Exclesive Desire -3-



「では、。また明日」
 カバンを持って部室を出た。 今日もいつものように部活が終わり、いつものように一人で帰途についた。 別に一人が寂しいと思ったこともないし、一人が好きなわけでもないけれど自分から誘うのはどうも苦手なので入部から2年たった今でも一人で下校している。

 だんだん日が延びてきたが、それとともに練習の時間も延びてきたので、帰る時間になるとあたりはいつも夕闇に包まれている。私はほのかに明るい闇ともいえない闇の中、校舎の角をまがり校門へ向かった。
 突然。後ろから抱え込まれた。
「!!!!」
「動くな・・・・・」
後ろから捕らえられた。動けない。
「こっちに来い。」
 関節をとられ下手に動いたら骨が折れそうだ。ここはおとなしく着いていったほうがよい。一応、これでも体育会系で力には自身があるのでいざとなったら相手を張り倒して逃げればよい。どうやら相手は刃物も銃器も持っていないようだ。 私は導かれるままに何かの建物の中に入った。中は薄暗くてよくわからないが、先ほどまで自分がいた位置から、ここが体育倉庫だということがわかる。
 ガチャンと鈍い音がしてドアが閉められた。
「くっ・・・」
なにか口に押し込まれた。 何かの錠剤のようだ。それを飲み込まないように口の中に保っていたが猿轡をかまされる。錠剤が喉奥へ嚥下された・・・・これは・・・危険だ。これはすぐに逃げ出さなければ・・・・・。
 身をよじって相手の手を振り解こうとしたが、上手くいかない。
「うう・・・」
手に鋭い痛みが走る。どうやら手首を縛られたようである。
 そのままそばに投げ出された。体にぐっと力を込め投げ出された痛みに耐えようとしたが、マットの上だったらしくあまり反動は来なかった。私は薄目を開けて、そばに立った黒い影を見つめた。
「いい眺めじゃのぉ・・・・」
「ぐっ・・・!!」
言葉が出ない。
わけがわからない。
なぜ・・・君が?
「なぜ君が?って顔しとる。どうじゃ、図星だろ?」
彼は隣に腰を下ろした。
そして、首筋を撫でられる。全身が鳥肌立つ。
「なぁ・・逃げてみんしゃい。俺が怖いのなら。あ・・でも薬利いてきたら立てなくなるから、逃げるなら今のうちに。」
わけがわからなかった。頭の中が真っ白で。今、そこで喋っているのは仁王君の仮面をかぶった誰か別の人間のように感じられる。全くいつもの彼でなくて・・・・・・でも・駄目です。あなたの前からは・・・・・逃げられない。
「俺なぁ・・・・昨日の放課後、部室に忘れもんとりにきたんじゃ、そしたら変なもの見てしまってのぉ。」
血の気が引いた。
「いくら詐欺師とはいえ、かなりビビッた。だって俺自身が男に抱かれているのなんて始めてみた。」
ああ・・・・・・それは・・アナタを守るために。必至に心の中で弁解を反芻した。違うんです。それは・・・
「赤也は俺が好きだった。なのに抱いているのはお前さん。ということは・・・・」
違います。アナタは誤解している・・・・
「お前は赤也のことが好きなんじゃろ?そしてどーゆープレイだかは知らんが、自分が仁王雅治に成りすまして赤也に抱かれた。どうだ答えてみんしゃい。」
違う・・・・私はアナタを守るために。
必死で首を振った。
「違うのか?じゃあなんだ・・・ただ誰でもいいから抱かれたかっただけか?」
違うんです。私は、私は・・・・・・
「お堅い顔して頭ン中ではそんな卑猥なことばっかり考えてんのか?そーゆーのが一番最低な奴じゃ。」
違います。私は・・・アナタが・・・・
ジッパーを下げられる音がぼおっとした頭に痛いくらいに響いた。
下半身が急にスウッとする。
「何人の男に抱かれたかは知らんが、今更一人ぐらい増えたって変わりはなかとぉ。いっぺん男に突っ込んでみたかったし、丁度いい機会じゃ。」
「うぐっ・・・」
 ワイシャツをはだけさせられ、上から下まで舐められた。 首筋に、わき腹に、太ももに彼の唇を感じる。
 どうしようもなく目から涙があふれる。怖い、いつもの彼でなくて、全く知らない彼で。怖いはずなのにもう一人の自分はうれし泣きをしている。うれしい、仁王君に抱かれる。自分の体が仁王君のものとなる。嬉しくて、嬉しくて声を上げて泣きたい。仁王君、仁王君・・・・・
 頭がポーッとして自分がどこにいるのかわからなくなってきた。
「なんじゃ。もうおったてとぉのか?淫乱じゃのぉ・・・・」
いくら乱暴な口を聞かれても、それは私だけに向けられる言葉なのだと考えると、体が震える。
「んんっ!!!」
内腿に痛みが走った。
「柳生?しっとったか?人間の肉はざくろの味がすんだと。」
反対側にも同じ痛みが。
「そろそろか・・・・」
口がはずされたが、まだ腿がジンジンする。
 その時、急な圧迫感に悲鳴を上げた。
「きつっぅ・・・・もっと、がばがばだと思ってたんだけどなぁ・・・」
「ん!!」
仁王君が目の前にいて・・・・見下ろしてくる。 蜂蜜色の目が私を見据えていて、その瞳に飲み込まれそうだ。 下のほうからグチャグチャと聞こえてくる。  痛い・・・痛い・・・・
 熱くて・・・痛くて・・・・
 でも仁王君とひとつになっている・・・・・
「んっっ!!!」
目の前がスパークした。
・・・・
すぐに意識は戻った。
もう・・・イッてしまったのか?
仁王君に抱かれると考えただけで・・・?
急に手と口のの拘束感がなくなった。
「もうイッたのか?本当にお前さん紳士か?」
「んっ・・・・」
まだ下には仁王君のがはいったままで、あごを強引に掴まれて指3本でで口内をかき回された。
「キスはしとぉない。わけわからん誰かと間接キスなんて考えただけでも気持ち悪い。」
「ふぐっ・・・・」
それから耳元にささやかれた。
「俺はまだイッとらんから。」
「ああっ・・!!!」
腰の辺りがズンズンする。
さっきイッたばかりなのに、また熱が集まって・・・
体が溶けてしまいそうとはこの事?
「におくん・・・・におくん」
「なんじゃぁ・・・比呂士・・・・・・・」
 名前が呼ばれてる。
 今この瞬間、私だけの仁王君
「ねっ・・におっ・・キスして・・くださいっ・・・」
「だからっ、キスはイやじゃと・・・んっ」
 夢中ですがり付いて貪った。
 今だけ・・・今だけですから・・・・
 これ以上ないくらい抱きついた。
 そしてこれ以上ないくらいに食らいついた。
 そして・・・もう、覚えていない。




 暖かな月明かりが降ってくる。 起き上がろうとしたが全身が痛い。
「仁王・・・・君?」
 返事はなかった。 不安になって、痛い体を無理して引き起こす。
 ・・・・誰もいなかった。
「仁王君!?」
 どこ・・・・?
 におくん?
 どこへ・・・・・
 そばには私の服と荷物が散らばっている。
「仁王君?」
 立ち上がった。しかし、またへたり込む。
 立てない。
「におうくん・・・にお・・・・・・・」
 どこへ行ったんですか?アナタはいったいどこへ?誰のもとへ?
「ねえ・・・どこへ?におくん・・・・・どこへ!」
 ヤダヤダヤダ!!!
 行かないで!!おいてかないで!!!!
 どこへも行かないで私のところに!
 におうくん!!!私はアナタのものなんですよ!!!におくん・・・にお・・・・

 指先に何かが当たる。乾いてかさかさした白い物体。
「仁王君?」
 これはたぶん仁王君が残していったもの。
「・・・・仁王君・・・・・」
 首筋を触った。新しい傷跡がある。下半身を見ると明らかに鬱血の量が増えている。仁王君が残していったもの。そして太ももには二つの綺麗な歯型が。
 私は寝転んだ。
 仁王君はここにいる。
 私の体に、しっかり刻み込まれて。仁王君はここにいる。
 私は嗚咽を飲み込んで、体をマットの上に倒した。
 そして、全身に残った傷跡を触りながら、そのまま眠りに落ちた。





続いていくけどまだつながってない。




2004.07.13


[モドリ]



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