|
「教官っ!!」 「・・・なんだよ」 清々しい朝の空気に似つかわしくない上ずった声。 「なんだ、じゃありません!ここ!ここですよ!」 「・・・・・・は?」 慌ただしくバスルームから飛び出してきた郁は浴衣の襟元をぐっと広げ首筋の辺りを俺に見せてきた。 ・・・お前、ホント、止めろよ。 ほっそりとした白い首筋を朝っぱらから目の前に差し出されてる男の状況を考えろ。 しかしこちらの心情も虚しくも伝わらず、郁は何故か怒ったままだ。 「今日は大学のOB会に行くって言いましたよね!」 「・・・だからなんだ」 つーか、大体恋人との休みの日にほかの男が集まるところ優先するかフツー。 ―――そもそもOB会の方が先約だったということは一切なかったことにする。 呆れ混じりの声で返せば郁は必死に訴えかける。 「っ、だから、この、き、キスマークですよ!」 顔が見事に朱くなってきている。今時キスマークの一言で朱くなる奴なんて見ないぞお前。 「・・・・・・だから?」 「こ、こんなの周りに悪影響与えちゃいます!」 全く判ってねぇ・・・。悪影響って、なんだ。 お前が行くのはオトナの集まりだろうが。 「なんでこんな見えそうな所に付けるんですか!」 ご立腹の郁を目の前にし、俺は呆れる思いでいっぱいだ。 「・・・うるさい」 キーキー文句を言っている郁の口を塞いだ。 反射的に逃げようとする郁の身体を捕まえる。 そして紅い刻印にもう一度吸い付いた。 そんなの―――見せ付ける為に決まってんだろ! 「ちょ!ぎゃー!!また!!何するんですかぁっ!!」 「お前ちょっと黙れ!」 |