. . . N o v e l s. . .

05:君のため(成和)

冬の放課後。
半袖のシャツのまま風にふかれる成瀬に遠藤が声をかけた。

「成瀬さん、そんな格好で寒くないんですか?」
「練習後だからね、平気だよ」
「今年は暖冬ですけど、冬は冬なんですから。
 気をつけてくださいね!」
「嬉しいな、心配してくれるの?」
「そりゃ……成瀬さんだって僕の学園の大事な生徒ですからね」

二人の間に訪れるほんの少しの静寂。
それを遠藤が遮るように口を開いた。

「……これ貸してあげます。
 あの…返さなくていいですから。
 それじゃ、さよなら!」

礼を言う暇も与えず遠藤は走り去ってしまった。

成瀬に押し付けられた柔らかそうなマフラー。
その端には「Y.N」のイニシャルが小さく綴られていた。

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