何でこんな事になってるんだろう。
寝る前にちょっとだけ堂上教官と話をしようと思っただけなのに。
首筋に顔を埋めてあたしを抱き締めている堂上教官を見下ろしながら思う。
手を置いた肩はあたしのなんかよりもずっと大きくて、身長は5センチ近く違うのに、男と女ってだけでこんなに違うものなんだろうか、なんて考えてしまう。
というよりもそういう事を考えてないと、どうしたらいいのか分からないのが現実だ。



そんなあたしの思考を読んだかのように、背中に回されていた堂上教官の手が上から下へと伝っていく。
ただ上から下へ。
ゆっくりと、つうっと指で撫でられる。
それだけで何だかゾクゾクして、ビクリと体が反応してしまう。
「どじょ、きょか・・・」
名前を呼べば、教官の瞳があたしを捕らえる。
「どうした?」
あたしの反応に気付いているのかどこか楽しげで、あたしはちょっとだけムッとする。
「意地悪い事しないでくれませんか」
「意地悪い事ってどんな事だ?」
さも分かりませんって表情をして、教官はまたあたしの背を指で撫で始めた。
ゾクゾクするような、それでいてもどかしいような感覚に、自分でもどうしたらいいのか分からなくなって。
「きょ、かっ・・・!!」
ギュって教官の頭を抱き締めるような形になると、堂上教官の唇があたしの肌に触れる。
ただそれだけで、あたしの心臓が壊れるんじゃないかと思うくらい早く動き出す。
「心音が速いな」
「・・・堂上教官のせいです」
「だとしたら嬉しいな」
「どうして?」
「それだけ俺の事を意識してくれてるって事だろう?」
別にこんな事されなくたって、いつだって教官の事を意識してる。
手塚が教官の部屋飲みに参加してるって話を聞く度に、ちょっと嫉妬したりもする。
けど、何か悔しいから教官には言ってやらない。




そうして、こっそり教官の頭に口付けた。






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