オリキャラ(教官の再従妹設定)出ます。 百合っ子が苦手な人もバックプリーズ。





今日は一月ぶりに、妻である郁と出かけることができる。
郁が錬成教官になって約三ヶ月。
特殊部隊で通常勤務の自分と郁のシフトが変わってしまい、郁とそういう関係になってからここまで公休が重ならなかったのは初めてだったりする。
まぁそんなわけで今日は朝から気分がイイ。
「ちょっと主任に後期の錬成計画書出してくるね」
と昨晩遅くまで練っていた計画書の入った茶封筒を片手に出ていった郁を見送ってそろそろ30分。
その間に朝食に使った食器を片づけ、ゴミを分類し、と簡単に家事を片づけを終わらせる。その後迎えに行ってそのまま出かけても良かったのだが、入れ違いになってもタイムロスを生むだけなので郁が戻ってくるのを待っている現状。
一緒に行けば良かったと後悔したのは、呼び鈴に応じて玄関を開けた瞬間だった。
後悔先に立たず。全く昔の人は良く言ったものだ。





「やっは〜☆」



思わず思考停止。
えぇ〜っと・・・なんか変なのが目の前にいる。
コレハイクジャナイ・・・。
一瞬で理解出来たのはそれだけで、脳は激しく認識を拒否してる。
コノイキモノハナンダ。
正直確認もせずにてっきり郁だと思いドアを開けて迎え入れる態勢をとったことを激しく後悔した。
というか郁が呼び鈴なんか押すか?必要ないだろ。
普通なら分かりそうなことも今日は浮かれ気分で全然だ。



「いや〜清々しい朝だね全く。ご機嫌麗しゅう、再従兄殿」
俺の苦悩を全く感じ取るわけもなく目の前の奴、御厨 麗美(みくりや れみ)は似つかわしくない爽やかな笑顔で挨拶をした。


――何だコレは。



「・・・何しに来たんだよ」
とげんなりとした声で尋ねる俺に、それはもう似非臭さ全開の顔で麗美は言いやがった。
「再従兄様のご機嫌伺いに?」
「何企んでるんだよ・・・」
「やっだぁ〜企むだな・ん・て、・・・・・・。
 郁お姉様はいらっしゃる?よね!今日お休みでしょ?ネタは上がってんのよ!」



「ちょっとー!いきなり閉めないでよ。足挟んだでしょ!!」
「えぇい!お前なんて帰れ!!つーか足ど・け・ろ!!郁ならおらん。というわけでさっさと帰れ!さぁ帰れ!!」
ドアを閉めようとしたとたん、ドアの間にちゃっかり足を滑り込ませて、しっかりと片手でギリギリとドアを開きにかかってやがる。
ちょっと待て!お前女だろ!!??なのに何で片手で止めてるんだよ。
むしろ、俺より郁の血縁者だろ、お前!



「鍛え方が足りないのよ」
「何処鍛えてんだよお前はよ!!」
「郁お姉様御自らの手解きで」
「答えになってねぇ上に、その答えも間違ってるだろ!」
「護身術習いたいんです、って言ったら快く引き受けてくれたもん。
 あらよっと」
って足でドア蹴り開けるな!!慎みをもて慎みを!!
「ちなみに得意技は郁お姉様直伝の大外刈りです!」
そんな情報要らんわ!!
つか、郁も郁で何、俺の知らないところで現役女子高生になんてもの教えてんだ!



「まぁ、別に閉め出されても全然全く構わないのよ?私は外で待ってれば良いだけだし。
 そしたら篤兄より先に郁お姉様に会えるわけだしー。
 あぁ、だったら外で待ってて篤兄は用事があるとか言って、代わりに私がデートするってのもいいわねぇ〜」
「―――入れ」
「コーヒーは豆から淹れてよ」
「図々しいな、オイ!」
この辺りの図々しさは、やはりウチ、というか妹の静佳と瓜二つで頭を抱える。
よりによっていらん部分を受け継ぎ過ぎだ。
そして郁はそんな厄介なもんを惹きつけすぎだ!




「ていうか、何でお前は今日郁が休みだと知っている」
「あら、そんなの簡単よ。連絡が回ってきたもの」
「ちょっと待て。なんだそれは!!??」
「あ、勿論郁お姉様じゃなくて、麻子お姉様からね」


――外堀作戦!!??


つーか、いつのまに柴崎まで。
というか。
なんてことしてくれてんだよ、柴崎!(「あら?恋愛は少しぐらい障害があったほうが燃えるってものでしょ」っていらんわ!)




なんて言うか・・・
一番やっかいなのは郁本人でも、御祭体質の隊の連中でも、ましてや柴崎なんかじゃなくて、今目の前にいる赤の他人とは言えない中途半端に血のつながりのあるコイツじゃねぇーのか?




つーか郁。
なんで、よりにもよってコイツの目の前に現れたんだよ!



そもそも、どうして麗美と郁が出会ったのかというと、理由は簡単。
行き過ぎたナンパにあってるところに、颯爽と郁が現れたのだ。
その後は予想するのも簡単で、大立ち回りをしてチンピラ共をブチのめした郁に麗美が一目惚れ。
という何とも単純で至極面倒くさい出来事があったりしたのだ。



素はどうもこうも破天荒な麗美だが、通っているのは一流の女子高、聖華女学院。その制服を着ているだけで騙される男は多い。
私服のときはそうでもないが、制服を着ているときは流石に大人しくしていなければならない。
普通の男なら聖華の生徒に気安く声をかけるということはなく遠巻きに見ているのが常だが、(なにせあそこはお抱え運転手つきの超高級車での送り迎えが普通の学校だから)、その時ばかりは相手が悪かったというか、何も考えていない男達が声をかけてきた。
世間知らずな箱入り育ちのお嬢様だとでも思ったのだろが、まぁ、そこは麗美なので、手は出さずとも口はしっかりと出し、それに男共が激昂したためちょっとした騒ぎになった。
しかも一方はあの聖華生、と注目を浴びない方がおかしい。
そして、そこにたまたま、いっそ悪すぎると言えるタイミングで柴崎と出かけていた郁が騒ぎを嗅ぎ付けてやってきて―――以下略。



いや、本当ならそこで、「ありがとうございます。助かりました」程度で、もしくは「お礼にお茶の一杯でも」くらいで収まっていたはずなんだ。




・・・俺が連絡さえしなければ。





麗美がいる時にうっかり、電話をかけてしまい、あとは芋蔓式に。
勿論麗美が年上の親族に遠慮なんてするほど可愛らしい性格をしているわけもなく。
むしろ、コレ幸いとばかりに距離を縮めようと画策する始末。




―――だから、なんであのタイミングで掛けたんだよ俺・・・!!




激しく自己嫌悪に陥ってる堂上をさも愉快そうに見つめる麗美。



そして、「篤さん、ごめーん。お待たせしました!」とパタパタ戻ってきた彼女を先に出迎えたのは彼女の帰りを心待ちにしていた夫ではなく。
満面の笑みを浮かべたその夫の再従妹の少女の方だった・・・。






お待ちしておりました、お姉様!






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