. . . N o v e l s. . .

20:指先から伝う熱(中七)

兎に角息が苦しくて、浅い呼吸を繰り返す。
聞こえる音は激しい自分の息遣いだけ。
灼熱の砂漠にいるのか。
それとも極寒の氷河にいるのか。
寒いのか熱いのか、それすらもうわからない。
どうしたらこの状況から抜けられるのか。
考えようとしても、思考がそれに追いつかない。

「お前は馬鹿か?」
突然聞こえた声。
冷たい指先が額から頬をゆっくりと這う。

「中嶋さん…ですか?」
掠れた声での七条の質問に答えずに、
中嶋は逆に質問を返す。
「薬は?」
「…いえ、寝てれば治りますから」
「そんなレベルじゃない。
 自分の熱がどのくらいあるのかお前はわかっているのか?」
「……」
「…兎に角、薬を持ってくる。
 少し待っていろ」

異様に甲斐甲斐しい中嶋の様子に七条は若干戸惑う。
もし、この中嶋が熱が見せた幻だとしても、
何となく嬉しいと思ってしまうのは
熱に浮かれた所為なのかもしれない。


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