――― 「指導」 一護×夜一 著者:152様 ―――
―――眼下の少年は、放心と達成感がない交ぜになった、表現しづらい表情をしていた。
胸は軽く上下し、間隔の狭い息遣いを、その口から発している。
一方の女。まだ全身に快い痺れと、満たされた昂ぶりを残したまま、
それでもいつものような、どこかからかい加減の口調で、少年に語りかけた。
「フ、フフッ……どう…じゃった、一護。ん?」
「……それにしても、あれほどの事で取り乱すとは、
青いというか、世間ズレしてないというか、オクテというか…………」
立ち昇る湯気の中、黒猫―――夜一は、一護を見やりながらそう言った。
つい先ほど、女性の姿のまま沸き出づる湯の中に入ろうとした時の、
あわてふためく一護の姿を思い出し、言葉の最後を含み笑いに変える。
「フフ……おぬしほどの年齢ならば、もう少し色事沙汰に慣れていてもいいはずじゃが」
「う、うるせェな! 別にいいじゃんかよ。個人差ってモンがあるだろ?」
一護はやや顔を赤くし、そっぽを向く。
一護も10代半ばの少年。当たり前だが、人並みほどには異性に興味はある。
が、彼の場合はそこまで。一対一で女性と付き合うなど、あまり真面目に考えてこなかったし、
ケンカ、友人との戯れ、そして(にわか)死神としての役割など、
彼の暇を取り上げる事柄はいくつも転がっていた。
結果、色恋に関しては必然的に優先順位が下がり、
経験も、知識も、さほど増やす事のないまま、今に至っている。
マセた輩が多くなっている今どきに、このような者―――か―――。
長く世を渡り歩いてきた夜一からすれば、一護という存在は珍しく、また、だからこそ弄び甲斐がある。
(それにしても…………)
夜一は改めて彼の身体を見遣った。
肉太ではないが、程よく引き締まったシルエット。
元からの体質的なものもあるだろうが、日ごろのケンカと、死神になってからの体験の中で鍛えられたか、
並の体育会系の者よりよほどしっかりとした身体をしている。
(……好い身体をしておる)
オクテな内面と、熟し始めたオトコとしての外見。
そのアンバランスさに、夜一は半ば無意識に目を細め、
観察とも見とれるとも定かではない視線を投げかけていた。
そんな視線に、一護はちょっとした抗議の声を上げた
「なんだよ、ジロジロ見たりなんかして」
「イヤ、別に……」
「ん……?」
猫の姿―――とは言え、やはり他人の女性に裸の姿を見据えられると、
あまり気持ちのいいものではないらしい。
急に仕草を慌しくすると、二度三度顔をぬぐって湯船から出ようとした。
「じ、じゃあ。俺はもう出るわ。明日もまた、キッツイ修行が待ってんだろ?
早めに休んどかないとな」
そう言って背を向け、水面から身体を離そうとした一護。
ところが、思いもよらない強い力で片手を引っ張られ、バランスを崩すこととなった。
『まぁ、待て』という呼び声とともに。
「のわわっ!」
一瞬、手がひねられ身体が翻ったかと思うと、
温泉のすぐ脇の柔らかい土肌に仰向けで倒されていた。
「な、何するんだ、てめ……」
慌てる一護の上に、いつの間にかヒトの姿に戻った夜一が、素早くのしかかる。
「だから何でまたその姿にっ!」
「いやなに…この格好でないと教えられないものもあるからな」
「こんなトコで教えるって…」
「フフフ……」
妖しそうに、面白そうに、唇の端を持ち上げると、
一護の上で座したまま、上半身を前傾させた。
と、抵抗させる間もなく相手の唇に自らのそれを重ね合わせる。
「ン……ウッ…………」
目を大きく見開いたまま、為すがままにされる少年は、
数秒間の行為の後、互いの口が離れてからようやく驚きの声を上げる。
「……っく、夜一さん! あ、アンタ!!」
「どうじゃ、このようなものは初めてじゃろう?」
「あ、当たり前だ!」
怒鳴り声とともに夜一を跳ね除けようとするが、
下腹部に跨られたまま、両腕の肘を地面に押さえつけられたこの体勢では、
支点の自由を奪われた形で上手く身体を動かせない。
「この先、経験があった方がなにかと便利ではないのか?
よって、恐れ多くもこの儂が直々に手ほどきをしてやろうというのだ。
光栄に思うが良いぞ」
「そんなもん、頼んでねぇだろ!!」
最も自由に動かせる口を使い、
何とか夜一の―――彼、一護にとっては紛れもない―――襲撃をかわそうとする。だが、
「ふむ、罰当たりなことを言うのはこの口か、ん?」
そう呟くと、褐色の美女は再び熱っぽい唇を合わせてくる。
しかも、今度は柔らかい舌先を差し入れ、一護の舌をねぶるように絡ませてきた。
先ほどより長い時間を消費した後、ツ、と粘った唾液の糸を引かせながら口を離し、
艶やかな笑みを伴って語りかける。
「気持ちよかろう……お子様にはこれだけでも刺激が強いかもしれんな」
「…夜一さん…………ふざけるのはやめてくれ……」
女性の香りを鼻腔と口腔から存分に吸ったためか、
制止を求める声は明らかに弱々しくなっている。
「おぬしが抗っても手ほどきはやめてやらんぞ」
次いで、フンと軽く鼻を鳴らすと、肘を押さえていた片手を離し、
今度は一護の股間の方に指先を伸ばした。
そこには本人も知らないうちに反応してしまった、男性そのものがある。
「ホレ。こちらのほうは随分と立派になっているではないか」
「そ、それは……」
らしくなく、一護は言いよどんだ。
自分の意思に反して、いきり立っている肉茎がこの時ばかりは憎く思える。
夜一のしなやかな指が、巧みに肉茎の表面を伝う。
その指使いに、寒気と快さによる刺激が身体の内に響き、一護は思わずうめいた。
「う、ううっ……」
「身体は素直じゃ……のぅ?」
女は甘く呼びかけ、また身体を傾けてから軽く口を吸ったり、乳房を擦り付けたりしてくる。
そうする度に男根の硬度は増し、胸の奥がカァッと熱を帯びたように熱くなっていく。
「頃合、か―――」
夜一が重ねた身体を少しずらし、張り詰めた男根に手を近づけると、軽く指で弾いた。
「つっ!」
弾かれたそれは、一瞬ぶれたが、次の瞬間には何事もなかったのように天を向き直す。
「さすが、若いだけはあるのう。ガチガチではないか」
夜一はわずかな含み笑いを漏らし、今度は優しく手を添えた。
そのまま太ももの辺りに跨り、横寝したままの一護の顔を見やる。
先ほどまでの抵抗の意思は、8割方くじけているようだった。
煩悩のままに目の前の女性にしゃぶりつかないところを見ると、
最後の意地だけは保っているようではあったが。
初い奴―――口の中だけで呟くと、夜一は片手で改めて自らの秘所を探ってみた。
しとどに、というほどではないが、そこはほどよく濡れ、かすかに内股に愛液が伝っているようだ。
結局のところ、自分もこのような坊主に相対して昂ぶりを覚えているのか、
そう思うと可笑しく感じなくもない。
「いいな?」
一護が我に返ったのはそう言われてからだった。
騎乗位の体勢で夜一が彼の男根を握り、自らの入り口に導こうとしている。
「……ッ!」
何か言おうとしたが言葉にならない。
その様を了解の意思と捉えたのか、夜一は持ち上げた腰をゆっくりと落としていった。
ほんの数秒、一護の勃ちあがったモノに柔らかい感触が押し付けられたかと思うと、
すぐにその感覚に全体が押し包まれた。
「う…あ……あぁ」
「んんっ、はぁぁぁぁ……」
男と女、双方の口からくぐもった息が漏れる。
次に口を開いたのは夜一の方からだった。
「は…んぅん………初めての事で、と、戸惑っている…ようじゃ……な」
声を震わせながら言葉を連ねる夜一に対し、一護は応える事ができない。
(こんなっ……感じなんてっ…………)
女性の秘所に収められている、ただそれだけなのに、
思わずため息をついてしまうような、むずがゆさにも似た快さが通り抜けていく。
「……動くぞ。あ…まり、早く果ててくれるな……よ?」
そう言うと、夜一はゆったりと腰を揺らし始めた。
「んっ……はぁっ……うんっ……くぅ……ぁあ……」
男に跨ったまま腰を動かす夜一からは、断続的な嬌声が出て行く。
膣を満たす男根が、内なるヒダを押し分け、互いの動きの度に別々の場所を刺激してゆく。
最初は導く側としての威厳を保とうとしていた彼女も、
次第に目じりが緩み、眉の間が寄せられ、快楽を享受した表情に変わっていった。
その下では、一護が次々に与えられる集中的な刺激に、必死で耐えている。
やもすればすぐに爆発しそうな下半身に意識を集め、
巧みな動きに流されまいとしていた。
夜一の動作は時とともに複雑になっていった。
前後に、左右に、上下に。強く、弱く、激しく、緩やかに。
「はうっ、んぁん、っつ…あふ、ふぅん!」
その動きに呼応するかのごとく、徐々に髪が振り乱れj始め、
華奢な身体に似合わぬ大きめの乳房も、たぷん、たぷんと形を変える。
動きのさなかに、前の快楽をさらに上回るものを求め、
刻み込まれた塊を貪欲なまでに味わおうとする。
そんな夜一の中のたぎった熱さに、一護は舌を巻いた。
「夜…い、ちさ……そんなにしたらっ……」
「ダ、駄目じゃ! お、おぬしももっと……あぅっっ……、
これも指導なんじゃから……手、手を抜いたりし…たら、後で…んふっ…酷いぞ……っ?」
一時、睨みつけるような表情をした夜一だったが、
言い終えるとすぐに甘美の色を顔全体に浮かべる。
もはや、指導の名の下とは言え、彼女自身も存分に悦楽を愉しんでいた―――。
二人の感覚の中で、官能のさざ波が押し寄せては引いてゆく。
今や、互いの肌はすっかり汗ばみ、全身からねっとりとした熱気が上がるほど。
夜一だけではなく、一護のほうも本能に支配された腰が自然と動く。
不器用ながらも夜一の蜜蕾を突き上げ、二人の揺れる動きは一致し、
まるでシンクロ・プログラムを施されたもののようになっていた。
「イイぞ、い、一護っ!」
導きに対する男の応えを心から悦び、女の身体は打ち震える。
「そりゃ……どー、も……」
何とか言葉を返すと、一護は動きをまた同調させる。
いつの間にか、ヂュク、ヂュク、ヂュク、と結合部からは淫らなリズムが奏でられ、
流れる蜜は、下になる一護の腰のところどころまで濡らしていた。
「はぅっ!!」
一際高い声で夜一が啼く。
最も感じる部分を探し当てた彼女は、あとはただひたすらにソコをこすり付けてゆく。
「あうっ、あうっ、あぁっ!」
明らかに違う反応を示すようになった夜一を見て、よくわからないまま何かを感じたのか。
一護は突き刺さった自らの分身を、さらに単純に、ソコを目がけて押し込んでいった。
―――が、間もなく一護のほうが限界に近づいた。
背筋をゾクゾクとした感覚が走り、熱いものが男根の先に急速に集まってゆく。
「夜一さん! 俺、もう……っ!」
そう叫ぶと、夜一の腰を持ち上げ中から引き抜こうとした。
しかし夜一は何も言わず、さらに深く重心を落とし、奥へ奥へといざなおうとする。
「だから、ダメだっ! あ゛っ!」
……抗議も空しく、最後まで締め続けられた一護は、ついに夜一の中に精を吐き出してしまった。
「あ……ふ……」
ドクリ、ドクリと白い液が注ぎ込まれる度、夜一はビクリと身体を震わせる。
そして一護の胸に身体を投げ出し、腰をわずかに上下させながら、
情後の余韻をたっぷりと味わうのであった。
「フ、フフッ……どう…じゃった、一護。ん?」
「どうだったって……」
ようやく繋がりから解放された一護は、ぶしつけな質問に顔を背けた。
今は夜一の顔を見る事さえどこか気恥ずかしい―――と同時に、
自分のイチモツで確かに女性を悦ばせた事に、なにかくすぐったいような思いも覚える。
そこまで思って、はたと気づいた。
「そ、そういえば大丈夫なのかよ!? 俺、夜一さんの中に……その……」
「あ? あぁ、気にしなくてもよいぞ。
本来の死神のようなソウル・ソサエティ出身同士の者ならともかく、おぬしは確かに現世に身をおく者。
魂魄時の交わりでは万が一にも孕む事はない」
一護の疑問にそう答え、夜一はいたずらっぽく目を細めると聞き返した。
「……それとも、心配事がないとわかったならば、もう一戦ほど挑んでみるか?
あの特盛りの女か、ルキアか、それともまた別のおなごか―――。
伴侶として相手を定めた時に、経験が多い方がリードしやすかろう?
無論、秘め事として誰ぞにバラす事も無いから安心せい」
「えええ、遠慮するってば!」
重なる誘いに、今度こそ恥ずかしさを隠そうとせず、一護は口をへの字に曲げた。
「ま、おぬしの子なら身篭ってみるのも面白かろうが……」
ふと、女が続けた言葉は小さく、目の前の男の耳にはよく届かなかった。
「ん、何だって」
「フ…何でもない」
「……ま、まぁいいや。けど夜一さん、もうこんなのは勘弁してくれよ…」
そそくさと立ち上がり、衣服を取りに去ろうとする一護に向かって、
夜一は彼の背後から呼びかける。
「明日の修行も厳しいものになるからな。早めに休んでしっかりと疲労は取っておくのだぞ」
―――ったく、最後の最後に疲れを残すような事をさせたのはどこのどいつだよ、
そうブツブツ呟く声が、かすかに聞こえてきた。
「おぬしの子なら身篭ってみるのも面白かろうが、か…………」
再び湯船の中につかった夜一は、先ほどの言葉を繰り返す。
自分の思っていた以上に、一護との交わりの中で我を忘れそうになった身体。
本気で快楽に押し上げられ、突き落とされそうな感覚は、久しく味わった事のないものだった。
それだけ、よほど『相性』というものが好かったのだろうか?
褐色の肌、その整った胸を撫で、一人ごちる。
「せめてあと100年、おぬしと出会うのが早ければな……」
そうすれば―――そう思いを馳せたところで、彼女は頭を左右に振った。
「儂とした事が……埒もない」
想像をかき消し、思わず苦笑する。
だが、自分からすればまだ年端もいかぬ少年同然のオトコに対し、
一時でも好意以上のものを抱いた事実は、簡単には消えそうになかった。
チャプン、チャプン。
湯の中で身体の各所を撫でる。
悦びから生まれた汗と、湯際の熱気で誘い出された汗。
それらが混じった物を洗い落とす事は、彼女にとってとても心地よいものだった。
〜〜〜終〜〜〜
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