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西園寺×成瀬 |
夕方の会計室。 学園の女王様と呼ばれる西園寺の隣にいつもの七条の姿は無く、 代わりにテニス部主将の成瀬の姿があった。 成瀬の綺麗な金髪が夕日に照らされている。 昼から夜に変わるほんの一瞬。 会計室で行われる逢瀬。 二人はゆっくりと唇を合わせる。 最初は軽く、そして徐々に深くなる口付け。 夕日の所為ではない赤みが成瀬の頬を彩っていた。 「お前の髪は美しいな」 西園寺の細く白い指がウェーブのかかった成瀬の髪を解く。 くすぐったそうに成瀬が微笑んだ。 「郁くんの髪だって綺麗じゃない」 「自分の髪の全ては自分の目では見られない」 「そりゃそうだけど…」 「それに私はお前の髪が好きだ」 「ありがと。そう言ってもらえると嬉しいな」 軽いウィンクと共に言葉を返した成瀬を見て、西園寺は突然憮然とした顔になる。 「ぼ、僕何か悪いこと言っちゃった?」 その豹変振りに慌てた成瀬が、西園寺の顔を覗き込む。 しかし、西園寺はふいと成瀬から顔を背けてしまった。 「何でもない」 「でも、何でもないって顔じゃないよ?」 「何でもないと言っている」 「郁くん?」 小さく呼ばれて視線を成瀬に合わせた西園寺が見たのは、 成瀬の悲しい捨て犬のような表情。 「すまない。お前が悪いわけではない。 ただ……以前のお前を思い出しただけだ」 「以前の僕?」 「啓太のことをハニーなどと呼び、抱きしめたり、ウィンクだのをしていただろう」 「うん、でも今は……」 「わかっている。 だからこれはくだらない嫉妬だ」 「今の僕は郁くんのものだからね」 「ああ、放すつもりはない」 再び重なる唇と唇。 窓の景色は既に夜の帳が落ちていた。 |
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