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さっきから、時計の針ばかりを気にしてる。 静まった夜の部屋の中には、かち、かち、という秒針の音だけが刻まれる。 あと数分。 あと……ちょっと。 眠い。でも我慢。 一秒がとても遅く感じる。 時間って、こんなにゆっくりだったっけ? 止まったんじゃないかと錯覚する時計の針。 握り締めたままの受話器に汗が滲んでいる。 緊張と、嬉しさと────不安と。 そして色々なことを思い出す。 初めて見た時は、とにかくおかしくて、何だろうこの人とばかり思っていた。 それから何度かお話しする機会があった時は、なんてわがままで勝手な人だろうとずっと感じていた。 はっきり言って、「この人とだけは付き合いたくない」……そう思っていた。 人の心とは、本当に不思議なものだ。 何度目かに彼らのライブを見に行った時、ふと、あの人の歌は私一人に向けられていると錯覚した。 それからディスクも買った。 同じフレーズを何度も何度も繰り返し聴いた。 そして多分、私はその時に彼を好きになっていたのだろう、と後になって気付いた。 この間10秒。 まだ、まだ遠い。 ワンプッシュに一秒かけて、彼の電話番号を少しずつ押していく。 日付が変わる瞬間におめでとうのコールを入れようと思ったのは、有名人である彼が忙しいだろうと考慮してのこと。 本当は、会いに行きたいけれど。 それは時間が許してくれそうもない。 0時まで、あと、10秒。 ようやく最後の番号を押し終わる。 0時まであと、3、2、1………… 通話ボタンを押したその瞬間。 がちゃりとドアが開いた。 そして立っていたのは、思いもかけない来客。 一番会いたい人。 「よ、」 「ば、さら……?」 「今日誕生日だから、来てみた」 「バカ……普通、逆でしょ?」 その人は笑って、 「気にすんな」 そう言って持参のギターをつま弾く。 ご近所迷惑だ。 でも、でも。 とても、その人らしい。 「バサラ」 「ん?」 「誕生日、おめでと」 彼は返事の代わりに弦をはじいて。 そして小さく、歌い始めた。 愛する人に。 生まれてきてくれてありがとう。 A.D.2047.08.15 Happy Birthday Dear BASARA NEKKI!! |
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ぽ、ぽえむ……(汗) ともかくバサラおめー!!(誤魔化した!) |