君の名は。特集
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■新海監督作品として
本作の放映にあわせ過去の新海監督作品を一挙放送してくれたテレビ朝日のおかげで、新海監督の苦労が本作でやっと報われたのがよくわかる。
そこで、過去の作品で何が足りなかったか観ていこう。
「秒速5センチメートル」
やたらと電車と駅が出てくる作品。
背景ばかりに目がいって人物や内容が入ってこない。
絵上手でしょ。絵うまいでしょ。
そんなスタッフの声が聞こえてきそう。
しかも、ハッピーエンドにはならない暗い話。
「星を追う子ども」
新海版「天空の城ラピュタ」。
今回放送された中では最も面白い作品だった。
しかし「天空の城ラピュタ」のリメイクでしかなくオリジナルを越えられなかった。
ラストも喪失感を抱えて生きてゆくのが人間の宿命。
という救いのない終わり方だった。
「言の葉の庭」
短編小説にありそうなお話。
アニメにする意味があったのだろうか。
「雲のむこう、約束の場所」
おそらく、本作に最も近い感じの作品。
しかし、世界系。
一応ハッピーエンドにはなっているが、政治色が出そうで好きになれない。
以上が今回私が観た作品だ。
私は新海監督を本作がヒットするまで知らなかった。
それも無理はなかろうと思われるヒットしなかった理由を書いてみる。
まず、誰もが思うことだが、タイトルで内容が想像できない。
しかも、タイトルが覚えにくい。
次に過剰な背景描写。
「秒速5センチメートル」などがその典型で、電車のホーム、案内板、電車、車内の天井。
と緻密な背景ばかり出てくる。
本屋大賞がすぐに映画化されるのは描写が素晴しいだけではない。
話の内容が面白いからだ。
映画を観るのに背景は添え物でしかない。
これが、CGメインの映画や、大群衆の合戦シーンなら背景も重要だが、背景ばかり出されても辟易してしまう。
市川崑監督の作品には、日本の自然の美が登場するが、あくまで、それは、話と話のつなぎでしかなかった。
ちょっと一息のような感覚だ。
ところが、緻密な背景描写ばかりなので、息が詰まりそうになる。
次にアンハッピーエンド。
ディズニーを筆頭にハッピーエンドばかりなので、そうでないものも観てみたくなるが、やはり暗いだけで終わるのはヒットしづらい。どっちつかずなら、受けるかもしれないが、昨今(2018年)ではアンハッピーエンドは受けにくいだろう。
最後にオリジナリティの欠如。
ヒットを狙いすぎ。
「ラピュタ」マネたり、「エヴァ」マネたり、押井監督マネたり、細田監督マネたり、新人漫画家に編集者が言う台詞じゃないけれど、作者の顔が作品からみえてこない。
本作でやっと背景ではなく、内容で勝負することを覚えたようです。
馬鹿みたいに星空書いてみたり(ラッセンじゃないんだから)、電車オタクかどうか知らないけれど、電車ばっかり出さないで、人物をメインに描くことを覚えたようです。
ハッピーエンドにしていなかったら、ここまでヒットしたか疑わしい。
それでも、これだけ色んなジャンルを描き分けるアニメ監督はそうはいない。
力量はかなりのものがあるはずなのだが、ヒットさせるのは難しいのだろう。