一万年と二千年前から愛してる
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった
一億と二千年たっても愛してる



「この詩ってさ、なんか父さんと母さんみたいだよな」
「―――うえっ!?」
「おい。なんだその声。嫌なのか」
「やじゃないです!やなわけないじゃん!有馬がいきなり変なこと言うから驚いただけだし!」
「変じゃないだろ」
「へ、変じゃない、です、けど・・・。
 えっと・・・キョウシュク、です?」
「何だそれ。その返し方もおかしいだろ。
 お前はホント可愛いな」
「にゃっ!」
ウチの父さんは一日一回、母さんに可愛いと言わないと死んでしまう病に掛かっているに違いない。ってくらい毎日毎日母さんのことを可愛いという。一日一回じゃきかないけど。
そして言われる母さんも母さんで、毎日毎日言われ慣れてるはずなのに、真っ赤になった顔を両手で隠す。毎回毎回顕著に反応して恥ずかしがる姿は相変わらず可愛い。
母さんを可愛いと思う病気は遺伝です!
顔を真っ赤にさせた母さんをニヤニヤと緩みきった顔で眺めている父さんはここぞとばかりにどストレートの言葉を繰り出す。口下手だというが、開き直った父さんはマジ強い。
「郁は違うかもしれないが、俺は一億と二千年後もお前と一緒にいたいと思ってるぞ」
「なっ―――!そんなのあたしだって!っていうかあたしのほうが一緒にいたいって思ってるもん!」
だって、絶対!あたしの方が好きだし!!
そして毎回繰り返される母さんの大告白。
それを聞いた父さんは大変ご満悦な表情を見せる。
毎度毎度飽きないのかと言われそうなことを毎度毎度繰り返すのがウチの両親だ。実際飽きることがないから繰り返すのだろうけど。
冗談抜きで、一億と二千年前から一億と二千年後もお互いに毎日恋しなおしてそうな二人だ。



「―――いいな」
「何が?」
「父さんと母さんは前世も来世も繋がってそうだと思ってさ。なんか、そーいうの羨ましいなって」
言えば、
「何言ってんだ」
と父さんが呆れた様に言い、
「その時は有馬も一緒に決まってるじゃない」
と母さんが当たり前だと笑う。
「俺と郁がいて、お前がいないとかありえんだろ」
「そうそう。あんたはウチの子でしょ。どこの子になるつもりよ。誰にもあげないんだから!
 ・・・有馬は、嫌かもしれないけど」
「なわけないじゃん!!俺の父さんと母さんは父さんと母さんしかありえないし!」
ああ!もう!大好きすぎる!!



そんな中、「あ、あのね」とおずおずとした感で母さんが言う。
「あ、あのね、二人とも」
「何だ?」
「何?」
「あの。その。ホントにね、一億と二千年なんて、そんなワガママは言わないからさ。
 せめて。せめてね、あと50年くらいでいいから、一緒にいてね?」
なんて、子供のようにきゅっと指を掴んで見上げるようにしてお願いする母さんの姿に俺と父さんの心臓はブチ抜かれたね!


―――だから、そういうとこが可愛いんだ!!


「そんなの当たり前だろうが!」
「どこがワガママ?!全然そんなことないし!つーか母さんはもっとワガママ言うべき!!」
「つか、俺は一億と二千年後もお前と一緒に居たいって言っただろ!何勝手に50年で畳んでんだ!」
「きゃん!」
男二人に詰め寄られて、母さんが小さく身を竦めて「ご、ごめんなさいっ」と謝る。
なんだそれ仔リスか!どんだけ可愛いんだ!!





一億と二千年なんて言いません。


むしろ三人合わせて三億と六千年くらい余裕です!!






















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