雛黄門


〜雛乃お姉さん誕生日記念〜





 冬の冷たい空気も温む、三月の頭。

 ひな祭りを控えた前日、俺、柊空也と柊家のお姉ちゃん一同が長女―――雛乃姉さんの部屋に集まっていた。

「劇、であるか?」

 雛乃姉さんが『猪鹿蝶』と書かれた扇子をパタパタさせながら、俺に訊く。

「うん。明日は姉さんの誕生日でしょ?」

 明日、三月三日はひな祭りであるのと同時に、雛乃姉さんの誕生日でもある。

「で、あるな」

「だからみんなと相談して……雛乃お姉ちゃんの誕生日プレゼントに、劇をやることにしたんだよ〜」

 俺の代わりに柊家6女の海お姉ちゃんが答えた。

「ひなのんを主役にしてね」

 続けたのは、柊家3女の瀬芦里ねぇねぇ。

「ほう、我が主役であるか」

 雛乃姉さんは扇子を閉じて、正座している膝の上をそれでポンと叩いた。

「時代劇やったら喜ぶんじゃないかって……空也が」

 そう、柊家4女の巴ねえが、なぜかおずおずと続けた。

「姉さんが時代劇好きだからって、安直過ぎよね」

 柊家5女の高嶺姉貴が、そう言って若干、呆れた感じに首を横に振った。

「まあ、所詮イカの頭じゃ、そのくらいしか思いつかないんでしょうケドね」

「……ぐぅ」

 この人は、いつもイヤな事を言う人だった。

「ふむぅ、時代劇であるか」

 姉さんがパッと扇子を開く。

 その扇子に書かれている文字が『あっぱれ』に変化していた。

「時代劇をこよなく愛する我の為にそのような……嬉しく思うぞ、くうや」

 どうやらお気に召していただけたようだった。

「ははーっ、恐悦至極にござりまする」

 時代劇風に、恐れ入ってみる。

「しかし、時代劇と言っても色々あるが……何を演ずるのであるか?」

「水戸黄門、だそうですよ、姉さん」

 フッ、とクールな微笑を浮かべつつ答えたのは、柊家次女の要芽姉様。

「ほう、我が光圀公で、あるか」

「台本は私が書いたんだよー」

 得意げに、海お姉ちゃんがエヘンと胸を張った。

 瀬芦里ねぇねぇやともねぇの影に隠れて、あまり目立ってないけど、海お姉ちゃんもなかなかの巨乳だったりする。

「ふむぅ、うみが脚本とな」

「そーだよー。発案はくーやだけどね。いいこいいこ」

「はふぅ」

 海お姉ちゃんのぷにぷに巨乳に包まれて、頭をなでていただきました。

「しかし、我が主役……しゅやく……よい響きであるな……」

 雛乃姉さんが、うっとりしながら『主役』という言葉を繰り返した。

 初めは雛乃姉さんに劇を見せる、って案だったんだけど、雛乃姉さんならきっと主役をやらせてあげた方が喜ぶんじゃないかと思ったわけで……。

 どうやら、その考えは大当たりだったようだ。

「これが台本だからねー」

 と、海お姉ちゃんが一冊のコピー本を雛乃姉さんに渡した。

「……雛黄門、とな」

 雛乃姉さんが、その表紙に書かれていたタイトルを読み上げた。

「そのタイトル、くーやが考えたんだよー」

「まったく……雛乃姉さんだから『雛黄門』だなんて……ホント、アンタってイカよねぇ……」

 姉貴が、また嫌な事を言った。

「ツインの言う事なんて気にしない、気にしない」

「あふぅ」

 また、海お姉ちゃんのぷにぷにに顔を挟まれながら撫でていただきました。

「みんなには、もう台本配ってるから、目を通しておいてねー」

「うむ、心得た」





 ――――――と、いうわけで当日。

 演劇の舞台は柊家の居間。

 旧家の豪邸である柊家の居間は、テレビやテーブルなどを片付ければかなりの広さがあって劇をやるには丁度よかった。

 舞台袖代わりの廊下から、障子を少し開けて中を覗いてみる。

「要芽様の和服姿が見られるのでしょうか……」

「さあ、どうでしょうねー」

「なんで私まで……」

「ギュギュ」

 そこでは観客の、柊法律事務所の摩周さんにいるかちゃん、指輪のお姉さんの透子さんに正体不明生物のまるの3人と1匹が行儀良く用意された座布団に座って劇が始まるのを待っていた。

「レディース&ジェトルメーン! ようこそ雛乃お姉ちゃんの誕生会に!」

 その観客の前で、海お姉ちゃんがマイク片手に舞台挨拶をやっていた。

 ノリにノッてる感じっぽい。

 ぱちぱちぱちぱち。

 観客がそれを拍手で迎える。

「……バカみたい」

 ただ1人、透子さんを除いて。

 ともねぇに無理やり連れてこられたせいか、ふて腐れているようだった。

「……ギロリ」

 その透子さんを3人と1匹が睨みつける。

「お、OKOKよ……」

 その気迫に圧されたのか、ぱちぱちぱち、と、透子さんも拍手する。

「それでは早速、『雛黄門』の始まり始まりー!」

 海お姉ちゃんが反対側の廊下に出て行くと、ゆっくりと幕が下りた。

(い、いつの間に幕なんか……)

 さすが、海お姉ちゃんだった。

 ジャーン、ジャジャジャジャーン。

 ジャン、ジャジャジャジャン、ジャジャジャジャン……

「これ、くうや、ともえ、参るぞ」

 オープニング曲が流れる中、ご隠居様の衣装を着て、白い髭まで付けた雛乃姉さんが舞台に向かう。

「うん」

「う、うん……」

 俺と、ともねぇも雛乃姉さんに続く。

 俺達もまた、テレビで助さん格さんが着ている衣装を身に付けていた。

「確か、真ん中で足踏みしていればよいと、うみは言っておったな」

 雛乃姉さんが俺を見上げてそう訊いた。

「うん、そうだね」

「わ、凄い……」

 ともねぇが丁度、舞台奥となっている襖を見てビックリしていた。

「……うわ、すげぇ」

 そこには時代劇に出てくるような街道の映像が、ゆっくりと流れていた。

 きっと、これも海お姉ちゃんの仕事によるものだろう。

 劇をやろうと言い出したのは俺だけど、海お姉ちゃんが、

「いいんだよー。お姉ちゃんがぜぇんぶやってあげるからねー」

 と、何から何まで準備してくれたのだ。

「ふむぅ、うみは凄いのう」

 雛乃姉さんがそれを見て感心していた。

 普段は不器用なのに、こういう突拍子なものに関しては人並み外れていい仕事をするのが海お姉ちゃんだった。


 世直しの為に諸国漫遊を続ける雛黄門一行。

 今回立ち寄った鎌倉では、はてさて、どのような物語が待ち受けているのでしょうか?



 海お姉ちゃんのナレーションが入るのと同時に、幕がゆっくりと上がった。

 ぱちぱちぱち、と、観客達の拍手に迎えられた。

「うわー、本格的ですねー」

 いるかちゃんが背景を見てビックリしていた。

「あーれー」

 なんの前触れもなく反対側から現れたのは、着物姿の高嶺姉貴。

「助けてください、旅のお方」

 そう言って、姉貴は俺の後ろに隠れた。

 どうでもいいけど、思いっきり棒読みなセリフだった。

「ふむぅ、どうなされた娘さんや」

 雛乃姉さんがその姉貴に声をかける。

「悪い越後屋に追われているのです」

「やいやいやい!」

 続いて現れたのは、サングラス掛けた越後屋役の瀬芦里ねぇねぇ。

 ……………………。

(……サングラス?)

「……ね、ねぇねぇ」

「んにゃ?」

「な、なんでサングラスしてんの?」

 思わず、ツッコんでしまった。

「ん〜、だって悪者っぽいでしょ?」

 どうやら、ねぇねぇのアドリブらしかった……。

「いや、時代劇にサングラスはちょっと」

「だ、だめだ空也、素に戻っちゃ……ちゃんと演じないと」

 ともねぇに窘められてしまった。

「っと、そうだね」

 この際、細かい所は目を瞑ることにした。

「さあて、そこのへんちくりんなツインテールを渡してもらおうか」

「だ、誰がへんちくりんよっ!」

 今度は姉貴が素に戻って怒鳴った。

「えー、でもこれは台本通りだよ?」

 怒鳴られた本人は、不思議そうに首を傾げた。

「なっ!? う、うみーっ!」


 (・ε・)


「なんて喋ってんのか分かんないわよっ!」

「だ、だめだ高嶺、素に戻っちゃ」

 慌てて、ともねぇが姉貴を宥める。

「ううっ……後で覚えてなさいよ、海……」

「あいたたたっ!?」

 なぜか、姉貴に二の腕を思いっきりつねられた。

「何で俺をつねるんだよう」

「うるさいっ、このイカッ!」

 八つ当たりみたいだった。

「ふむぅ、この娘を渡してなんとする」

 雛乃姉さんが、マイペースに話を進めた。

「へっへっへ、決まってるだろ。借金のかたに売り飛ばすんだよ」

「むむぅ、許せん! くーさんや、やってしまいなさい!」

「はいっ」

 俺は腰に提げた刀を抜いて、ねぇねぇに向けた。

「むうっ、覚えてろー」

 台本通り、ねぇねぇはあっさりと舞台袖に逃げ去っていった。

「助かりました、旅のお方。よろしければお名前をお教えくださいませ」

 姉貴が相変わらずの棒読みで頭を下げる。

「ほっほっほ、我は越後のちりめん問屋の隠居で雛右衛門と申す者」

「わ、私は、ともさんです」

「くーさんです」

 なんか、俺達2人の名前がおかしい気もするが、台本通りなのだから仕方がない。

「近くに私の家がありますので、どうかおもてなしさせて下さいませ。旅の疲れも癒せましょう」

「おお、それは助かる。ともさん、くーさん、参ろうぞ」

「はいっ」

「は、はい」

 ここで、ウィーンと音を立てて幕が下りる。

「はいはいー、次の用意するからねー」

 幕が完全に下り切った所で、海お姉ちゃんが布団を持ってやってきた。

「海さん、どこに敷いたらいいですか?」

 そして海お姉ちゃんの後ろで敷布団を担いでいる男……。

「あ、そこに敷いといてー」

「よいしょっと……」

「なんでオヤジがいるんだよ!?」

「フッ、久しぶりだな、息子よ」

 サングラスの男―――俺の実の父親である壬生誠が不敵に笑った。

「まあ、積もる話は後にしよう。今はこの劇を続けるのが先だ」

 オヤジはそれだけ言うと、敷かれた布団に潜り込んだ。

「ほら、みんな座って、座って。続けるよー」

 海お姉ちゃんに促されて、俺達はその場に座り込んだ。

 そしてお姉ちゃんが廊下に出た所で襖に映る背景が時代劇の長屋風のものに変わり、幕が上がった。


 娘の家にやってきた雛黄門一行。

 しかしそこには不治の病に冒された娘の父親が居たのでした……



「ゲホッゲホッ」

「ああ、おとっつあん。ほら、薬よ」

 姉貴が、いつの間にか持っていた湯飲みを、これまたいつの間にかサングラスを外したオヤジに渡した。

「ゴクッゴクッ……ふぅ、いつも済まないねぇ」

「おとっつあん、それは言わない約束でしょ」

 セリフ自体がお約束なのには、きっとツッコんではいけないんだろう。

「ふむぅ、薬を買う為に借金をしておるのじゃな?」

「はい。娘には苦労をかけてしまい……ゴホッゴホッ」

 なかなかに、オヤジの演技は迫真に迫っていた。

 顔色なんかも青白くなっていて、本当に今にも死にそうに見える。

「ああ、無理しないでおとっつあん」

 それに釣られたのか、姉貴の棒読みなセリフがまともに聞こえる様になっていた。

「ふむぅ……で、その借金の額は……」

「邪魔するよっ」

 そこに登場したのは、越後屋ねぇねぇ。

「ああ、越後屋さんかい」

 ねぇねぇがオヤジの横に、どっかと腰を下ろす。

「ああ、越後屋さんかい……じゃないってーの! とっとと借金、返したらどうなんだいっ! ああっ!?」

 ダンッ! と、ねぇねぇが畳を殴りつける。

「で、ですが、本当に越後屋に借りたお金は1両だったのに、法外な利息がついてしまって、返さなければいけないお金は100両になってしまいました……とても私のような貧乏人には払えません……ゴホッ」

「なんと! 100倍ではないか!?」

「ああん? なんだいお前さん方……ん? さっきの……」

「100倍などという法外な利息を取るなど、言語道断ではないかッ!」

「ふっふっふ、どこのジジイか知らねぇが、こっちにゃ証文があるんだよ、証文がっ!」

 ねぇねぇが懐から一枚の紙を取り出して、雛乃姉さんに突きつけた。

「その目をかっぽじってよーく見てみやがれい! ちゃーんと利息は10日に1割って書いてあるじゃねぇか!」

「うむむむ、トイチ貸しで、あるか」

「ちょっと待って。トイチで100倍って……一体何年かかると思ってるのよっ」

 姉貴がまた素に戻ってツッコミを入れた。

「えー? でも台本通りだよ?」


 細かい事は気にしない気にしない♪


「高嶺、素に戻っちゃだめだ。ちゃんと演じないと」

「ううっ……なんか納得いかない」

「とにかくっ! これ以上、待てねぇから娘は貰っていくぜ!」

「キャッ!?」

 グイッとねぇねぇが姉貴の手を引っ張って立ち上がった。

「返して欲しかったら100両、耳を揃えて用意しなっ!」

「おとっつあーーーんっ!」

「娘よーっ!」

 そして2人がフェードアウト。

「うむむ、くーさん、ともさん! 参るぞ!」

「はいっ」

「は、はい」

 ここで、幕が下りた。

「はいはーい、雛黄門一行は一旦外に出てねー」

 それと同時に海お姉ちゃんが次の準備にやってきた。

「海さん、私の出番はこれで終りですか?」

 オヤジが布団から出て海お姉ちゃんに尋ねた。

「そうですよー」

「そうですか。では私も観客側に回る事にしましょう」

 オヤジが布団を担ぎ上げて廊下に出て行った。

「ほれ、くうや、ともえ。廊下に出るぞ」

「はいっ」

「は、はい」

 雛乃姉さんに促されて廊下に出る。

 代わりに入ってきたのは、ねぇねぇと要芽姉様。

「むーっ、むーっ!?」

 そして、何故か姉貴が両手を縛られた上に猿轡まで噛まされて、ねぇねぇに担がれていた。


 夜も更けた頃。

 借金の形にされてしまった哀れな娘さんは、悪い越後屋にお代官様の屋敷に連れていかれたのでした。



 お姉ちゃんのナレーションが終わるのと同時に、幕が上がる。

「フッ……その娘が今晩の私への貢物?」

 殿様なんかが着ていそうな衣装を身に付けた悪代官役の要芽姉様が、俺を前にイジメた時の様な、妖艶で残酷な笑みをクスリと浮かべて、傍らでもがく姉貴を見下ろした。

 柊の家に戻った初日の出来事を思い出して、背筋がちょっと寒くなった。

「左様で、お代官様」

「くすっ……越後屋、お主も悪よのう」

「いえいえ、お代官様には敵いませぬ」

「フフフッ」

 台本では、ここで雛黄門一行の登場の予定だ。

「よし、参る……」

「ちょっと待って、雛乃お姉ちゃん」

 突然、海お姉ちゃんが待ったをかけた。

「どうしたのだ、うみ?」

「ごめんね、要芽お姉ちゃんに頼まれて、ちょっと台本変えたの」

「ふむぅ?」

 そして舞台では……

「フフフッ……」

「むーっ! むーっ!!」

 要芽姉様が、姉貴の着物を脱がし始めていた。

「あれ? 要芽ねぇ、ホントに脱がしちゃうの?」

 ねぇねぇがそれを見て、不思議そうに首を傾げた。

「ええ。海に台本を変えて貰ったのよ……フフッ、だって私、本編ではちっとも妹たちと絡めなかったから、せめて番外編ではと思って」

「あー、なるほど」

「むーっ! むーっ!!」

 姉貴も身悶えして必死に抵抗するが、あっさりと要芽姉様に帯を解かれ、前を露にされてしまう。

「あら、ダメじゃないの高嶺。着物を着ているのに下着なんて着けては」

 その最後の砦も、あっさりと要芽姉様に抜き取られてしまった。

「フフッ、大丈夫よ高嶺……優しくしてあげるから」

「むひゃんっ!?」

 耳たぶを要芽姉様に甘噛みされて、姉貴がちょっと高い声を上げた。

「あら、いい声で鳴くわね、高嶺……フフッ、家族を愛でるのは初めてだから、ちょっと緊張するわね」

「んーっ! むはぁ……ふぅんっ!?」

 要芽姉様が右手で姉貴の小さめの胸を、円を描くように優しく揉みつつ、左手は姉貴の秘所をまさぐっていた。

「高嶺の胸は小さいけれど……いい形をしているわね。乳首なんかも桜色で綺麗で」

「うわぁ、要芽ねぇってば、エロい」

「くすっ……私もなんだか熱くなってきたわ」

 要芽姉様が衣装を脱ぎ捨てる。

 姉様は下着を付けてなくて、衣装を脱いだだけでその均整な身体を惜しげもなく、その場にさらけ出した。

「か、要芽様……可憐だ……」

「はややややっ!? 摩周さんがっ!」

 その刹那、摩周さんが鼻血を盛大に吹いて倒れた。

「フッ……要芽、やはり君は美しいな」

 オヤジがサングラスをクィッと人差し指であげてカッコつけた。

「な、何? ……この展開」

 透子さんは呆れているのか困っているのか良く分からない表情になっていた。

「ギュル! ギュルギュル……ギッ!(訳;山田  すげぇゼ! こんな子供だましの劇でこれだけのレズシーンが見られるなんて……感激だっ!)

 珍獣は素直に喜んでいた。

「…………ゴクリ」

「わくわく、わくわく」

 雛乃姉さんと海お姉ちゃんは、その光景をまじまじと真剣な表情で見つめていた。

「あわわわ……こ、こんなのだめ……」

 ともねぇは、ただ、まごまごと慌てていた。

「す、すげぇ……」

 そして俺は下半身をギンギンに膨らまして、その光景を喰い入るように見ていた。

「ふふっ……高嶺、貴女のここは空也のモノを何度受け入れたのかしら?」

「!?」

「1度や2度じゃないわよね……だってほら、ちょっと弄っただけなのに、こんなに蜜が溢れてる……」

 要芽姉様が姉貴の秘所を弄っていた左手を姉貴の目の前に持ってくると、蜜がネバついた糸を引く様を見せ付けた。

「ひ、ひやーっ!」

「フフッ、こんなに感じやすくなるまで開発されてるなんて……イヤらしい妹ね、高嶺は……ほうら、今度はもう一本指を入れてあげるわ」

 そして要芽姉様は、再び姉貴の秘唇に手をやると、さっきよりも激しくかき回した。

 それはもう、柊家の広い屋敷中に、クチュクチュとイヤらしい水音が響き渡るかと思うくらいに。

「むーっ! むーっ!!」

「ほら、皆が見ている中でイってしまいなさいっ」

「むーっ! むむーっ!!」

 その激しさが頂点に達した刹那、姉貴の秘所から大量の潮が吹き出した。

「あらあら、高嶺……お漏らしなんかしてはイケナイわ……くすっ」

「ううーっ……ひがうもん、ひがうもんっ、おひっこひゃないもん……ぐすっ」

 あまりの恥ずかしさからか、姉貴は泣いてしまっていた。

「くすくすっ……さて次は……」

「にゃっ!?」

 要芽姉様の視線が瀬芦里ねぇねぇに向く。

「わ、私も!?」

「毒を喰らわば皿まで……みんな愛でてあげるわ……くすっ」

 要芽姉様が四つん這いになったまま、ねぇねぇに詰め寄った。

「うひゃーっ!? お代官様がご乱心じゃーっ!」

「あれぇ? 予定じゃ犠牲者はツインテールだけでよかった筈なのに……」

 海お姉ちゃんが、変だなぁと首を傾げた。

「むむぅ、これはいかんっ!」

 言うが早いか、雛乃姉さんが飛び出した。

 慌てて俺と、ともねぇもそれに続く。

「待て待てーいっ! 要芽! これ以上の狼藉は、この我が許さぬぞっ!」

「!?」

「ひ、ひなのん、助けてー」

 すでにねぇねぇの衣装は半分脱がされて、上半身を綺麗に剥かれていた。

「くすっ、いくら姉さんのご命令でも、これは聞けません」

「にゃふぅ」

 ねぇねぇの豊満なバストを両手で弄びながら、要芽姉様が妖艶に微笑した。

「むむむっ、我の言う事が聞けぬと申すかっ!」

「ええ……フフッ、ご心配なさらずとも、後で姉さんもたっぶり可愛がって差し上げますよ。さあ、でてらっしゃい!」

「ギッ!」

「!?」

 要芽姉様に促されて現れたのは、あの鳥の怪物―――クロウ。

「な、なんでっ!?」

「ふふふっ、さあ私の可愛い下僕よ、あの3人を抑えておきなさい……殺してはダメよ」

「ギギィッ!」

 命令されたクロウが、俺達に襲い掛かってきた。

「うわああっ!?」

 とっさに俺は腰に提げていた刀を抜いた。

 模擬刀に見えるが実はそうじゃない。

 これは伝説の、稀代の名刀匠、猫宗が打った逸品『猫一文字』なのだ。

 あまりに稀代過ぎて誰もその名前を知らないけれど、この刀の切れ味といったら怪物の1匹や2匹……。

「ギッ!」

 ペキッ!

「のあっ! 武器破壊技っ!?」

 怪物の一撃を受けて、名刀、猫一文字の刀身は真っ二つに折れてしまった……。

(グッバイ、俺の愛刀……)

 もちろん、後で黒子が舞台に新しい刀を投げてくれる筈もなかった。

「任せて!」

 キラリと、ともねぇの眼が光る。

「纏身ッ!」

 ピカーン! と、ともねぇの身体をまばゆい光が包む。

 そしてその光が消え去った後、

「ジガァァァァッ!」

 紫の装甲に包まれた指輪の戦士、ジガがともねぇが立っていた場所に現れ、それを目の当たりにしたクロウがその名を激しく咆哮した。

「ギアァァァッァッ!」

 クロウが跳躍し、ジガに殴り掛る!

「ハッ!」

「グアアアアアッ」

 が、ジガはその拳を軽々と受け止めると、そのままそれを握り潰した!

「時間がないから、一気に決めさせてもらうっ! ヤッ!」

「グオオオッ!」

 そして作者の勝手な事情を叫びつつ放ったジガの正拳突きが、クロウの鳩尾にヒットする!

「ヤッ!」

「ギッ!」

 動きの止まったクロウの横っ面に、ジガの右エルボーが叩き込まれる!

「ヤァッ!」

 続いて右の甲でクロウの顎を思いっきり殴り上げた!

「グェェェェッ!」

 その衝撃で、クロウの身体が宙に舞う。

「セイヤァッ!」

「ギャァァァァッ!」

 そして、落ちてきたところにジガの強烈な回し蹴りが炸裂して、クロウは舞台の反対側まで吹っ飛ばされた。

「ギギギギ……ッ」

 息の虫になったクロウに止めを刺すべく、ジガがゆっくりと近づいていく。

「ギ……ギギ……」

 死の予感を感じたのか、脅えるクロウをジガは見下ろすと、右の手刀をふり上げ、そして――――――

「待てぃッ!」

「!?」

 その目の前に、雛乃姉さんがクロウを庇うように立ちはだかり、キッと凛とした眼でジガを睨みつけた。

「もうよい! ともえ……もう勝負はあった」

 戸惑うジガをよそに、雛乃姉さんは膝をついて畳に伏すクロウの頬をそっと撫でた。

「すまなんだのう……元はといえば、我らの祖先がお主達の土地を奪った事から始まった事……怨むのも当然であろう」

「ね、姉さん、知って―――」

 いつの間にか纏身を解いていたともねぇを、背を向けたまま雛乃姉さんが手で制した。

「我はこの柊家の長女であるぞ……このくらいの伝承は存じておる」

「姉さん……」

「許せ、とは申せぬ……じゃがのう、憎しみだけではこの世の理を紡ぐ事はできぬ。願わくは、共に手を取り合い、生きていく事はできまいか?」

 そう言って雛乃姉さんはクロウの手を取り、優しくギュッと握り締めた。

「オ……オオ……」

 その瞬間、クロウの目から涙が零れ落ちる。

「オ、オ、オオ……」

 そしてクロウの姿がゆっくりと霧化していき、最後には霧散した。

「……逝ってしまったか」

 その場に残されたのは一枚の黒い羽。

 それを雛乃姉さんは手に取り、寂しそうに呟いた。

「ご、ごめんなさい雛乃姉さん……わ、私っ、こ、殺すつもりなんて本当は……」

「いや、死んでなぞおらぬぞ、ともえ」

 泣きじゃくるともねぇを見て、雛乃姉さんが首を静かに横に振った。

「怨念が消え、あ奴は還るところへ還っただけじゃ……案ずる事はない。これ、くうや」

「は、はい」

「我を持ち上げよ」

「……へ?」

 一瞬、意味を考える。

「ほれ、何をしておる。さっさと持ち上げぬか」

「は、はい」

 言われた通り、俺は雛乃姉さんを後ろから抱き上げた。

「よしよし」

「あ……」

 俺が持ち上げたことによって目線が高くなった雛乃姉さんは、ともねぇの頭を優しく撫でた。

「よしよし、ともえはいい子じゃ」

「あは、姉さん、私、もう子供じゃないよ」

「何を申すか。幾つになってもお前は我の可愛い妹で、あるぞ」

 涙目になっているともねぇの頭を、雛乃姉さんは何度も何度も撫でる。

「うう、感動のシーンですぅー。ずびーずびー」

 いるかちゃんが、ドコから持ってきたのかティッシュの箱を膝に置いて、何度も何度もハナをかんでいた。

「もう良いぞ。降ろすが良いくうや」

「あ、うん」

 ひとしきり、ともねぇの頭を撫でた雛乃姉さんを下に降ろす。

「さあて、次は……要芽っ!」

 さっきまでの優しい目とは違い、厳しく凛とした眼で雛乃姉さんは、いつの間にか衣装を身に付けていた要芽姉様を睨みつけた。

「う、ううっ」

 その溢れんばかりの威厳に、流石の要芽姉様もたじろいだ。

「よし、ともえ。今こそ出すのじゃ」

「うんっ、頑張る!」

 と、雛乃姉さんに促されてともねぇが胸元から取り出したのは、

「ひ、控え、控えおろーっ! この紋所が目に入らぬかーっ!」

 まさしく、前に雛乃姉さんと街に世直しの旅に出た時に使った、雛印の特注印籠。

 ちなみに薬の代わりに雛印飴が入っている。

「う、あ……」

 その迫力に、要芽姉さんが気圧される。

「このお方をどなたと心得る! 柊家長女、柊雛乃公であらせられるぞっ!」

 バーン! ジャジャジャジャーン、ジャーン……。

 それと同時に、いつも8時40分台に流れるあの曲が流れた。

「皆の者っ! ず、頭が高いっ! 控えおろーっ!」

「は、ははーっ」

 要芽姉様と、ちょっと忘れかかっていた瀬芦里ねぇねぇが、その前にひれ伏した。

「柊要芽っ!」

 ピシャリと雛乃姉さんが言い放つ。

「は、はい」

「要芽……いくら本編で妹達と絡めなかったと言えど、無理やり辱めるなど言語道断である! よってこれから1週間、『みんとあいす』抜きの沙汰を申し渡す!」

「え……?」

「ふむぅ? 何か不服でもあるか?」

「……いえ、御座いませぬ」

 しょんぼりと、要芽姉様が落ち込んでしまった。

「そして越後屋!」

「にゃっ!?」

 いきなり振られて、ねぇねぇが目を丸くした。

「お主は1週間、『肉』抜きの沙汰を申し渡す!」

「ふぎゃー!? わ、私、何もしてな……」

「何か不服でもあるか?」

 ギロリと、雛乃姉さんがねぇねぇを睨みつける。

「ありませーん……とほほー」

「これにて一件落着! かっかっかっ」

 雛乃姉さんの高笑いが響く中、ゆっくりと幕が下りてくる。

「ああ、落ち込む要芽様も儚くて素敵だ……」

「か、感動ですー、健太ぁ、お姉ちゃん泣いちゃったよ……ずびーずびー」

「フッ、なかなかに楽しませてもらったよ」

「む、無茶苦茶だわ……」

「ギュギュー!(訳;山田 ブラボー!)

「むーっ! むむむむーっ!!(何でもいいから、早く解いてよーっ!)」



まあ、何はともあれ……




誕生日、おめでとう雛乃姉さんっ!







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