会員制レッグフェティッシュクラブ -1- 絵里子


プロローグ





 絵里子がこのバイトを始めたのは、ほんのちょっとした好奇心からだった。もちろんお金が欲しかったというのもあるが、それよりも何よりも面接の時に説明で受けたプレイの内容に、生来の好奇心が刺激されたのだ。
「貴女はただ椅子に腰掛けているだけで結構です。多少は扇情的なポーズをとる必要もありますが、基本的に貴女の方から会員の方に何かサービスをするということはありません」
(ただ、座っているだけの風俗なんてあるのかしら?)
 過去に一度だけコスプレ風俗でバイトした経験のある絵里子だったが、お客の要求の身勝手振りには、頭に来るのを通り越してあきれたものだった。やれフェラチオはそうじゃない、玉に手を添えろ、しごきながら乳首を舐めろ、等々、数え上げれば切りがない。まるで、こちらを意思のない肉人形か何かと勘違いしているかのようなその要求には、ほとほと辟易させられたものだった。中には小水を飲ませろという客などもいて、さすがにそれは「SMクラブじゃないから」と断ったが、要するに風俗のバイトというものは、お客の身勝手な要求をただ淡々とこなすものだという認識が、絵里子の中では、そのたった一度のバイトによってしっかりと形作られていたのだ。
(こっちが何もしないんじゃ、お客さんはどうやって満足するの? 自分でする? まさかね。それじゃ風俗に来た意味がないし……)
 基本的に絵里子は男の生理というものを分かっていないのだ。世の中には様々な性癖を持つ男がいる。女性に見られながら自分ですることに、堪らない興奮を憶える男など幾らでもいるのだ。絵里子はいずれこのクラブで、それを嫌というほど知らされることになるのだった−−



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