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タイトル船橋市西図書館焚書事件 by 北の狼
記事No5
投稿日: 2004/07/15(Thu) 09:38
投稿者北の狼(旧BBS)
URLhttp://www8.tok2.com/home2/aramar88/
船橋市西図書館焚書事件

 投稿者:北の狼 投稿日:2003/11/03(Mon) 14:24 No.17


/題: 「船橋市西図書館焚書事件」(1)  :名前: 北の狼 /2003年10月10日 21時21分


去る9月9日、東京地方裁判所611号法廷において、いわゆる「船橋市西図書館焚書事件」をめぐって、著者らが船橋市および書籍を除籍・廃棄したD司書を相手どって損害賠償を請求した民事訴訟の判決が言い渡されたが、裁判官は「蔵書の取り扱いは市の自由裁量。廃棄基準に該当しない書籍を処分しても、著者は法的責任を追及できない」として原告の請求を棄却した。
翌10日の各新聞の見出しは、産経新聞の「公務員精神が欠如」(全国版)や「実質的に勝訴」(千葉版)を除いては、「藤岡氏らの請求棄却」(朝日)、「つくる会、全面敗訴」(千葉日報)、「『つくる会』が敗訴」(東京)、「『つくる会』側の請求棄却」(毎日)、「『つくる会』が前面敗訴」(共同)などと「新しい歴史をつくる会」の敗訴や請求棄却を強調するものが殆どであった。しかし、これらは一面的な事実しか伝えていない。
凡そ裁判というものは「事実認定」と「法の解釈と適用」からなるが、原告側は損害賠償請求こそ棄却されたが(つまり、「法の解釈と適用」に関しては主張が認められなかったが)、「事実認定」において完全勝利したのである。そして、この認定事実が意味するところは重要である。


・事件の概要

「新しい歴史教科書をつくる会」によって執筆された『新しい歴史教科書』(扶桑社)をめぐって各地で激しい採択戦が行われていた平成13年8月10日から同月26日にかけて、千葉県船橋市の市立西図書館において、船橋市図書館資料除籍基準に該当しないにもかかわらず、「新しい歴史教科書をつくる会」やその会員の著書を中心として107冊の書籍がコンピュータ上の蔵書リストから密かに除籍され廃棄処分にされるという事件が起こっていた。
平成14年4月12日付けの産経新聞において、西図書館に所蔵されていた西部邁氏の著書44冊のうち43冊、渡辺昇一氏の著書58冊のうち25冊の合計68冊がこの時廃棄処分されていたなどと報道され、この問題が発覚した。
この報道を受け、船橋市教育委員会が4月13日から同月23日にかけて臨時職員や退職者を含め合計22名の職員から事情聴取するなどして調査したところ、最終的にはひとりのD司書(54才、女性)がこの除籍・廃棄処分を行っていたことが判明した。5月10日、市教育委員会は記者会見を行い、司書職員1人が独断で除籍したことを認めていること、除籍で廃棄された合計107冊について除籍すべき理由を見出すことはできなかったこと、などを発表した。その後市教育委員会は、5月29日付けでこの除籍・廃棄行為に関する処分を行い、D司書を減給10分の1(6か月)の懲戒処分とし、加えて上司5人を処分したと発表した。また、除籍基準に該当せずに除籍・廃棄の対象となった107冊の書籍のうち、103冊については7月4日までにD司書を含む市教育委員会生涯学習部の職員5名からの寄付という形で再び西図書館に配架された。また、残り4冊については入手困難であったため、これら5名が同一著者の執筆した書籍を代替図書として寄付し配架された(これら4冊のうち1冊については、8月30日に、除籍・廃棄された図書と同一の書籍が寄付され配架された)。
8月13日、除籍・廃棄された書籍の著者たち8人(井沢元彦、岡崎久彦、坂本順子[亡坂本多加雄訴訟継承人]、高橋史朗、谷沢永一、西尾幹二、長谷川慶太郎、藤岡信勝)と「新しい歴史教科書をつくる会」が原告となり、D司書と船橋市を相手取り、著書が理由なく廃棄されたことで思想良心の自由、表現の自由、名誉権、名誉感情、著作者人格権などが侵害されたとして、総額2700万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。また、D司書については、藤岡信勝氏ら六人が、背任、器物損壊などの罪で千葉地検に告発状を提出した。
そして上述のごとく判決が言い渡され、原告らの請求は棄却され、原告弁護団は即座に控訴する意向を表明した。以上がこれまでの経緯である。


・除籍内容

西図書館では、平成11年度に6968冊、平成12年度に6288冊、平成13年度に4787冊の書籍が除籍されている。平成13年8月には541冊の書籍(一般図書170冊、児童図書17冊、雑誌354冊)が除籍・廃棄されたが、一般図書のうち63冊、児童図書および雑誌のすべては、船橋市の図書館資料除籍基準(行方不明、紛失、破損、保存年限経過、等)に合致したものであった。しかし、残り107冊の図書については、船橋市教育委員会の調査や本件裁判における事実認定によって、8月10日(2冊)、14日(21冊)、15日(25冊)、16日(19冊)、25日(27冊)、26日(13冊)と6日間にわたって、除籍基準に基づかずにD司書の独断で除籍されたことが明らかになった。

以下にD司書によって除籍された書籍107冊のうち、歴史認識や思想に関係するものを示す。


新しい歴史教科書を「つくる会」という運動がある 〔新しい歴史教科書をつくる会〕扶桑社
戦後沖縄史 〔新崎盛暉〕日本評論社
そうだったのか! 現代史〔池上彰〕ホーム社
朝日新聞の正義 〔井沢元彦/小林よしのり〕小学館

国家は誰が守るのか 〔岡崎久彦〕徳間書店
自分の国を愛するということ 〔岡崎久彦〕海竜社
日米同盟と日本の戦略 〔岡崎久彦ほか〕PHP研究所

日本は二十一世紀の勝者たりえるか 〔日下公人ほか〕太陽企画出版
誇りなくば国立たず 〔日下公人ほか〕同
僕らはそう考えない 〔日下公人/渡部昇一〕同

国民のための戦争と平和の法 〔小室直樹/色摩力夫〕総合法令出版
大東亜戦争ここに甦る 〔小室直樹〕クレスト社
日本人のための経済原論 〔小室直樹〕東洋経済新報社
三島由紀夫が復活する 〔小室直樹〕毎日コミュニケーションズ
歴史に観る日本の行く末 〔小室直樹〕青春出版社

知識人 〔坂本多和雄〕読売新聞社
歴史教育を考える 〔坂本多和雄〕PHP研究所PHP新書
街道をゆく6・8・9・10・11・12.13.14・15.18・20・22 〔司馬遼太郎〕朝日新聞社
教科書検定 〔高橋史郎〕中央公論社

男冥利 〔谷沢永一〕PHP研究所
人生行路は人間学 〔谷沢永一/渡部昇一〕同
〔聖書〕で人生修養 〔谷沢永一/渡部昇一〕致知出版社
読書人の悦楽 〔谷沢永一〕PHP研究所
人間通の勘どころ 〔谷沢永一〕同
拝啓韓国、中国、ロシア、アメリカ合衆国 〔谷沢永一/渡部昇一〕光文社
人の世を見さだめる 〔谷沢永一〕PHP研究所

教育と自由 〔西尾幹二〕新潮社
行為する思索 〔西尾幹二〕中央公論社
思想の出現一対談集一 〔西尾幹二〕東洋経済新報社
情熱を喪った光景 〔西尾幹二〕河出書房新社
人生の価値について 〔西尾幹二〕新潮社新潮選書
全体主義の呪い 〔西尾幹二〕同
智恵の凋落 〔西尾幹二〕福武書店
地球日本史3 〔西尾幹二責任編集〕産経新聞ニュースサービス
沈黙する歴史 〔西尾幹二〕徳間書店

大衆論−対談− 〔富岡多恵子/西部邁〕草思社
学者この喜劇的なるもの 〔西部邁〕草思社
恐慌前夜の独り言 〔西部邁〕新潮社
虚無の構造 〔西部邁〕飛鳥新社
「国柄」の思想 〔西部邁〕徳間書店
寓楡としての人生 〔西部邁〕同
経済倫理学序説 〔西部邁〕中央公論社
現在への証言 〔西部邁〕廣済堂出版
幻像の保守へ 〔西部邁〕文蓼春秋
国民の道徳 〔西部邁/新しい教科書をつくる会編〕産経新聞ニュースサービス
国家と歴史 〔西部邁〕秀明出版会発言者双書
サンチョ・キホーテの眼 〔西部邁〕文藝春秋
思想史の相貌 〔西部邁〕世界文化社
思想の英雄たち 〔西部邁〕文藝春秋
新・学問論 〔西部邁〕講談社現代新書
[成熟]とは何か 〔西部邁〕講談社
世人に言上したきことあり 〔西部邁〕新潮社
ソシオ・エコノミックス 〔西部邁〕中央公論社
闘論息子の教育 〔西部邁/三田誠広〕プレジデント社
なぜ「日本売り」は起きたのか 〔西部邁〕PHP研究所
西部邁の論争の手引き 〔西部邁〕日刊工業新聞社
西部邁の論争ふたたび 〔西部邁〕同
ニヒリズムを超えて 〔西部邁〕日本文芸社
人間論 〔西部邁〕同
破壊主義者の群れ 〔西部邁〕PHP研究所
剥がされた仮面 〔西部邁〕文藝春秋
白昼への意志 〔西部邁〕中央公論社
批評する精神続・3・4 〔西部邁〕PHP研究所
ビジネス文明批判 〔西部邁/長崎浩〕作品社
福澤諭吉 〔西部邁〕文藝春秋
マスコミ亡国論 〔西部邁〕光文社
歴史感覚 〔西部邁〕PHP研究所
私の憲法論 〔西部邁〕徳間書店

情報化社会の本当の読み方 〔長谷川慶太郎〕徳間書店
情報力 〔長谷川慶太郎〕サンマーク出版
世紀末大転換 〔長谷川慶太郎〕徳間書店
成功の記憶を捨てろ 〔長谷川慶太郎〕東洋経済新報社
盛衰の岐路 〔長谷川慶太郎/渡部昇一〕PHP研究所
中国発の危機と日本 〔長谷川慶太郎/岡崎久彦〕徳間書店
デフレ時代の新投資戦略 〔長谷川慶太郎ほか〕ビジネス社
長谷川慶太郎のビッグバンで日本はこう変わる 〔長谷川慶太郎〕徳間書店

空白の終焉へ 〔福田和也〕PHP研究所
喧嘩の火だね 〔福田和也〕新潮社
この国の仇 〔福田和也〕光文社
『作家の値うち』の使い方 〔福田和也〕飛鳥新社
魂の昭和史 〔福田和也〕PHP研究所
なぜ日本人はかくも幼稚になったのか 〔福田和也〕角川春樹事務所
続・なぜ日本人はかくも幼稚になったのか 〔福田和也〕同
なぜ日本人はかくも幼稚になったのか3 〔福田和也〕同
罰あたりパラダイス 〔福田和也〕扶桑桂
平成ゾンビ集 〔福田和也〕角川春樹事務所
余は如何にしてナショナリストとなりし乎 〔福田和也〕光文社
真剣勝負 〔前田日明/福田和也〕草思社

日本への遺言 〔福田恆存/中村保男編〕文藝春秋
教科書が教えない歴史1 〔藤岡信勝/自由主義史観研究会〕産経新聞ニュースサービス

アジア共用圏の時代 〔邱永漢/渡部界一〕PHP研究所
かくて歴史は始まる 〔渡部昇一〕クレスト社
国思う故にわれあり 〔渡部昇一〕徳間書店
国益の立場から 〔渡部昇一〕同
新世紀への英知 〔渡部昇一〕/谷沢永一〕祥伝社
自分の壁を破る人破れない人 〔渡部昇一〕三笠童旦房
そろそろ憲法を変えてみようか 〔渡部昇一/小林節〕数知出版社
起て!日本 〔渡部昇一/加瀬英明〕高木書房
父は子に何ができるか 〔渡部昇一/屋山太郎〕PHP研究所
読書有訓 〔渡部昇一〕到知出版社
何が日本をおかしくしたのか 〔渡部昇一〕講談社
日本人の気概 〔渡部昇一〕PHP研究所
日本の生き筋 〔渡部昇一〕数知出版社
日本の騎慢(おごり)韓国の傲慢(たかぶり) 〔渡部昇一/呉善花〕徳間書店
まさしく歴史は繰りかえす 〔渡部昇一〕クレスト社
歴史の鉄則 〔渡部昇一〕PHP研究所


また、『i日録』の「平成15年9月28日[焚書事件の事後経過](一) /:西尾幹二」によると、蔵書・除籍数一覧は以下のごとくである。。
     
     氏 名   蔵書数  除籍数
     西部 邁  45   44
     渡部昇一  79   37
     西尾幹二  24   12
     福田和也  38   13
     高橋史朗   3    1
     福田恆存  24    1
     小室直樹  26   11
     長谷川慶太郎56   14
     岡崎久彦  19    5
     坂本多加雄  8    2
     日下公人  34   11
     谷沢永一 102   17
     つくる会   3    1
     藤岡信勝   4    3
     井沢元彦  54    4   
       合計蔵書519冊、除籍数176冊



・事件の背景

平成13年8月といえば、中学校の歴史教科書の採択をめぐって、「新しい歴史教科書」(扶桑社)に対する左翼勢力による攻撃が一段と激しさを増していた頃である。教育委員に対する電話やファクスによる攻勢などの他、教育委員会の開催日には、かり出された自称市民の活動家たちが人の手の輪をつくり、会場になだれこみ、怒声をあげ、自分の思う通りにならない教育委員を誹謗するチラシを駅頭や戸口でくばり、ついにはカミソリの刃を教育委員の自宅に送り届ける異常行動にまで及んだ。さらには、いったん扶桑社版が多数決で採択された栃木県下都賀地区では(後に、異例の採択取り消しがなされた)、教育委員長宅に「(委員長が宮司を務める)神社が燃えていないかい」「九十歳のおばあちゃん、つえをついて歩いているけど階段から落ちなければいいね」などという脅迫電話まであった。さらには、8月7日深夜に「新しい歴史教科書をつくる会」の本部ビルに対して放火テロがしかけられており、10日には「東京都教委による都立養護学校への歴史公民教科書の強行採択に対する革命的報復である」との犯行声明が「革命軍」を名乗って東京都内の報道機関に届いている(警視庁公安部は、過激派の革労協反主流派の声明とみている)。
中核派は、機関紙『前進』平成13年4月号で、扶桑社教科書について「検定合格を弾劾し、東京・杉並を天王山としてあらゆる手段をもって採択阻止するまで闘い抜こう」などと主張し、杉並区で扶桑社教科書が採択されなかったことについて、『前進』8月号は、「地域住民と労働者、そしてアジア在日人民、アジア人民との共同の闘いが勝利を切り開いた」と“戦果”を強調し、「杉並、国立、栃木の勝利を全国に押し広げ、すべての地区で採択を阻もう」などと激を飛ばしていた。栃木県下都賀地区で扶桑社教科書の採択撤回運動を行った「とめよう戦争への道! 百万人署名運動」は、中核派が主導して結成された組織であった。
東京・杉並に限らず日本全国で、また中核派に限らず総ての左翼勢力が、まさに常軌を逸した「あらゆる手段をもって採択阻止」に奔走していたのが平成13年8月頃だったのであり、それに呼応するかのように千葉県で「船橋市西図書館焚書事件」が生じたのである。

理由なく廃棄されたこれらの書籍の著者は上記のとおり、西部邁氏の43冊を筆頭に、渡部昇一氏、谷沢永一氏、長谷川慶太郎氏、福田和也氏、西尾幹二氏、小室直樹氏、日下公人氏、岡崎久彦、井沢元彦氏、藤岡信勝氏、坂本多加雄氏、高橋史朗氏、福田恆存氏、「新しい歴史教科書をつくる会」で、「新しい歴史教科書をつくる会」関係者や右派・保守が狙い打ちにされたことが明白である。

このD司書、船橋市教育委員会から事情聴取を受けた際、当初は除籍・廃棄について否定していたのであるが、数度の事情聴取を受け、ようやく除籍したことを認めた。次に、「結露による汚破損があった」という理由で除籍を行ったと弁解していた。本に結露して水滴がつくと、本と本の表紙やページがくっつき使いものにならなくなってしまうことがあるが、D司書はそう主張していたわけである。しかし、その主張も崩れると、今度は「なぜやったのかは自分でも説明ができず、わからない」と言い出した。しかしながら、「思想や信条でやったことではない」と付け加えてもいた。D司書は、自身でコンピュータを操作してこれら書籍の除籍を処理し(除籍・廃棄する場合はこの手続きが必要)、また、主にパート職員に指示して、図書を書架からとってこさせたり、図書の処分を行わせていたのであった。
ちなみに、理由なく廃棄された107冊中、図書館全体の貸し出し平均冊数(1.7回)を上回るものが66冊含まれていた。また、船橋市の図書館では、全館で1冊しかない本については(船橋市には中央、東、西、北の計4つの市立図書館が設置されてる)、管理端末機のコンピュータ画面上に「最終本」というメッセージが表示されて誤って廃棄されないよう注意を促すシステムとなっているのであるが、17冊が西図書館のみにある「最終本」であった。これらの事情が一切無視されて、D司書によって107冊の本が除籍・廃棄されたわけである。


ご感想は{うぇっぶ庵}や {ふぉぅらむ}へ。

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Re: 船橋市西図書館焚書事件

 投稿者:北の狼 投稿日:2003/11/03(Mon) 14:26 No.18

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/題: 「船橋市西図書館焚書事件」(2)  :名前: 北の狼 /2003年10月10日 21時54分


・日本図書館協会


今回の事件の重要性や意義を理解するため、以下に日本図書館協会と日本図書館問題研究会の二つ団体から出された見解を紹介する。

日本図書館協会(HPはhttp://www.jla.or.jp/)は図書館の活動を支える社団法人である。設立は昭和25年で、東京都中央区新川に立派な本部ビルを構え、現在では個人・施設を合わせて約9000の会員を擁する日本最大の図書館組織である。約款には「この法人は,全国の公共図書館,大学図書館,学校図書館,専門図書館,公民館図書部,その他の読書施設及びこれらに関係ある者の連絡,提携のもとに,図書館事業の進歩発展を図り,わが国文化の進展に寄与することを目的とする」(第3条)とあり、事業内容は「図書館の管理,運用,技術に関する調査研究並びにその促進。図書館職員の教育,待遇向上,厚生。図書の推薦,選定及びその普及。読書運動の推進及び指導。機関誌及び読書・図書館に関する図書・資料の編集及び刊行。図書館用品の規格化及びその普及。図書館関係資料室及びモデルライブラリーの設置運営。図書館の設立及び経営の指導。各国の図書館団体との連絡。その他目的を達成するに必要な事項」(第4条)と多岐にわたる。

その日本図書館協会は1954年に「図書館の自由に関する宣言」(「自由宣言」)を採択し(1979年に改訂)、もって図書館の任務や目標の規範としているが、前文には以下のようにある。

”図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。・・・・知る自由は、表現の送り手に対して保障されるべき自由と表裏一体をなすものであり、知る自由の保障があってこそ表現の自由は成立する。知る自由は、また、思想・良心の自由をはじめとして、いっさいの基本的人権と密接にかかわり、それらの保障を実現するための基礎的な要件である。それは、憲法が示すように、国民の不断の努力によって保持されなければならない。すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。この権利を社会的に保障することは、すなわち知る自由を保障することである。図書館は、まさにこのことに責任を負う機関である。”

さらに「自由宣言」の第1の2には以下のようにある。

”(2) 著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
(3) 図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。”

同じく、第2の1には以下のようにある。

”国民の知る自由を保障するため、すべての図書館資料は、原則として国民の自由な利用に供されるべきである。図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない。”

このように、「自由宣言」には実践目標が掲げられているわけである。
また、図書館協会は1980年に「図書館員の倫理綱領」という図書館職員の規範を決議しているが、その「資料に関する責任」には以下のようにある。

”第4 図書館員は図書館の自由を守り、資料 の収集、保存および提供につとめる。 図書館員は、専門的知識と的確な判断とに基づいて資料を収集し、組織し、保存し、積極的に提供する。そのためには、資料の収集・提供の自由を侵すいかなる圧力・検閲をも受け入れてはならないし、個人的な関心や好みによる資料の収集・提供をしてはならない。 図書館員は、私的報酬や個人的利益を求めて、資料の収集・提供を行ってはならない。”

そして、この倫理綱領の意義を以下のように定めている。

”この綱領は、われわれの図書館員としての自覚の上に成立する。したがってその自覚以外にはいかなる拘束力もない。しかしながら、これを公表することによって、われわれの共通の目的と努力、さらにひとつの職業集団としての判断と行動とを社会に誓約することになる。その結果、われわれはまず図書館に大きな期待を持つ人びとから、ついで社会全体からのきびしい批判に自らをさらすことになる。この批判の下での努力こそが、図書館員という職業集団への信頼を生む。図書館員の専門性は、この信頼によってまず利用者に支えられ、さらに司書職制度という形で確認され、充実されねばならない。そしてその専門性がもたらす図書館奉仕の向上は、すべて社会に還元される。そうした方向へわれわれ図書館員全体が進む第一歩がこの倫理綱領の制定である。”

日本図書館協会は、「船橋市西図書館焚書事件」が発覚した際に独自の調査を行い2002年6月5日に「船橋市西図書館の蔵書廃棄問題について」と題する見解を表明しているが、それには以下のようにある。

===========
・・・・・・・・
私たちは、自由宣言第1「資料収集の自由」の第2項において「多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する」として、社会で問題として取り上げられることがらこそ、図書館が資料・情報を収集して国民の関心に応えることの重要性を確認しています。そして自由宣言第2「資料提供の自由」において、「図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない」として、寛容と多様性の原理に基づく図書館は、排除の論理とは無縁であることを表明しています。
広く社会の論議を呼び注目を集めた歴史観に関連した資料を提供することは、図書館への社会の期待に応えるものであり、図書館の責務です。船橋市西図書館が、これらの蔵書を廃棄したことは、自由宣言の思想に反し、これを踏みにじるものと言わざるをえません。
==========

D司書をインターネットで検索すると、「子どもの本の出会いの会」に所属しており、『子どもの本の出会いの会通信』2001年12月25日号では、日本図書館協会青少年委員会の肩書きが付されている。日本図書館協会の会員であるD司書は、上の見解をどういう気持ちで読んだのであろうか。


また、北海道から沖縄まで、主として公共図書館員からなる1600人の会員を擁し、図書館の問題について研究している図書館問題研究会(HPはhttp://www.jca.apc.org/tomonken/)というグループがあるが、彼らによるこの問題の見解文を以下に提示しておく。


===================

船橋市西図書館の蔵書廃棄問題について(見解)

                     図書館問題研究会常任委員会

・・・・・・・・・
3 今回の廃棄処理の問題点

 今回の廃棄については、当該の司書のみが関与したことなのか、図書館全体の問題なのか、ミスであるのかどうかといった事実でいまだ不明な点があるが、少なくとも次の問題点がある。

(1)廃棄基準に適合しない資料が多数あったことは、事実である。たとえ、ミスであるにしても、図書館資料の廃棄は慎重に行わなければならないことであり、それ自体、責任を問われる問題である。

(2)もし、何らかの政治的・思想的意図があったとすれば、「図書館の自由の宣言」の「第2 図書館は資料提供の自由を有する」の1に述べられている「図書館は、正当な理由がないかぎり、ある種の資料を特別扱いしたり、資料の内容に手を加えたり、書架から撤去したり、廃棄したりはしない」という文言に明らかに抵触する。また、同宣言の資料の収集について述べたところであるが、「第1 図書館は資料収集の自由を有する」「2 図書館は、自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う」「(2)著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない」に本質的に抵触するものである。極めて重大な問題であり、司書や図書館全体に対する信頼失墜行為であり、その責任は大きい。

(3)仮に、政治的・思想的な意図がなかったにせよ、実際に廃棄対象になった図書の内訳を見ると、特定の著者が多く、かつ、廃棄基準に沿っていないものがあり、極めて不見識な行為と言わざるを得ない。

(4)当該の司書が実際にどの程度、関与していたのか、今後の調査を待たなければならない部分があるが、司書の資格を有している職員が、このように問題のある廃棄にかかわっていたとすると、その責任は大変重いと言わざるを得ない。関与したとされる司書は、専門家としての説明を公式に行う責務がある。

(5)図書館長は教育機関として決済を行う。図書館長のチェックが入っていなかったこと自体が大きな問題である。司書の資格を持っていなかったにせよ、図書館長がチェックを行っていなかったことの責任は重い。

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Re: 船橋市西図書館焚書事件

 投稿者:北の狼 投稿日:2003/11/03(Mon) 14:27 No.19

/ <HOME>


/題: 「船橋市西図書館焚書事件」(3)  :名前: 北の狼 /2003年10月17日 21時39分


・「思想や信条でやったことではない」

「焚書」の動機については、関係者は終始「なぜやったのかは自分でも説明ができず、わからない。思想や信条でやったことではない」、「思想的な背景は全くない」(D司書)、「結果として誤解を与えかねないが、担筆者に事情を聴いた結果、政治的、思想的な理由はなかったし、あってはならないことだと考えている」(西図書館館長)との主張を貫いている。
もし、思想や信条に基づいて前記著書を除籍したとすれば、「自由宣言」に明確に反することになり、まさに「自由宣言の思想に反し、これを踏みにじるもの」(日本図書館協会)であり、「極めて重大な問題であり、司書や図書館全体に対する信頼失墜行為であり、その責任は大きい」(図書館問題研究会)ことになる。船橋市教育委員会は、D司書や館長の「思想や信条でやったことではない」との主張を容認して、減給10分の1(6か月)の“寛大”な懲戒処分としたが、そうでなければ免職も免れえないところであった。

では、本当に「思想や信条でやったことではない」のであろうか。裁判の判決では、以下のような事実認定がなされている。

”・・・・被告土橋は、本件除籍等の対象となった西部邁氏らの著書について批判的な態度を示していたほか、日頃から西図書館における購入図書の選択(選書)に偏りがあると主張していたことが窺われるのであって、原告つくる会及びその賛同者に対して否定的評価を抱いていたことや、他の職員に対して原告らの著書を書棚から抜いてくるように指示して手元に集めた上、自分でこれらの書籍を除籍したこと、また、被告船橋市による事情聴取に対して本件除籍等を行ったことを自認して、その旨の上申書を提出していることなどが認められる他、被告土橋に対して本件除籍等を行うように指示した職員は見あたらないなどの事実に照らし考えれば、本件除籍等は、原告つくる会らを嫌悪していた被告土橋が単独で行ったものと認めるのが相当である。”

さらに、以下のように、除籍が計画的に行われたと認定されている。

”もっとも、本件訴訟において、被告土橋は、自分が本件除籍等をしたのか否か記憶がないと主張して、実質的にこれを争う姿勢を示している。しかし、上記認定のところからも明らかなように、本件除籍等の対象となった書籍は1冊や2冊ではなく、合計107冊にも上るものであるほか、被告土橋自身で1冊1冊その内容を確認し、自分の独断で内容的に不適切と考えたものだけを除籍の対象としたと推認されること、しかも、別の図書館の共同書庫に保管されていたものをわざわざ取り寄せ、数日にわたってパソコンを操作して蔵書リストから当該書籍を除籍した上で廃棄処分にしていることなどの事実にかんがみれば、本件除籍等は、決して一時の偶発的な行為ではなく、周到な準備をした上で計画的に実行された行為であることが明らかであり、単にパソコンの操作ミスなどで誤って除籍されたようなものではないのであるから、自分が本件除籍等をしたか否か記憶がないなどという被告土橋の弁解は、到底採用することができない。”

上のように裁判官が判断した根拠は、平成14年4月13日から同月23日にわたって船橋市教育委員会が関係者から聴取して作成した「船橋市によるD事件事情聴取記録」(原告側提出証拠「甲第13号証」)にある。それには、以下のような生々しい証言が記されている。

S.M.:「(D司書が)西部、福田の本が偏っているので抜こうと思っていると私に言った。」

O.N.:「D司書は、東図書館のIに話しをしていたことがある。内容は、西部氏・渡部氏等の著書が沢山あるという話で、D司書から『東図書館にも多いし何とかしたら』と言われたとのことで、Iは、東図書館の本のことまでとやかく言われ、少し憤慨していた。」

Y.K.:「D司書は色々読んで、今回該当する著者をよく知っている。」

N.T.:「当時、D司書が除籍(渡部昇一分)をやっていたように覚えている。D司書同様に私もこの人が嫌いなので、D司書と『こんな本ばかり書いてねェ』と話していたことを覚えている。」

S.T.:「新しい歴史教科書をつくる会という渡部昇一・谷沢永一の本が問題があるので、とりあえず100番台と300番台の書棚から抜いてきてくださいとD司書に言われて抜いてきたことがあった。そこで本の内容を調べて、戻す本もあったが10冊や20冊ではなかった。夏の土曜日で、暑かったのを覚えている。」

つまり、D司書は、著者たちの思想や信条に嫌悪感を抱いて、つまり思想や信条を理由として除籍を行ったことは明白なのである。


ご感想は{うぇっぶ庵}や {ふぉぅらむ}へ。

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Re: 船橋市西図書館焚書事件

 投稿者:北の狼 投稿日:2003/11/03(Mon) 14:27 No.20

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/題: 「船橋市西図書館焚書事件」(終)  :名前: 北の狼 /2003年10月17日 22時46分


この裁判における原告側主張のポイントは、

 ・思想や信条を背景として、
 ・「つくる会」が『新しい歴史教科書』をめぐって採択戦を戦っていた時に、
 ・自らの思想・信条と異なる意見の書かれた「つくる会」関係の著書が
  図書館利用者の目に触れることのないようにするため、
 ・船橋市図書館資料除籍基準に該当しないにもかかわらず、
 ・密かにこれらの書籍を除籍して廃棄した、

ということである。
そして、この事実認定については、裁判官が、原告側の主張をほぼ100%認めたのであるから、原告にとってほぼ100%の勝利といってよい。
D司書や西図書館館長らは、思想や信条との除籍との関連を否定してたが、その主張は、判決によって完璧に崩れ去った。船橋市教育委員会は、D司書を、減給10分の1(6か月)の懲戒処分としているが、廃棄理由については、「司書は『どうしてやったのか説明がつかない』と話しており、理由の断定はできなかった」として、つまり、「思想や信条でやったことではない」というD司書の「嘘」を真に受けてこの処分を下している。しかし、その前提も、裁判による事実認定によって崩れたのである。
船橋市教育委員会は、D司書が、まさに「その思想内容や表現内容を理由として、それらの著書を排除した」という事実、そのことに関して「嘘」をついていたという事実、さらに、そのことに対する反省の色がまったくみられないという事実、この三重の事実を勘案して、D司書に対して今からでももっと重い処分をくだすべきではなかろうか。引いては西図書館館長の責任も問われるべきであろう。




ところで、今回の事件にみられるような偏向は、船橋市西図書館に限った話であろうか。「焚書事件」の一番の被害者であった西部邁氏が以下のように述懐している(産経新聞 平成14年4月12日)。

“  予測していた
図書館の大半には強かれ弱かれ左翼人士がいる。教科書問題のように激しい論争が起きると私の本を廃棄するというのは左翼的行動で驚くにはあたらない。この国の言論は暗黒時代に入っており、このことは予想していた。言論といえども、イデオロギー闘争からいわゆる焚書坑儒が起こるのは歴史の常だ。これからもさまざまな所で同様のことがいいように進むだろうが、本を焼いたならせめて理由ぐらいは明確に示してほしい。“

また、原告のひとりである西尾幹二氏は、裁判所に提出した陳述書のなかで以下のように述べている。

“ しかし、本件の背後に、公立図書館の昔からの不可解な現実がある。すべての公立図書館とはいわないが、私の知る限り、公立図書館で『世界』は棚にあっても、『諸君!』や『正論』を置いていないという偏見に基づくケースをよく耳にする。これは一度、公平ななんらかの機関が全国的一斉調査をする必要がある。しかし、結果は苦労しないでも手に入る。『諸君!』や『正論』を置いていない公立図書館は私自身も至る処で出会ったし、そういう噂は無数に聞くからである。

 これは昭和20年につくられた、一国平和主義(左)が正統派、国益現実主義(右)が異端派という、もはや通用しない、言論界では実際には消えてしまった古い習慣的思考に、とりわけ公立図書館系列の官僚がとらわれていることに原因がある。図書館に本を読みにいく人の現実の必要はすでに変わっているのに、図書館の司書だけが変わらない。いまだに「戦後」という幻想の一時代のイドラに捉われているからである。当然のことだが、職員の教育や指導が公正に行われているかどうか疑わしい。

 聞く処によると、この度の被告は、図書館利用者の一人から「つくる会関係の本はどうなっているか」という質問を受けたそうである。そのときの対話の内容は私の耳には達していない。それが政治的威嚇であったか、忠告であったか、注文であったかは知る由もない。また、まとめて処分せよという要求であったか、依頼であったか、あるいは単なる情報の求めであったか――なに一つわれわれには分からない。しかしこれが、たとえ何であれ、被告が結果として驚くべき犯罪をなしたことは明らかである。国家の民主主義の根幹に関わる重大犯罪を冒したことは疑いようがない。”

西部氏や西尾氏が述べているように、図書館運営に左翼的傾向が強いとしたら、これは公正を旨とすべき図書館にとって由々しき事態である。日本図書館協会の「自由宣言」は、公的権力などの外部からの図書館への介入行為を排除することを目的とするものであるが、その自由の前提をなすのが図書館運営における思想や信条からの中立、すなわち公正に他ならないのである。それはそうであろう。もしも、思想や信条の偏りのもと自由を確保するというのであれば、図書館は一方の政治勢力による独占的なイデオロギー装置と化すことを意味し、これでは図書館に対する信頼が根本から揺らいでしまうのである。しかし、実態として、そのような傾向を否定することができないというのが、西部氏や西尾氏の述懐の意味するところである。

ちなみに、図書館に左翼的傾向が強いか、ネットによる蔵書検索から調べてみた。
船橋市の図書館が対象で、キーワードは「南京」である。そして「南京事件」に関係が無い本を除外したら、以下のような結果となった。

大虐殺肯定派(藤原彰、洞富雄、笠原十九司、吉田裕、本田勝一、等):約50冊
中間派(秦郁彦、奥宮正武):3冊
まぼろし派(鈴木明、田中正明、阿羅健一ら):7冊

つまり、船橋市の図書館(中央、西、北、東、移動と公民館)では、大虐殺肯定派(左翼)とそれ以外の蔵書の比率はおおよそ5対1なのである。有名どころでは、板倉由明氏の著書(『本当はこうだった南京事件』)がヒットしなかったが、これも相当に問題があるといえる。つまり、明らかに左に偏向しているのである。ちなみに、私の近所の市立図書館を検索してみたところ、50対23であったから、まだマシといえそうである。
これが「慰安婦」で検索しみると、もっと酷い。トータル87冊のうち、「左翼本」以外といえば、『慰安婦と戦場の性』(秦郁彦)か『検証従軍慰安婦−従軍慰安婦問題入門ー』(上杉千年)ぐらいしか見当たらない。これには、「左翼本」以外で発刊されているものが少ないという事情もあるであろうが、それにしても87対2というのは偏り過ぎであろう。

もっと疑問に思うことは、船橋市図書館では、『南京大虐殺否定論13のウソ』(南京事件調査研究会)という「左翼本」をそろえていながら、その本で批判されている東中野氏の『南京虐殺の徹底検証』などが蔵書にないということである。松村俊夫氏の『「南京虐殺」への大疑問』もない。
同様のことは、『ゴーマニズム宣言』(小林よしのり)についても言える。『脱ゴーマニズム宣言 −小林よしのりの「慰安婦」問題』(上杉聡)という「左翼本」が新装改訂版を含めて2冊ともそなえてある一方で、「ゴーマニズム」、「小林よしのり」で検索しても小林よしのり氏の本は以下のものしかヒットしない。

『ゴーマニズム宣言差別論スペシャル』 小林よしのり 大阪 解放出版社 1995
『知のハルマゲドン−ゴー宣・サリン・パープリン−』 小林よしのり 徳間書店 199
『ゴーマニズム思想講座 正義・戦争・国家論−自分と社会をつなぐ回路−』 竹田青嗣 径書房 1997
『朝日新聞の正義』 井沢元彦 小学館 199
『新・ゴーマニズム宣言スペシャル戦争論』 小林よしのり 幻冬舎 1998.6
『戦争論争戦−小林よしのりvs.田原総一朗』 小林よしのり ぶんか社 1999.2
『国家と戦争−徹底討議』 小林よしのり 飛鳥新社 1999.6
『「個と公」論−新ゴーマニズム宣言special』 小林よしのり 幻冬舎 2000.5
『愛国対論−「サヨク」に一撃、「ホシュ」に一閃 』 渡部昇一 PHP研究所 2002.6
『李登輝学校の教え』 李登輝 小学館 2001.8
『反米という作法』 小林よしのり 小学館 2002.9

これでは、「慰安婦」問題に関して小林よしのり氏が何を言い、どういう主張をしているのか、船橋市の市立図書館の蔵書では確認できないことになる。『脱ゴーマニズム宣言 −小林よしのりの「慰安婦」問題』という「左翼本」をそなえておいて、その本が直接の批判対象としている『ゴーマニズム宣言』をそなえておかないというのは、片手落ちというものであろう。
これらの事実に接してみると、西部氏や西尾氏が危惧するような、図書館の左偏向が根拠のないものとは決して思えないのである。

全国には「公共図書館」が約2700、「大学図書館」が約1600ある。これに大学以外の学校図書館等を加えると、相当な数にのぼるであろう。つまり、これらの図書館が、ある本を一冊づず購入したとしたら、決してバカにできない量になるのである。
「左翼本」といえば、発行社として青木書店や大月書店が即座に思い浮かぶが、これらの書店は大量に売れるとも思えない「左翼本」を、どうしてああも次から次へと発刊できるのであろうか、とちょっと疑問に思えるが、左翼人士が各図書館の枢要な位置にいて大きな決定権を握っていれば、図書館がその受け皿として機能している可能性はある。全国で「公共図書館」と「大学図書館」とで4000以上あるから、この両者のみでも、数千冊ぐらいなら、さばこうと思えば容易にさばけることになる。
ほとんどの図書館は公費で賄われているか、補助をうけている。つまり、我々の税金でもって図書が購入されているが、恣意的な購入方針でもって左翼の延命の一助になっているとしたら、図書館の「自由」とならんで、このことも決して等閑視できる問題ではない。


ご感想は{うぇっぶ庵}や {ふぉぅらむ}へ。

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