[秋桜]
花をちぎり、湖に浮かべる。
小さな波紋が出き、水面に波ができる。
花はくるくると回り、蓮の花のように湖面を流れていく。
白と淡い桜色の混ざった秋桜。
秋の桜と詠われるように秋で最も可憐で美しい花。
それを湖に浮かべ、その愛らしい姿を見つめる。
あゝ、愛し。
青い澄み切った湖の上に浮かぶ、桜色の秋。
着物の袖をまくり、湖水に触れる。
冷たさが指先から、体中に駆けめぐる。
あゝ、恋し。
あなたの心もこの湖のように冷たい。
あなたの心に秋桜の花弁のように温かいものはあらんことか。
あゝ、哀し。
私の心もこの湖のように冷え切っている。
もうすぐ来る冬のために凍り付けにされる湖。
そのように私の心も凍ってしまうのだろうか。
あなや、哀しきこの心。
私の心も凍ってしまうのか。
春を待たなければならないのか。
春よ、冬を越えて来ないものか。
春よ、私の心の中にだけ来ないものか。
春よ、私の心にも桜を咲かせてみせよ。