デート、みたいな?


休みの日の予定を聞いて、空いてた日に佐伯を呼び出して。
待ち合わせ場所には少し早めに到着。
服装はバッチリ。普段はあまり着ないガーリーな装いで決めてみた。

コースは水族館一周。
途中、中の喫茶店でコーヒーを一杯。
実を言うと、は酸味の効いた珊瑚礁ブレンドよりもこっちの方が味が好みだったが、そんなこと言うと佐伯がへそを曲げるのが目に見えているから、それは内緒にしておいた。

何となくいい雰囲気の中、順路を見終わって外に出ると、綺麗な夕焼け色が二人を出迎えた。

赤い空の色は、若者が灯台もとのお店へ帰らなければならない合図。


「なんかさ……デートみたいだったけど。何だったんだ?今日……」
意外と楽しかった……そう言うつもりだった佐伯の口からは、悲しいかな、いつもの癖でそんなひねくれた言葉しか出てこない。
そして『デート』という単語に、はぴくりと反応する。

しばしのシンキングタイム。
「えっ、えー……デートみたいなもの……で、いいんじゃない?」
「長すぎ」
間髪入れずの佐伯のツッコミが飛ぶ。
佐伯自身、『デート』という言葉を自分が出してしまったことについて、少なからず驚いていたのだ。
だが何故か、目の前のこの少女にそういうお気楽な答えで返されると、無性に胸のあたりがもやもやする。

そんな佐伯などお構い無しに、は頭をひねって、今日したことを『デート』以外の言葉で表そうと必死になっていた。
しばらくして、また一つ案を出してくる。
「んーじゃあ、デート(仮)ってことで」
「カッコかりってお前……」
「カッコわらいの方がよかった?」
「あのなぁ……」

もはやツッコミを入れるのもだるそうに、佐伯が溜息を吐くが、は「冗談だよ」とそれをさらりとかわす。
「まあ、いいんじゃない、名前なんてどうだって。休みの日に一緒に遊んで楽しかった、で」
「……それもそっか」
「そうそう」
苦笑する佐伯に、も調子を合わせて頷いてくれる。
なんだか妙におかしくて、佐伯は吹き出した。
「ハハッ、なんかお前といると気が抜けるな。……じゃあ俺、店あるから」
「うん。またね佐伯くん」
「じゃ、お先────……」
「あ、そうだ」
「……?」
手を振って、それが別れの合図だと、そう思った矢先だった。
何かを思い出したように、は告げる。

それはそれは、満面の笑顔で。

「私はデートだと思ってたよ、今日」
「……!!」
「じゃあね!」
固まる佐伯をよそに、は手を振って身を翻らせる。
ふわりと舞ったスカートがの背中と一緒に遠ざかって行った。


「…………」

さよならの意味で揚げた片手もそのままに。
店のことも忘れて、佐伯はそのまましばらく水族館前で考え込んでいた。


佐伯瑛、を意識し始めるきっかけの一言。




他キャラ狙いの時に佐伯とデートしてこれ言われると、
「爆弾処理ですが何か?」って返してやりたくなるこの無常(笑)
葉月は一応「楽しかった」って言ってくれるのになぁ……

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