―――   ギン×乱菊  著者:119様   ―――



ギン視点
人の欲望ちゅうもんには限りが無いなぁ
どこまでも、無限に膨らみつづける
ソイツが人の心を失った場合は特にな、欲望は醜く、強大な力を持ち
それ自身が滅びの道をまっしぐらに転がり落ちながら、あたりのモノも破壊し尽くさずにはおられんのや
酷いことやなァ
コレが元は人間だったモノのなれの果てとはな
怖い怖い
誰にでもあるし、欲望は

ボクにもな……

夜半に緊急召集がかかって呼び出されたんは、ボクを始め数名の隊長格と戦闘派の隊士やった。
けど現場に急行しても虚は次元の狭間に姿を隠した後やし、犠牲となった二番隊の三席はじめ六人の隊士は丸ごと喰われて塵も残っとらん。
時々こんなんが居る。賢うて、ずるうて、手強い奴や。
この虚、退治するまでにまだ何人も殺られるやろな。
それが仕事やゆうたらそれまでなんやけど

歯噛みしている二番隊隊長さんそのままに、討伐隊は解散や。
帰って寝よ思たけど、寝られへんよ、眼ぇ冴えて
無性に乱菊に会いたいなぁ
あの柔らこい体抱きしめて、乱菊の細い指がボクの髪撫ぜるの感じて、優しい声聞いて
ほいたらすぐに眠ってしまえるのになぁ

そないなこと考えとったら、自然と足が乱菊のとこ向かった。
夜更けやし明りも消えとる。もう寝てんのやろ、当たり前や、あほやなボクは。
起こすつもりも無いし、帰ろ、思いながらも未練がましくその場に佇んで、乱菊の部屋の窓をながめてんねや。
子どもン時はいっつも互いの温もりを感じながら寝とった。
真央霊術院におった時もまぁ寮は別としても、なんやかや毎日一緒やったし
護廷十三隊に入る直前、互いの入隊先がちゃう言うんが知れて、もう今まで通り一緒には居れんのやなって分かった時、どちらとものう自然と体重ねてた。
それからは誘えばキミはボクに抱かれた。ただそれだけの逢瀬を重ねたなぁ
なんやったんやろボク等の関係て……なぁ

ボクはな、乱菊
早よう隊長に成りたかった。
そうすれば乱菊を引き抜いてボクの隊に入れ、いっつも手元に置いておける。
まさかなァ ボクが引き抜くより早く、乱菊を副官に任命する奴がおるんとはな。
副官では引き抜き掛けられへん。
乱菊をボクの副官にとは一度も考えたことなかった。
そやかて副官はどんな危険な任務でも、隊長と共に果たさなならん。そんな事させたなかった。
ただ、ウチで、帰ってくるボクを迎えて欲しかったんや。

今となってはもう遅いな
キミはボクの手の届かん処で虚と戦い
ボクの知らんうちに死んでゆくんかもしれん

綺麗やのに
華のように綺麗やのに
死んでゆくんかも知れんなァ

ボクの知らない所で

……………………

あかん、乱菊。もう限界や。
ボクがほんまは怖がりやいう事を知ってるやろ?
怖がりやから無茶苦茶するゆうことも…
このまま帰って寝るなんてでけん。悪いなぁ。


開かれた戸ぉの中で、夜着の胸元をぴっちりと合わせ、すこし眠そうで空ろながらボクを見て微笑んだキミは
やっぱり生き生きしていて、瑞々しい華のようやった。
許しも貰わず部屋に入り込んだボクは、そんな乱菊を見て思ったんや。

ボクの手の届かん所で死んでしまうん位やったら
ボクがこの手で手折ってしまいたい、と


乱菊視点
目を覚ますと、見慣れた自分の部屋に、朝の光が差し込んでいた。
裸の腕が、ひとつは首の下を通って胸に回され、もうひとつはあたしの腰の上に投げ出されて、
あたしは後ろから、すっぽりとギンのぬくもりに包まれていた。
首の後ろに感じる、おだやかな寝息を聞いていると、数時間前のことが嘘のように思えてくる。
昨夜、ギンは変だった。
真夜中に突然あたしの部屋を訪れたギンは……



「もう寝とった?」
「見れば…分かるでしょう」
夜着のまま戸を開けたあたしを見て、ギンは、そやね、と軽く笑う。
「何よ、もう。こんな遅くに…驚くじゃない」
そんなあたしの言葉は無視して、冷たい夜の空気と一緒に部屋に滑り込んでくるギン。
勝手なんだから…、と口の中で呟きながら、嬉しいという気持ちも湧き上がってくるのが抑えられない。
戸を閉めて、ギンの方を振り返りながら
「いいけど…明日も早いんだから…」
と言いかけたあたしの唇は、ギンの唇でふさがれた。
乱暴に引き寄せて、噛み付くような口づけ。なんなのこれ。あんたらしくない。
すっと抱き上げられて運ばれ、寝床の上に放り出される。
「なっ…」
なにをするのと言いかけ、起き上がろうとするあたしの肩が、更にまた突き飛ばされる。
パフンと布団の中に埋まり、あたしは呆然とギンを見上げた。
変、何なの、どうしたのよギン……
表情からは何もうかがえない。いつも通りなのに……何か…怖い…

あたしは身体をひねって逃げた。
うつ伏せに向きを変え、両手を付いて立ち上がりかけた背中が、上から重みで簡単に押しつぶされてしまった。
覆い被さっているギンが、耳元で囁く。
「何、じたばたしとるん? 乱菊を抱きに来たんや……乱菊かてボクに抱かれたかってんやろ?」
「か…ってな…こと!」
押さえつけられて、息が苦しい。
「ギン! 放してよ、苦しいわ」
「苦しいんは、きつう紐を絞めてるからやないの」
ギンはさっさと腰紐を解きにかかる。しゅるしゅると紐の抜き取られる音にあたしは青くなる。
こんなのは嫌よ! 
本気で抵抗を始めると、向こうも本気で押さえ込んでくる。
「無駄やね、無駄。ほら、しまいや」
両手首を後ろで一つに括られ、身動きできなくなったあたしは、肩越しにギンを睨みつける。
「縛るなんて…どういうつもり」
「いややなぁ、怖い顔して。只の遊びや、つきおうて?」
「ふざけないで!すぐ解いて、解いてよっ」
「怒った顔もえぇなぁ」
髪の毛をかきあげ、うなじに指を這わせ、夜着の中に手を滑らせながら、ギンはあたしを脱がせていく。
剥き出しになった肩、腕、背中に軽く指が触れるたびに、ぞくりと粟立つような感覚が走る。
「やめてっ」
ギンに仰向けにされる。かろうじて夜着が胸の先端を隠しているけど、自由を奪われているこの状況では何の意味もない。

なぜこんな真似をするの? あんたに、こんな風に扱われるなんて…
……怒りよりも悲しくて、なんだか切なくて、頭がクラクラするわ。
あたしの髪を一筋すくい取って口づけながら、ギンは指先であたしの頬をなぞる。
「その顔も堪らんなァ」
頬を撫ぜた指はそのまま首筋へ、そして胸へ…
「本気で言ってるのよ、ほどいてギン」
「笑ろた顔もえぇし、すねた顔も、泣いとる顔も……」
指先がふくらみをゆっくりと巡り、その輪がだんだんと小さくなって頂上へ近づき
触れられてもいない先端が起きあがってしまう。
体が熱い…
「ギン……やめて……」
「せやけど…ボクが一番好きなんは…この顔や」
「! 」
焦らされていた先端がきゅっと摘まれて、体がぴくんと跳ねる。
そのまま指先でこりこりと刺激されて
「あ、あ、ぅっ」
思わず声がもれて…
「あかんなぁ、犯罪やね、その顔、その声」
ギンはあたしの耳に唇が触れるほど近寄って低く囁く。「淫らすぎるやろ」
きっと睨むと、喉の奥で笑いながら着ている物を脱ぎ、腿であたしの脚を開かせる。
膝をきつく合わせ、身をよじって抵抗しても、後ろ手に縛られているのではどうしようも無い。
かえって前がはだけ、恥ずかしい姿をギンの目に晒してしまう。屈辱に唇を噛み締めて横を向いた。
「こんなの…、嫌よ」
真剣に訴えても答えは無く、かわりに顎を大きな手で掴まれて、深く口づけられ
舌が歯列を割って口内へ入り込んでくる。
「ん…っ」
傍若無人な舌が、隅々まで口の中を侵し、あたしの舌を捕らえて強く吸いたてる。
下半身は圧し掛かられたギンの重みで、動かすこともできないまま、さらに大きく脚を開かされ
中心に熱く硬いものが押し当てられ

「…い…やっ…」
貪られている唇の隙間からくぐもった声をあげるのが精一杯だった。
ふくらんだ亀頭が、潤っていないあたしの襞をわけて、軋みながら入ってくる。
「ぅ……」
その途端ひろがる体の奥の痺れに喉を反らせ、押し殺した呻き声をあげる。
こんな乱暴な行為に反応するなんて!
ああ、あたしはギンが好きなのだ。どんなギンでも受け入れてしまえるほどに。
ギンの匂い…ギンの味…熱…息…肌…感触……体が喜びに震える。
ギンの舌はあたしの口からも快感を汲みだし、自らも快感を受け取って止まる事を知らない。
挿し入れられている脚の付け根の中心がうずいている。
もっと欲しい。もっと奥まで…。そう願ってしまう。腰を動かしてしまいそう……なんてことなの……
ギンに気付かれてしまう。ううん、このろくでなしが気付かないはずが無い。
案の定、彼は口付けをやめると顔をのぞきこんでくる。
「奥まで挿れてほしい?」
「手をほどいて、あたしの上から降りて、出ていってほしい」
「体の方は素直やのにねぇ」
ククッと笑いながら「濡れとるで」と耳元で囁く。
浅く抜き差しされるとくちゅっくちゅっと音がして、恥ずかしさにどうにかなってしまいそう。
「縛られるのもイケるんやったら、早よ言えばええのに」
カ――ッと頭に血が上った。
「人でなし!バカッ!けだもの!!」
ギンは気にするどころか実に楽しそうな顔をしてあたしの胸の蕾を舐める。
「ぅう…っ」
「そんなに気持ちええん?」
口惜しくて涙がにじむ。

ギンは体を起こすとあたしの両足を持ち上げた。
蹴ってやろうと暴れると、肩に担いできつく足首を握られ動かせなくなる。
「もらうで」
ぐいっと奥まで一気に貫かれる。
「あ、あぁ…」
頭の天辺から爪先まで電流が走ったように痺れた。
ギンは力強くリズミカルにあたしの中を冒し始める。
「ああ、ぃやぁっ、あっあっ、あ――!」
「飛ばしすぎ、ちゃうの、乱菊」
「ひ、ひど…ひどい……んっ、んんっ、ぁああっ」
ギンが足首から手を離しても、もう力なんか入らない。ギンの肩の上で爪先が揺れて……
離した手をギンは太腿に滑らせ撫でまわしてから、さらにお尻の下に差し入れてきつくつかんだ。
「絹みたいな肌や、中もな…よう絞めてくる…。あかん、辛抱でけへんわ…」
「はぁっ、んっ、ギ…ンぁあっ、んっ、んっ、は、ぅぁ」
「一緒に、イク…で!」
膝の裏がぐぅっと押されて、体を二つ折りにされ、上から打ち下ろされるように激しく抜き差しされて
身体じゅうが喜びに弾けた。
「あ!ぁああああぁぁ……っ」
仰け反って震えるあたしの中に、ギンも欲望を弾けさせるのを感じながら
そのままあたしは白い空間にふわりと投げ出されていった。

朝だわ……
もう、朝……
起きなきゃ、定例集会に遅刻するわね……


腰に絡み付いてるギンの腕を外そうとしてそっと持ち上げると、ぎゅうっと後ろから抱き締められた。
「ギン…起きてるのね」
「ん――」
「離して、用意しなきゃ、あんたもよ」
「用意はできとるよー乱ちゃん」
ギンは私の手をとって自分の股間に持っていく。
熱くたぎったモノに触らせて、それからそれをあたしのお尻に擦りつける。
「遅刻はいやなの、起きるわ」
しぶしぶギンが手を緩めたので、するりと寝床から抜け出た。
「仕事なんてやめたらええ」
「なんですって?」
着物を羽織りながら聞き返す。
「死神なんて、乱菊には向いてへんよ。辞めぇ」
「………」
顔をあげてギンを見ると、真面目な顔であたしを見ていた。
「辞めるわけにはいかないわ。あたしを副官に選んでくれた隊長の信頼を裏切りたくないもの」
「あないな子ども」
「さぁ?あんたより精神的には大人かもね」
「フン」
あたしは手早く身支度を済ませると朝食の用意を始めた。
「ギン、朝ご飯食べる?」
「ん〜ん」
「果物だけでも食べたら?柿をむいてあげるわ」
「あ、それなら貰お。むかんでええよ。そのままで」
柿に噛り付いてるギンを見て、子どもの頃を思い出した。

「ギン……あたし、仕事、大事なの。副官でなくても辞めないと思うわ」
「……そう言うのは分かっとった。もうこの話は二度とせんよ」
「……お茶、どうぞ」
ギンのまえに湯飲みを置くと、彼はあたしの手に軽く触れた。
「手首、痕になってしもたなぁ。許してや、乱菊」
「あら、許す気なんて無いわよ、ギン」
「え?」
ギンがぎょっとしたようにあたしを見る。
「あたしの部屋には立ち入り禁止ね。もちろんあんたの部屋に呼ばれても、行く気は無いわ」
「嘘やろ、なぁ乱ちゃん」
「あたしを呼ぶときは十番隊副隊長さん。それ以外は返事をしないから」
「んな殺生な〜」
「自分のした事を、よく考えてみましょう?」
「感じとったくせに」
「黙れ」

◇    ◇    ◇    ◇

しゅんとしているギンを見て、あの時は胸のすく思いがしたけど
何度も許してくれと懇願しに来るかと思われたギンは、あれからあたしの前に現れない。
もう、数ヶ月。一度も会わないまま数ヶ月。くっ、意地っ張り。
待ってても、あたしの方から折れたりはしないわよ。
そうは言っても、とても辛い。会いたくて、恋しくて、ギンの胸に抱かれて眠りたい。
あたしも正直になればいいのに、もう限界ですって。
意地っ張りね、お互いに。
ほんとバカみたい……

end






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