サラリと言わないで欲しい


艦内を駆け巡る。
手に持ったものが壊れないように、気をつけて。
そうしてやっと、目的の人物の部屋にたどり着いた。

「アムロさんっ」
「……?」
息を切らして彼、アムロ・レイの元に駆け寄ってきたは、その手に何やら重そうな包みを抱えている。
アムロは微笑んで彼女を部屋に招き入れると、何をしに来たのかと尋ねようとした。だがそんなことをしなくても、彼の疑問はすぐに解けることになる。
「お誕生日、おめでとうございますっ!」
「ありがとう、。……それ、随分大事そうに抱えているけど貰ってもいいのかな?」
「あっ……す、すみません、どうぞ!」
は一番最初におめでとうを言おう!と意気込んでいたのはいいものの、肝心のプレゼントのことをうっかりと忘れていた。ちゃんと持ってきたところまではよかったのだが、それはぎゅっと自らの腕の中におさまりっぱなしだった。
それを解いて、アムロに向けて差し出す。その時に僅かにした水音で、中身が何なのか、勘のいい彼には分かってしまったかもしれない。
「その包みから見ると、酒……ワインかな?」
「凄いです、当たりです」
「そこまで言うほどのものでもないよ」
ニュータイプの勘だの何だの言われる前に、包みを受け取ったアムロは包装を取り去っていく。なるほど、確かに中から出てきたのは、シンプルなラベルの貼られた白ワインであった。
「アムロさんの生年のものを見つけて、これにしたんです。色も、赤よりは白の方がいいかなって」
の言葉に、アムロはよく調べてあるものだ、と感心する。
職業柄、あまり酒を嗜むことはなくなってしまったが、食事時にワインくらいならばそう負担になることもないだろう。
そして何より、自分には赤よりも白の方が似合う。アムロ自身もそう感じていた。

からのお祝い。食卓には少しの酒。分相応な幸せというやつではなかろうか。
目の前でにこにこと「店員さんのおすすめで味も云々」と話すに、彼は目を細めた。
そしてそんな彼女にふと悪戯心がわき、話を遮る。

「ところで、
「はい?」
キョトンとするに、微笑んだままさらに続けた。
「君は酒はいける口かい?」
「……アムロさん、私、未成年です」
苦笑しながら返ってきた答えに、ならばとアムロは近づいた。
「……?何ですか?」
「それじゃあ、せっかくのプレゼントだけどこれを飲むのはもうしばらく後にしておくよ」
ワインをテーブルに置き、その手で今度はすっとの顎を持ち上げる。

一瞬の出来事だった。

「え……!」
「一緒に飲む相手がいないんじゃ、寂しいからね。君が成人するまでお預けだ」
唇を離して覗き込むと、は頬を染めたまま、アムロを睨むように見上げていた。
「……未成年に飲酒を勧めるのと、未成年に手を出すのと、どっちがマシなんでしょう、この場合……」
「この場合、後者じゃないかな」
「即答したっ!?」
は動揺してますますその顔は赤くなる。あやすように頭をぽんぽん、と叩いて、
「もちろん、本人の同意があれば、だけど」

そう言って彼が見せる穏やかな微笑みに、は同意を返さざるを得なかった。

(でも、そこまでサラリと言わないで欲しい)



(ホントは4日なのですがいつ更新できるか分からないので…!)
2008.11.02

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