公衆衛生(中島分)
1 高齢者に対する医療制度の歴史
 わが国の高齢者の保健・医療は、老人保健制度によって支えられている。老人保健制度は、1983年2月から施行されている老人保健法に基づく制度である。 老人保健法の制定前は、高齢者の保健・医療は、医療保険制度と老人福祉制度の2つの制度によって支えられてきた。1961年の国民健康保険の全国実施により「国民皆保険」が成立した。これにより、誰もが低い自己負担で医療機関にかかることができるようになった。1973年からは老人福祉法が改正され、老人医療費支給制度が創設され、老人医療費の自己負担の無料化が実現した。しかし、このことが過剰受診や重複受診を引き起こし、老人医療費の急増をもたらした。70年代後半から老人医療制度の見直しが大きな政策課題となり、その結果、老人医療費支給制度がもたらした問題点の解決と、急性疾患から生活習慣病の増大という疾病構造の変化に対応した健康づくりを進める観点から、老人保健制度が創設された。  老人保健制度の創設後、国民医療費の増大、とくに老人医療費の増大に伴う医療保険制度の安定化のために、老人保健制度や医療保険制度に対して、種々の改正が行われてきている。最近では、介護問題や病院への社会的入院問題を解決するために介護保険制度が創設され、2000年4月から実施されている。90年代後半から、医療保険制度の抜本的見直しが大きな政策課題となり、今日に至っている。

2 老人保健制度の現状
 老人保健制度は、@健康への自覚や適正な受診を促すことや、医療費負担の公平化という観点から、老人医療費に対して患者に一部負担を求めること、A国や地方公共団体、各医療保険者が共同で老人医療費を拠出することにより、全国民で老人医療費を公平に負担すること、B40歳から疾病予防や健康づくりを図るための老人保健事業を展開すること、を目的に制定された。  老人保健制度は、老人医療事業と老人保健制度の2つの仕組みからできている。
(1)老人医療事業  老人医療事業の対象者は、基本的に70歳以上の高齢者で、その老人医療費の負担方法については、一部負担を除いた部分に対して、公費30%(国20%、都道府県5%、市町村5%)と、老人医療費拠出金70%(医療保険の保険者からの拠出金)で賄われてきた。一部負担については、制度当初は、入院1日300円、外来1か月400円という定額制で始められ、徐々に引き上げられてきた。  老人医療費拠出金制度は、老人保健制度に特有の制度であり、各医療保険者は、実際に加入する高齢者の割合を問わずに、全体平均と同じ割合の高齢者の加入しているとみなして算定された拠出金を支出し、これを老人医療費の負担に充当するという仕組みである。各医療保険者による老人医療費の共同負担という性格を持っている。70歳以上の者の加入割合が全平均よりも低い被用者保険の拠出金の規模は、その保険の実際の老人医療費よりも大きくなり、一方で、現役世代が退職後加入するため、高齢者の加入割合が高く、そのため老人医療費の負担が大きくなる国民健康保険の拠出金の規模は実際の老人医療費よりも小さくなる。このように、老人医療費拠出金制度は、国保財政の負担を軽くするという効果がある。  しかし、医療保険者から拠出金負担が年々重くなっているという不満が出されてきたことなどから、2002年の法改正により、受給対象者は基本的に75歳以上に引き上げられた(経過措置あり)。公費負担の割合も30%から50%(国1/3、都道府県1/12、市町村1/12)にするために、2007年までの5年間に1年ごとに4%ずつ引き上げることとされた。また、一部負担についても、2002年10月からは、定率1割負担(所得が高い場合には2割負担)となっている。
(2)老人保健事業  老人保健事業は、壮年期(40歳以上)からの健康づくりと、生活習慣病の予防や早期発見を図ることにより、高齢期における健康維持や、医療や介護を要する状態の予防を目的としている。具体的には、市町村が実施主体として、健康手帳の交付や、健康教育、健康相談、健康診査、機能訓練及び訪問指導の事業がある。保健事業に要する費用は、国、都道府県及び市町村が各3分の1を負担する。厚生労働省では、5年ごとに保健事業の全体計画を作成し、疾病状況の変化に対応した保健事業を実施するようにしており、2004年度までは「保健事業第4次計画」に沿って各種事業が実施されている。  なお、厚生労働省では、生活習慣病の予防対策を推進するため、2000年3月には「21世紀における国民健康づくり(健康日本21)」を定め、全国民の健康づくり活動が進めている。

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