. . . N o v e l s. . . |
16:離別(啓中) |
3回鳴ったノックで啓太は目を覚ます。 耳を澄ませてみてもノック以外には何も聞こえない。 布団から出ると途端に体に纏わりつく冷気に震えながら、 細くドアを開ける。 ドアの向こうに月明かりでキラリと光る眼鏡。 「…中嶋さん!?」 慌てて一気にドアを開ける。 そこにはコートを着込んだ中嶋の姿。 中嶋が啓太の部屋を訪れることはそう珍しいことではないが、 今日来るのはおかしいということに気が付いた。 「あの、今日は確か実家に帰っているんじゃ…」 「…用は済んだからな、さっさと帰ってきただけだ。 それに、お前が一人で寂しがってるんじゃないかと思ってな」 「そ、そんなことありませんよ!」 「ふぅん、そうか。 せっかくお前に冷えた体を暖めてもらおうと思ったんだが。 丹羽のところにでも行ってくるか」 「中嶋さん!!」 啓太が背中を向けた中嶋に思いっきり抱きつく。 「あの…嬉しかったです。 俺のところに来てくれて」 「そうか」 中嶋は一瞬だけ小さな笑みを浮かべる。 そしてゆっくりと振り返ると、啓太の部屋へと消えていった。 |
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