. . . N o v e l s. . . |
喧嘩するほど仲がいい |
時計は0時を既に回った頃、七条は自室でキーボードを叩いていた。 タイプの音が響く中、勝手に鍵を開けノックもせずに入ってきた侵入者。 七条はその侵入者を確認することなく、口を開いた。 「非常識ですね。こんな時間に」 「起きてるんだから、問題ないだろう」 「そういう問題じゃないでしょう。 待ってろと言ったのは貴方です」 「寝ててもらっても俺は構わなかったが?」 「貴方みたいな性犯罪者の前で、そんなことする勇気はありません」 七条のいつもと同じ話し方。 しかし、聞くものが聞けば、 その中に『拗ねる』という感情が表れていた。 中嶋は楽しげに、拗ねているであろう七条を見る。 そして、背後から机に座ったままの七条を抱きしめた。 「そんなに拗ねるな」 「……今日の中嶋さんはおかしいですよ」 気持ち悪いほどに優しい行動に、七条は思わず振り向く。 そして、中嶋の足元に置かれた箱に気が付いた。 「それは…?」 「お前が食べたがってたものじゃなかったか?」 包装紙から某有名店のものであることはわかる。 しかし、問題は何故中嶋がそれを持っているかだ。 「いえ、それはそうなんですけど… どうして…」 「誕生日のケーキくらいは、な」 「あっ…」 「まさか、忘れていたのか?」 口元を吊り上げるようにして笑う中嶋。 七条は悔しそうにそれを見つめ、再び前を向く。 「最近、忙しかったんですよ…」 小さく呟いて、肩を落とす様子は否応無く中嶋の欲情を刺激した。 「祝ってやってるんだから、喜んだらどうだ。 それとも、気に食わなかったか?」 「そんなことないです! 食べていいんですよね?」 慌てたように振り向いた七条が中嶋の腕から飛び出し、箱に向かおうとする。 しかし、それを中嶋は許さない。 「放してください」 「ダメだ」 「あれは僕のものでしょう?」 「そうだ」 「なら…」 言いかけた七条の唇を中嶋のそれが強引に塞ぐ。 「ぅ…ン…」 緩く潜り込む舌は的確に七条を溶かしていく。 キスの合間に漏れる吐息は甘く色づいていた。 長いキスからやっと解放された七条が、中嶋を見つめる。 その紫の瞳にはうっすらと涙の幕が張っていた。 「な、なかじまさん?」 「プレゼントがもう一つあったのを忘れていた。 先にそっちを食え」 「強引な人ですね…」 微笑む七条は立ち上がり、中嶋の腰に腕を回す。 そして、ゆっくりと自ら唇に口付けた。 |
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