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「ねぇ。手ぇ出して」 とにっこりとした柔らかな笑みで言われたから。 思わず、出してしまった。 その柔らかな音と色と温度にはなぜか逆らえない。 ぴとりと手の平が合わせられ、それから一本一本、順々に合わせられていく指先。 ゆっくり触れていく自分の手と、郁の手から目が離せなくなる。 ぴったりと手の腹まで合わせて、視線を合わせるように見上げてきた郁と目が合う。 何が嬉しいのか、楽しいのか、郁は一層にこりと笑った。 「手の、しわとしわを合わせて、」 「・・・」 「しあわせ」 ね?とちょこんと小首を傾げて可笑しそうに、楽しそうに微笑んだ目の前の彼女が、物凄く愛しいと思う。 「・・・なんだ、それ」 「テレビでやってた」 それやってる子たちがむちゃくちゃ可愛かったんだぁ〜。 なんて。 「それに、こうすると、温かくて、なんとなく嬉しくなるでしょ?」 ニコニコとやはり嬉しそうに笑う郁はやはり幸せそうだ。 「篤さんにも、シアワセのおすそわけ」 笑う彼女は、やはりどこまでも幸せそうで。 そして、自分も。 こうやって笑い合える瞬間を「幸せ」と呼ぶのだろうな、と思った。 |