GOOD MORNING?


私の家の天井は、ついこの間張り替えたばかりの壁紙と同じ色で、こちらも同じく張り替えたばかりの代物。
新品同然だから、もちろんシミ一つない。
だから、「天井のシミを数えているうちに終わるよ」なんていう古典もいいところのシチュエーションになぞ、とんと縁がない。
ただ、私としては色があんまり気に食わない。
なんていうか……ベッドのすぐ横にある大きな窓から射し込む朝の光を反射して、とってもまぶしいのだ。

朝は苦手だ。


そう、なんていうか……────重い。

苦しい。息が!


さっきから、ベッドに横向けに寝転んでいる私の首の辺りを圧迫しているモノ。
それの存在を認めたくなくて、今まで触れないでいたけれど、さすがにもう限界だ。
きつい。暑い。鬱陶しい。
でも後ろを振り返りたくはない。
絶対に、振り返ってなんかやるものか。


「…………ん……」
「も〜、離せっての!」
ぐちぐち言っても始まらない。

窓側に背を向けて、朝日を見ないようにする。
もっとも、今現在体勢を変えることは非常に困難だとうこともあるのだが。
とにかく私は、後ろでなにやら呻いている声を聞きたくない。


身をよじる。
拍子に、上からふわりとかけられていただけのシーツがずれて、下半身が露出される。
「っとと、ヤバいって……!」
小さく言って、慌ててずり落ちるシーツを掴み、腰に巻く。
そう……私は何も身に着けていないのだ。くそ。
しかし、身体を動かしたことで、何だかよくないことになりそうだった。
「ううん…………動……く、な…………」
「え……ちょっ!!」
名前を呼ばれて反応した時には既に遅し。
首の後ろに回されていた『ソレ』が、もそもそと移動を始める。
やがて指が私の肩を探り当て、鎖骨に下り、さらに下へ……────
「〜〜〜〜〜〜!!!!!」


……これが、最近の私の朝。


私の朝を彩るのは、爽やかな小鳥の声でもなければ、けたたましい目覚ましでもなく。
ましてや愛しい彼氏のモーニングコールでもない。
その『愛しい彼氏』とやらの眠そうな寝言と、寝ながらでも歌う、彼の歌。
とうとう私は根負けして、後ろを振り返る。


熱気バサラ。
このシティ7一のトップアーティストは、私という抱き枕に毎朝歌を聞かせるのだ。
今朝もまた、人の気も知らずにのうのうと惰眠を貪っては、歌う。


……俺の歌、を……聴…………」


もう、駄目だ。
この人には。
何をやっても、敵わない……
「バサラ!いー加減にして!っていうか起きてっ!!」


私は歌い始めたバサラのわき腹に肘を入れると、やっとのことで起き上がった。
「…………もうやだ」
と愚痴ってみても、バサラは結局、今のまま変わらないのだろう。
咳き込みながらもまだ起きる気配はなく、歌い続けていた。
この爽やかな朝に相応しい、朝の歌だった。


ただし、私の心の中はどんよりとしていた。


だって、バサラのこのクセ(クセなのかな?)は治らないし。
私は一人で、二人分のコーヒーと朝食を用意するしかないのだ。
着替え終わると、キッチンに行きカップを二つ取り出して、目の前でかちんと鳴らす。


いつもと変わらぬ朝に、乾杯。




ナニやってんのバサラっ!?(笑)
アクショに住んでないっぽいなぁ、これ……ちょっとパラレル?

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