由なのだが。
とりあえず、謝ろう。
たっぷり5分ほど扉の前で悩んだ末、一護はシンプルな答えに到達した。
胸の高鳴りを押さえつけて、震える手でチャイムを押す。虚と戦う時だって
こんな緊張は有り得ない。クラスメート、という間柄から恋人とも遊びとも
呼べない複雑な関係になるのはあまりにも一護にとって難しい問題だった。
だが、何事もなかったように放って置くわけにはいかない。
魂はコンでも体は自分のモノだったのだから、無関係では済まされない。
息をすうっと大きく吸い込んで、もう一度チャイムを押す。

返事がない。
扉を開けに来る足音も聞こえない。

一護の脳裏を嫌な予感がかすめた。
まさか、無理矢理されて‥絶望して‥
いやいや、ありえねえ。井上だし。
でももしかして‥
「黒崎くん?」
「ごあ!」
背後からのフェイントに一護が慌てて振り向くと、いつもと変わらない
織姫が立っていた。
買い物帰りらしく、手にした袋には一般家庭、ましてや一人暮らしでは
滅多に見ることがない業務用サイズの食パンとまだ温かそうなコロッケの
匂いをさせて、クスクスと笑っている。
「ごあ、だって。面白いなー、黒崎君は。」
「あー‥‥よお。」
こんばんは、と笑顔で返して「どうぞ。」と織姫は促した。

女子の家に上がるのは、大抵誰か、(概ねケイゴや水色)と一緒の時だし、
そうでない場合は相手が女を意識しないたつきなどの場合である。
織姫の家は取り立てて女の子らしいレイアウトが施されてる訳ではなかっ
たが、一護には非常に気まずい空間だった。
昨日、いや先程まではたつきと同じく「女」を意識することも滅多に
なかった相手だったのだが。
そんな事を考えてる内に、織姫が紅茶を淹れて来た。カップをテーブルに
置く時、肩からこぼれる長い髪から、洗い髪の石鹸の香りがふわ、として
一護の居心地の悪さは最高潮に達した。慌ててカップを手にして大きく
一口飲み、そして吹き出す。紅茶のつもりで飲んだ味はとてつもない味の
する液体だった。よく見れば妙なモノも浮いている。
「おいしくなかった?紅茶キノコ。」
「いまどきかよ!」
フツーの高校生が知ってる方がおかしいぞ、と悪態をつきながらも、
気持ちは少し落ち着いた。いつもの井上だ。
「悪ィな、突然‥。」
幾分か楽にはなったが、気まずさの残る声で呟いた一護に、織姫は全然、
と笑顔で答えて不気味な液体を美味しそうに一口飲んだ。

静かになる瞬間が、堪らなく居心地が悪い。
切り出しをどうしようか迷っているところに、織姫から先制が来た。

「ひょっとして、もう知ってる?」
核心に一挙に迫ろうかというその言葉に、一護は再び激しく動揺し、普段は
さほど活用させることのない脳細胞を必死に動かして、返事をしようとした。
いきなり核心に迫るのはまずい、とりあえず何かワンクッションおいて、
それから、と考えながら一護は自分でも思いがけない言葉を口にした。
「‥なんで‥?」
言った瞬間に蒼白になった。一護的に正しく発音したかった言葉は
「なにを?」の筈だったのだ。それが何で!何で「なんで」なんだよ俺!
心の中で激しく自分に突っ込んでも出てしまった言葉は戻っては来ない。
飲むつもりも無いまま手遊びに掴んだカップが震える。
「‥ごめんね。黒崎君のカラダなのに‥。」
そんな事じゃねえ、っていうか何で謝るんだよ。言葉にならない思いが
一護の頭を巡る。
ようやく声を振り絞った。
「お前が、謝ることじゃねえだろ‥」
ごめん、と続けようとする口は、言葉を発することは叶わなかった。
今度は、織姫の言葉で遮られたからである。いつもの織姫らしからぬ、
鋭く、早い一言だった。
「謝らないで。」
そしてもう一回、お願い、謝らないでと彼女は一護に言った。

「黒崎くんは悪いこと何もしてない。もちろんコンくんも。あたしが‥
いけないの。」
一護は押さえられた言葉を質問に変換して問うた。
「なんでだよ‥お前が悪いってことがあるか。」
織姫は、一護に視線を合わせたままゆっくりと話しだす。「悪いよ。だって
あたしは良いけど、黒崎くんは」
「俺の事はいいんだよ!」一護が最後まで言わせずに強く織姫に言葉を
ぶつけた。同時に今までまともに見れなかった織姫の視線ともぶつかる。
「俺はいい、だけどお前は‥」
「あたしの方こそいいの!だってあたしは‥」
言葉はそこで途切れて、織姫は口を開いたまま息を止めた。危うく口を
伝って溢れてしまうところだった思いを精一杯押さえつける。

実際にはほんの数秒なのだろうが、二人の間に長い沈黙が流れた。

不気味な味の紅茶キノコを飲みたくもないのに、一護は一気に飲み干した。
そうでもしなければ間が持たなかったのだった。
ようやく、織姫が深く息をつき、
「‥だってあたしは‥黒崎くんが、好きだから。」
一度は止めた言葉を、織姫は一護にゆっくりと伝えた。

思いがけなかった言葉に、一護は目を大きく見開いた。織姫はそれを
見てから、いつもの笑顔、いつもの調子で続けた。
「ねっ!だから、悪いことなんて何もないの!コンくんだったけど、
ちゃんと黒埼くんだったもん!だからあたしは、嬉しかった。あたしが
大丈夫なんだから、黒崎くんが心配することなんて何もないの。
はい、これでこの話はおしまい!」
言葉とおなじ勢いで立ち上がり、夕飯つくらなくちゃ、と背を向ける。
織姫のその背中は女子らしく小さい。だがいつもよりもずっと儚く見えた。
一護は思わず立ち上がる。織姫は、脇の机に置いておいた買い物袋を開き
ながら、
「黒崎くんも食べてく?コロッケパン。大根千切りにしてからだけど‥」
そう言いかけて、織姫の手が止まった。一護が、背中越しに織姫を
抱きしめたからだった。
織姫の肩は見た目以上に華奢で、力を込めたら折れてしまうかの様な気が
した。
「なんで大根なんだよ、キャベツだろフツー!」
と言いたい衝動を押さえて、一護はそれよりも大事な事を織姫の耳元に
呟いた。
「コンはコンだ‥俺じゃねーだろ‥」
「黒崎く‥」
振り向こうとした織姫の唇を一護は奪った。

なんで抱きしめたか、と聞かれると答えられない。聞かれるのを避ける為に
唇を塞いだような気もしないでもない。それは卑怯な行為だが、より深みに
落ちていく行為でもある。
そんな事を頭で色々と考える自分が面倒くさい。ぐっと目を瞑り肩に置いて
いた手を織姫の腰に回す。
慣れてない、というより初めての行為だったが、一護は半ば強引に、乱暴に
織姫の唇を貪った。ぷるりとした感触が自分の少し荒れた唇と舌に伝わる。
その小さな唇の間に、自分の舌を侵入させる。上手いやり方など判らない、
気持ち良いかも判らないままに、一護はそれを続けた。
「‥っ‥んぅ‥」
唇を塞がれ、上手く息ができず、織姫が苦しげな声を漏らす。その声に一護の
衝動は強く呼応した。キスをしたまま織姫の細い腕を掴み、先程まで織姫が
腰掛けていたソファに彼女を強く引きながら背中から倒れこんだ。
必然的に織姫は一護の上に乗り掛かる形となる。織姫の長い栗色の髪が、
一護の頬を掠め、やわらかく撫ぜる。
唇を離すとそのまま顔を織姫の豊かすぎる胸に埋めた。

ケイゴと誰だったか、女子の本匠千鶴あたりだったか‥井上の胸について
熱く阿呆な論議を延々としてたっけ‥などとそのふくらみの感触を確かめ
ながら思い出す。バカだとか思いながら聞き、なんとなくその後に視線が
彼女の胸元にいって、なんだか織姫に悪い気になったこともあった。
実際にこうやって触れると、ほんとうに大きくてやわらかい。
織姫の着ているTシャツの裾から両手を突っ込み、Tシャツとブラジャーの
間で揉みしだく。大きな胸を覆うシャツには、胸を掴む一護の手の動きが
浮かび上がる。
「っは‥‥ぁ‥っん」
織姫は目を瞑ったまま、甘い声を漏らす。一護はそのまま下着を掴み、
シャツごと上にたくし上げた。

下を向いている所為もあろう。大きく白い織姫の乳房は、重力に逆らわず
そのまま大きく一護の目の前に揺れ落ちた。擬音で表すのであれば正に
「ぶるん、ぶるん!」といわんばかりの迫力に、思わず一護は「凄ぇな‥」と
口にしてしまった。
その呟きは織姫の耳にも届いた。少し熱を帯びていた頬はあっという間に
みるみる赤くなり、一護から離れようと上体を起こそうとした。一護は
とっさに織姫の背中に手をまわし、自分の体にぐっと引き寄せた。ふたつの
大きな生の感触が自分の着ている服越しにもたぷりと感じられる。真っ赤な
顔がすぐ近くにあったが、織姫は視線を落とし、合わせようとはしない。
「井上‥」
触れてから初めて名前を呼んだ。或いは今日会ってから初めてだったかも
しれない。呼ばれた反射で織姫が一護を見て、二人の視線はようやく合う。
細い眉を中央に寄せて泣きそうな顔になった織姫が、か細く声を出した。
「や‥」
「ん?」
「やっぱり‥だめぇ‥!」
「だ、駄目?」
一護は慌てて身を起こそうとしたが、織姫の白い胸が唇にひた、と当たり、
それ以上は動けなかった。ただ、先程までの熱に浮かされたような衝動から
目が覚めたような気になった。ひと呼吸おいて、もう一度井上、と名を呼ぶ。
「井上、俺‥」
悪かった、と改めて謝ろうとした矢先に涙目になった織姫が、先程のか細い
声とは打って変わった大きな声で一護の謝罪を遮った。わざとじゃないだろう
が、どうあっても謝らせてくれないらしい。

「だって、だってやっぱり恥ずかしいよ!黒崎くんと、こんなの!お風呂は
さっき入ったけど、あたしのこんな‥おっぱいとか大事なとことか、見られ
たり触られたり‥!あたし、黒崎くんのこと大好きなのに、こんな恥ずかしい
とこ見られたら、もう‥」
恥ずかしくて死んじゃうよぉ!そう言って織姫は手で真っ赤になった顔を
伏せた。一護は、そのおかしな、だが何となく判ったような織姫のその
告白を聞き終え、少し間を空けてからその白い肩にそっと、手を置いた。
「井上‥安心しろ。俺もめちゃめちゃ恥ずかしい。」
って、安心できねえか、と一護は笑った。織姫は、一瞬きょとん、と一護を
見ると、自信満々に恥ずかしい、と公言するその姿にようやく笑みを戻した。
一護の言葉は、本当に織姫を安心させてくれたのだった。

織姫は再び一護に重なり、その身を委ねた。

キスをする。最初のより幾分かやさしい、でも不器用な。
触れられる。乳房を下から、たゆん、たゆんと揺らされ、一護の大きな手が
肌を滑り、腰を、その下を撫ぜまわす。
弄られる。先端のピンク色の突起を摘まれ、コリコリと指先でねじられ、
織姫は思わず「あぁ‥」と声をあげる。
舐められる。先端の敏感な部分をちろちろと舌先で突付かれ、そして吸われ、
また舐められる。湿った感触が乳首にざらつく。
硬くなる。織姫の乳首はさっきより大きくしこり、一護の下のモノも痛みを
伴うほどにズキズキと脈打っている。
織姫の腰を浮かし、下の茂みに触れてみた。濡れている。そして熱い。
「いいか‥?井上‥」
織姫は返事はせず、だが一護と目を合わせて笑顔で頷いた。
一護が下の位置で、織姫がその上。ソファの上でいわゆる騎乗位と座位の中間
に近い体位の二人は、繋がるのに多少の時間を必要とした。
右手で一護は自身を掴み挿入体制に入るが、織姫のそれが狭いのか、一度は
同じものを受け入れたはずの花弁は容易に開いてはくれなかったのだ。
一護の緊張と焦りは一気に上昇した。
(やべぇ‥マジ格好悪ィ‥)
俺も恥ずかしいよ、と大見得を切ったときの数倍もの羞恥が一護を襲う。
織姫はそんな一護の様子を見て声を掛けようとしたが、そうするのを止めた。
逆効果になるような気がしたからである。代わりに、一護の頬に両手を
伸ばしてそっと触れる。
一護は焦りの視線で織姫の表情を伺い、織姫は一護を熱の籠もった眼差しで
見つめる。目と目が合う。

織姫は、笑顔を見せてそのまま頬から細い手を移動させ、一護の上半身を
撫ぜ下ろして結合を求める部分に指を這わせた。そして、自らの栗毛の奥を
かき分けて、両手の人差し指と中指で押さえ、開いていく。一護の猛ったもの
に、ゆっくりと開かれた花弁から熱いものが落ちて、溶けていった。
数時間前の破瓜の痛みは当然未だ消えることなく、ヒリヒリと赤く痛んでいる。
織姫は痛みと羞恥で目に涙を溜めている。
(く‥黒崎くんに‥見られてる‥っ‥)
そう思っただけで、次々と体の芯が熱を帯び、かき分けた茂みから蜜を
した垂らしてしまう。
「‥‥‥!」
一護は息を呑んで、自分の為に織姫が開いてくれた扉を見守ってしまって
いたが、やがて、ゆっくりと挿しこんでいった。
「っんぅ‥くぅ‥っ!」
「‥っ‥‥!」
織姫をまた、あの激痛が襲う。ぎちぎちと一護が入ってくるのに抵抗する
自分の体が憎くなる。もっと受け入れたいのにそれが儘ならずもどかしい。
一方、一護の方も、初めて味わう急激な締め付けに息が詰まる。キツイのが
いい、とかビデオや本で目にした記憶があるが、もういっぱいいっぱいで、
気持ち良いのかどうかも、良く判らない。
だが、挿入しただけで、限界が近くなっているのは確かだった。
このまま何も動かずに事が済むのはやばい、そう思った一護は息を止めて
堪え、腰を動かしだす。
「いっ‥ぁああ!」
まだ馴染んでいないところに、初めての下から突き上げてくる衝撃が来て、
織姫は耐えられず声を上げる。
織姫の白い見事な双乳は腰の動きに一瞬遅れてから、息を揃えたように
上下に揺さぶられる。先端の尖りきって上を向いた桃色が、鮮やかに
縦長の楕円を空中に描いている。
「ひぁッ!あっ!あぁん!‥っああ!」
声を抑えることができずに、織姫は部屋中に甘い痛みの声を響かせた。

「わ、悪ィ!い、痛いか?」
あまりの声の大きさに驚いた一護が、慌てて動きを止めた。力の加減が
わからず、か細い織姫が壊れてしまうのじゃないかと、怖くなったのだ。
「だ‥いじょぶ‥だから‥いいよ‥続けて‥ッ」
「あ、あぁ‥」
そう言いつつ、一護は動きを再開できない。織姫を心配するのも勿論だが、
何よりも今動いたら、自分の欲望は我慢ができず、織姫の中に吐き出してしまう。
息を整え、織姫を見ないようにする。目の前の熱っぽい果実を見ただけで、
もう自分の分身は言うことをきいてくれないだろう。一護は目を瞑り、
すっと深呼吸をしてから、ぐっと耐えた。
織姫は、繋がっているだけでじくじくとした痛みに刺されている。だが、
ほんの少しずつ馴染んできて、落ち着いてきた。見慣れている自分の部屋が、
すこし歪んで見えていたのだが、今はいつもどおりに見えてきた。物の少ない
この部屋はガランとして少し寒々しい。自分たちの作り出した熱が、じっと
していると奪われていくようだった。織姫は、温かさが欲しくなり、繋がって
いるところに負担を掛けないようにそっと一護の上に重なろうとした。
その時。
「ッ‥はッ‥ふあ‥!」
ひやっとした空気が織姫の鼻腔を通り抜け、織姫の鼻がぴくぴくっとする。
「げっ!ま、待て!」
くしゃみなどされてしまっては、耐えに耐えたモノがあっという間に決壊して
しまう。一護は慌てて織姫の腰を持ち上げ、抜きに掛かる。考えてみれば
ゴムもしてない。
織姫は必死に我慢をしようとしたが、それ以前に体の本能が勝ってしまった。
「ッッくしゅ!」
「はぅぁッ!」
引き抜きの瞬間にもの凄い筋肉の凝縮が起こり、一護の先端近くが激しく
締め付けられた。だが何とか間に合った。ぬぽっ、という粘液の混じった
音をさせて織姫の中から出た直後、一護のそれは脈打ち、溜まっていた熱い
モノを一気に出した。一護は大きな快楽と安堵に包まれ、はぁっ、と息を吐いた。

「ご、ごめんね黒崎くん。」
織姫が眉尻を下げて、思い切り申し訳なさそうな顔をする。
一護はちょっと困って、目線をそらし、ぶっきらぼうに答えた。
「いや、俺も‥その、なんつーか・・悪ィ‥。」
痛かったろ、と言って織姫の頭にぽん、と手を置く。目は合わせないまま
だったが、織姫はその手の体温がとても気持ちよく、えへへ、と笑って
大丈夫と答えた。
終わった後に抱きしめられたり、キスを交わしたりはしていないが、
織姫にはかえってそれが心地よかった。
優しい愛撫など一護らしいとも思わないし、恋人同士というわけでもないから。
これからのことは取り合えず、考えないことにした。明日、また笑顔で挨拶が
できればそれでいい。織姫は一護の手の大きさを感じながら、そう思った。
「あ、井上、この服‥。」
コンに貸した兄の服。一護が申し訳なさそうに手にする。
「ごめんな、大事なモンなのに、‥汚しちまった‥。」
見ると、最初に汚れた一護のシャツよりも大きな滲みが出来ている。一護
自身のモノに加えて、上に乗っていた織姫の熱い蜜もしっかりと兄のシャツは
受け止めていたのだった。
彼の滲みと自分の滲みが重なり合ってる哀れなシャツを見て、耳まで赤くなった
織姫に、一護はぼそっと呟いた。
「代えのシャツ、貸してくれるか?」
「あ、うんうん、もちろん。」
反射的に織姫は頷く。
‥で、と続けながら、一護は自分でも整理がつかない気持ちのまま、だけど
織姫と確りと目を合わせて、こう聞いた。
「‥その、ちゃんと俺、洗濯するからよ、また‥返しに来ていいか?」
織姫は、その言葉をどう捉えていいのか良く判らなかったが、なんとなく
嬉しくなり、思いっきり頷いて、ありったけの笑顔で答えた。
「あ、うんうん!もちろん!」









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