国宝特集
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■感想
いやぁー、なかなか面白かった。
実写映画の記録を更新しそう(後に更新した)という事で、映画館に足を運んで鑑賞した。
序盤は大して面白くない。どこにでもありそうな作品だ。しかし、曾根崎心中を演じるあたりから、俄然面白くなる。吉沢亮の名演技に、圧倒されまくりなのだ。
そこが唯一の見せ場と言えば見せ場。あとは延々歌舞伎界にありそうなスキャンダラスな話が続く。
あと、歌舞伎の舞台が終了するたびに、割れんばかりの拍手が巻き起こる。これが観客を興奮させているように思われる。私的には「Wの悲劇」を彷彿としてしまった。
それから歌舞伎の演目がなかなか趣向を凝らしている。連獅子、道成寺、と歌舞伎に詳しくなくとも一度は耳にしたことのある演目だ。
本来なら連獅子を主演の2人にやって欲しかったところだが、それは作品の内容から無理な相談だろう。道成寺に関しては、横溝正史お気に入りの演目で「獄門島」でおなじみだ。このあたりのチョイスは見事と言う他ない。
そして本作は登場人物が少ない。序盤は吉沢亮、横山流星、渡辺謙、寺島しのぶの4人だけで話が進む。
中盤は吉沢亮、横山流星、高畑充希、森七菜の4人だけだ。
結果、主演の2人の感情の機微が実に丁寧に描かれている。多くの映画を観てきた人には、大したことではないが、ここまで丁寧に描かれた作品が昨今の邦画界にはないのだろう。それゆえ高評価につながったと思われる。
それもこれも原作は読んでいないので確かなことは書けないが、脚本の妙だろう。脚本家の奥寺佐渡子は細田守監督作品の脚本を手掛けていた人だ。細田守監督作品がつまらくなったのは脚本に奥寺佐渡子がいないからだ、とも言われるが、ここにきて実証されたように思う。
あと映像的には田中泯の、にらむシーンが秀逸。実にかっこいい。画面右端に顔を寄せて、左側に余白を作る。まさに映像美の極みだった。
この映画を観て歌舞伎に興味を持った人もいるようだが、そんな感じは私には全くなかった。
というのも女形は日常からして女性っぽい。しかし吉沢亮、横浜流星ともにイケメン丸出しで骨っぽいのだ。私的には芸能の世界の光と影が見え隠れする作品だったように思う。