「で、そろそろプレゼントを貰いたいんだが」
「へ?―――ふきゃんっ!!」
バフン、と柔らかなベッドマッドが跳ねるのを郁は背中に感じる。
一瞬閉じた瞼を開けると、そこには闇夜を溶かしたような艶のある射干玉の瞳があった。その瞳が妖しくく光ってるように見えるのは郁の気のせいではないだろう。
気がつけば堂上の掌は左の太腿を掴み上げ、足の間に身を割り込ませてきた。
衣服越しとは言え、互いの陰部が触れる格好に郁は顔を真っ赤にして慌てる。
若干ソコが硬く盛り上がっているのは気のせいだと思いたい。



「まっ、待って!お風呂!せめてシャワー!!」
冬と言えど発汗がなくなるわけではないし、おまけに今日のコースのメインはチゲ鍋だった。
魚介の旨みがたっぷり出たピリ辛の鍋は美味しかったが、カプサイシンの発汗作用はなかなかなもので、開いた汗腺からじんわりと汗が噴き出して、おでこや首筋には小さな汗の玉が浮かんでいた。
居酒屋を出る前に化粧室で汗を抑えてきたが、洗い流していない以上気になるものは仕方がない。
けれど、ぐいぐいと押し返す反抗すら堂上には楽しいものらしく、口の端は上がり、距離は広がるどころか狭まり、堂上の顔が首元に沈む。
「―――ゃんっ!」
ベロリ、と熱く湿った感触が首筋に走った。その途端、郁の肌が粟立った。
「やぅ…まっ、てっ・・・!」
制止は効かず、ベチョリ、と下から上へと首筋を舐め上げられ、最後にジュルっと音を立てて吸われる。
その度に、くふんっ、と郁は鼻に掛る声を上げる。
「しゃわっ…」
「まだ言うか」
くつりと笑いながら、堂上は郁の肌を舐めるのを止めない。
「このまんまのが郁の味が濃くて旨い」
「やっ…へんたっ…!」
「結構だ」



匂い立つとはこういうことを言うのだろうか。
水音を立てられる度に混じり合う体臭が強くなる気がする。
頭の芯からクラクラとしてくる。
「だめっ…あつし、さ、の匂い、強くて、クラクラするのっ…」
ビクビクと身体を小刻みに震わせながら、甘くとけた瞳で見上げられ、官能的な熱を孕んだ言葉に堂上の雄は大きな熱量を溜める。
くそっと咥内で吐き捨てた堂上は荒々しく郁の唇を奪う。
「んっ―――!!ふっ――ぅんっ!!」
息継ぎのタイミングすら見いだせない激しい口付けに、酸素を求めて郁の拳が堂上の背中を打つ。
ドンドンと打ち鳴る拳に構わず、堂上はキスを続けた。
次第に郁の拳の力は弱くなり、縋る様に弱弱しく指先が掛る。
郁の酸素を食い荒らしていた堂上が、満足したかのように唇を離せば、混じり合い粘度を増した唾液が糸を引く。それを舐め取る様にして、ベロリと舌を動かした。
はふはふ、と胸を上下させ、酸素を取り込む郁の足から素早く下着を抜き取る。



「ひゃんっ!」
堂上の指が触れたそこは既に粘性のある蜜でぬかるんでいた。
「こっちは準備万端みたいだぞ」
「うぅっ!」
抜き出され、晒された堂上の指に絡む蜜に郁は顔を真っ赤にして唸る。
「ぁ、あんなことされたら!!」
「はいはい。悪かった悪かった」
軽く笑いながら堂上は郁の頭をポンポンと軽く撫で、ちょっと待ってろ、それまで郁から離れようとしなかった堂上が身を離す。
―――ハシっと郁が堂上の腕を掴んだ。
「―――どうした?」
「え、あ、あの・・・」
「そんな顔すんな。すぐ戻る」
チュっと米神に唇を落とし、再び堂上は離れようとする。
それを郁が慌てて引きとめる。
「あ、あの、あ、篤さんは、その・・・そのままではしたくない人ですか?」
「は?」
「あ、ほら、性病予防とかで。や、それなら、いいんですけど」
「ちょっと待て」
考え込むように堂上は額を抑える。
「お前、それは・・・ナマでしていいように聞こえるが」
堂上の確認に、郁は顔を真っ赤にして頷いた。



―――マジか?!




「待て、郁。確かに今日は危険日じゃないが。いや、正確に安全日ってのはないんだが」
上官として3年も付き合って居れば、周期の把握くらいわけない。
「いや、そりゃもうすぐ籍入れるが、いや、籍入れなくたって責任取るが。
 いや、ちょっと待て。ちょっと待て。
 何があった」
真顔で堂上は郁に迫った。
「うえ?!」
「何唆された!」
ガシっと肩を掴まれて、郁は怯む。
「そ、そそのかされ」
「ただろう?!柴崎か?!おっさんらか?!はっ・・・!まさか静佳か?!」
「ま、待って!なんで、そんな」
「じゃなきゃお前が此処でナマでしていいとか言い出すわけないだろう!!
 ―――何でそんなこと言い出した」
郁、と堂上の厚い頬が郁の頬を包む。
「―――無理、しなくていいんだぞ」
「無理、じゃないもん」



「篤さんは・・・したくない?」
「―――なわけないだろ。
 けどな、いくらもうすぐ結婚するっつったて、ここで妊娠したらマズイだろうが。
 お前だって、何の準備もないまま戦列離れるのはやだろうが」
「―――大丈夫だもん」
「安全日、危険日っつーのはあくまで目安で、絶対じゃないんだ」
「だって」



ポツリ、と郁は言った。




「―――あたし、ピル飲んでるから」







「―――は?」



ポカン、と堂上は郁を見返した。




「あたし、体脂肪低いから、そのままだと生理不順で。
 それで、学生時代からピル飲んで周期整えてるんです。
 ゴム、付けるより、ピルの方が避妊率高いんで、大丈夫です。
 だから、今日は―――あたしを全部貰ってください」
「―――ちょっと待て」



「―――何で今まで黙ってた」
堂上の言葉に、郁は僅かに口籠った後、答えを返した。
「柴崎が、それ言ったら、篤さんが調子に乗るからって」
―――柴崎っ!!
思わず堂上は頭を抱え、次いで郁に覆いかぶさった。
「そんなん―――乗るに決まってるだろうが!!」









「ん、ぁああんっ!」
「―――や、っべ」
たかだか数ミリの薄膜一枚ないだけで、その快楽はまるで違った。
直接、うねる膣壁が絡みつく快感は初めての物だ。
ゴムを付けていた時でも膣の温かさ、締め付け感、柔らかさなど、膣内の様々な感触を充分楽しめていた。
けれど、たった一枚。その障壁がないだけでこんなにも違うものかと、堂上は腰を打ちつけながら嘆息する。
膣粘膜のヒダがペニスに絡みつく感触や、膣内に分泌された愛液でペニスが濡れるリアルな感触は、想像を超えた快感を連れてくる。
だいたいにして挿入の時点で、ゴムを付けている時と気持ち良さがまるで違った。
よく濡れた膣に、亀頭を宛がうと少し力を加えただけでヌルッと根元まで挿入される。この感触が今までにないほど気持ち良かった。
そして挿入した途端、膣の温かさが直接ペニスに伝わる。ゴム越しに緩やかに感じる温かさとは違うダイレクトに伝わる郁の熱は熱いと感じさせるほどだ。
郁の方も「ぅぁ、ああんっ」と可愛い泣き声を上げながら、いつも以上に悶える。
「あついっ…あついのっ…あつしさっ・・・あっ!あぁっ!ぅあぁんっ・・・!」
全身でしがみ付きながら、気持ちいいと啜り泣く。
そんな郁に堂上はますます煽られる。
「煽ん、なっ、アホウっ!!」
堂上だって余裕はない。
「―――出すぞッ」
郁はもう言葉もなく、ガクガクと首を振る。
ペニスと膣を直にこすり合わせる快感を存分に味わい、最高に気持ちよくなったところで、堂上は腰の動きを止めた。ドクドク脈打つペニスからは大量の精液が郁の膣へ出される。
絞り取る様に膣を収縮させる郁は恍惚とした表情を浮かべる。
中出しの最中はそのあまりの気持よさに二人とも思わず身をよじらせてしまう。。
ペニスはより膣の奥へと深く挿入され、膣の奥は射精された精液がたっぷりと溜まっていく。
郁はそれから逃げようともせず、余韻に浸りながら堂上が出し終わるのをじっと待った。








「はぁっ…………はぁっ……はぁっ……」
脱力した二人の吐息が重なった時、指を絡めながらお互いの唇を求め合った。




「郁ん中、やべぇくらい気持ちいかった」
「あたしも…篤さんの、熱、知れて嬉しい」
「あんま可愛い事言うな。止まらなくなる」
「止まらなくて、いいですよ。
 だって、あたし―――篤さんのプレゼントだから」



それから二人は、日付を気にすることなく、シーツの海に沈み、快楽の波に溺れた。


















っていう、オチもヤマもない話でございんした。
お付き合いありがとーございました!










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