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それは息をするのと同じ 「そういやさ侑士、やっぱクリスマスは彼女と過ごすわけ?」 「ん?」 何気ない日常会話のはずだった。 恋人のいる友人に、からかい半分で聞いてやる、的なそれだ。 聞かれた友人であるところの忍足侑士は、一瞬何かを考えるそぶりを見せる。 「……ああ、クリスマスな。その日はドズル中将閣下とワイズマン伍長の冥福を祈らなアカンやろ」 そして次の瞬間には、何でもないことのようにそう言ってのけた。 「あ……」 「あ?」 「…………アホかーっ!?」 心底呆れたかのような岳人の絶叫が教室にこだました。 それから岳人は、当の『侑士の彼女』にも同じ質問をした。わずかばかりの彼女への哀れみを込めて。 そうしたら、彼女であるところのはあっさりとこう答えたのだ。 「クリスマス……?12月25日は、確かソロモン陥落だよね?あ、そうか、クリスマスと同じ日なんだっけ」 あっけらかんとした口調に、岳人は顎が下がる思いをした。 「そうそう、ルビコン作戦もこの日に最後の……」 「もういい、もうお前らお似合いだよ、ほんっと」 の言葉を最後まで聞かず、岳人はとぼとぼと教室に戻っていった。 それとは別の日。 「、年越しなんやけどな、ちょっと行きたいとこがあんねん」 「どこ?」 「近くの山で初日の出見ぃひんか?」 「いいよ」 わりと恋人同士らしい、新年の予定を立てる会話が聞こえてきて、岳人は驚愕した。 だが次の瞬間、それは脆くも崩れ去ることになる。 「ラジオ……は、もうやってへんから、プレイヤー持ってな」 「うん、HORIZON歌おうね」 「……何の話だ?」 岳人は思わず尋ねていた。だがそれが間違いだった。 「何や岳人、初日の出見ながらHORIZONは毎年やらんとやで。マリ姉とのお約束やろ」 「はぁ!?」 「うんうん。私も毎年やってるよ。でも侑士もラジオ聴いてたんだね、びっくりした」 「俺、実はハガキ出したことあんねん。もしかしたら、もそれ聞いてたかも知れんなぁ」 「…………」 それ以上話についていけなくなって、岳人はがくりと肩を落としたまま、二人から遠ざかった。 「侑士〜。合言葉は?」 「Bee!!」 「なんだあいつら」 おそらくあのマニアックかつ恥ずかしい会話こそが、二人にとっては呼吸のような日常会話の一端なのだろう。 だから岳人には、力なく呟くことしかできなかった。 (だいぶ遅れてしまいました……) 2009.01.18 |