バフン、という衝撃に目を覚ますと、目の前にキラキラと輝く母さんの顔があった。



「ちょっ、母さん!」
「おはよー有馬。お寝坊さんね。
 ほら、起きて起きて」



笑いながらそう言って、母さんは追い剥ぎのようにタオルケットをめくり上げると、そのか細い身体に見合わない、なんとも力強い勢いで、夢の端に腰掛けていた俺を引き上げ、ベッドから引きずり出した。




朝からなんだ苦笑していると、「あなた、お風呂にします?それともお食事?」と聞くような顔をして、「プール?それとも朝ごはん?」と聞いてきた。



黙っていればモデル風美女。
それが俺の母さんに対する大方の評価だ。
俺の友達も、家に来る奴や、学校行事に参加する母さんを見た奴はみんな彼女に会うとびっくりする。
そりゃそうだ。
既に四十路に突入しているというのに、シミひとつない白い肌。きりっとした美しい眉毛に長い睫毛。頬はバラ色で唇は赤く、人形のようにバランスの良い顎のライン。
綺麗な顔の下へと目をずらせば、すらりとしたバランスに見合ったバストに、美しくくびれたウエストに、ほっそり長くしなやかな手足。
ちょっとその辺を歩いたくらいじゃお目にかかれない美女だ。身内贔屓といいたきゃ言え!マザコン?上等!!俺の母さんは世界で一番可愛いんだ!!
しかし、実際、あっけに取られている友人達を前に、そんな母親と一緒に暮らしている俺は、ちょっと、―――嘘。かなり鼻が高い。




しかし。
黙っていれば、と頭につくことを忘れてはいけない。母さんの真髄はそんな一見した容姿だけではないのだ。
どこぞのモデルかという容姿の彼女は、戦闘職種としても有名な図書隊の防衛部、その精鋭部隊である特殊部隊の初の女性隊員であり、ヤクザやテロリストまがいの奴らにだって素手だろうと立ち向かう肝の持ち主とか、俺の母さん格好良すぎるだろう?!
しかししかし、だからといってその性格は厳ついものかというとそうでもなくて、普段の母さんは、子供みたいに喜怒哀楽がはっきりとしていて、見ていて微笑ましいタイプだ。美味しいものを食べた時に見せるふにゃんとした笑みだとか、ちょっとした失敗でシュンとする顔だとか、拗ねて頬をぷっくりと膨らませる顔とか、どんだけ可愛いのかと・・・!
もう、マジうちの母さん最高すぎるだろ!!



「ねぇねぇ、プール?ごはん?」
もう一度可愛い顔して上目遣いで聞かれたら、つい答えてしまった。
「・・・・・プール」
「やったぁ〜!じゃ先行って待ってるね!早く着替えておいで」



わーい、と飛んで出て行った・・・・・・・。
そんな勇ましい割りに存外甘えん坊で子供みたいな母さんが可愛くて、俺は死ぬ。萌えすぎて。



夏の休暇を利用してやってきたヴィラには芝生の庭に設えた屋外プールが付いていて、そりゃもう母さんのテンションはだだ上がりだった。
単純な競泳は元より、誰が一番潜っていられるか?、誰が一番飛び込みが綺麗か?
もう到着してからのはしゃぎっぷりは本当可愛くて仕方がなく、俺の隣で世界で一番可愛いのは俺の嫁!と豪語する父さんもデレデレだった。




父さんが夏の旅行にプールやビーチが付いている場所を選ぶのは、当然に母さんのためだ。
職業柄、あちこちに傷がある身体を人前にさらしたくないだろうから、と父さんに遠慮して母さんはプールや海に行きたいとは口に出さない。
けれど、そういうところで遊ぶことが好きな人だということは分かっている。
そしてそういう母さんを見るのが好きで、かつ、そういう母さんを人に見せたくない父さんなので、ある意味当然の選択と言えば選択だ。
母さんは「ちょっと贅沢しすぎじゃない?」とか言うが「たまの家族旅行なんだから、ここで奮発しないでどうする!どうせだったら家族水入らずで過ごしたいだろ?」という父さんの意見が毎年通るというわけだ。




着替えて、バスタオルと競泳ゴーグルを持った俺はプールサイドへと急いだ。
あれ?
「ああ、来たか」 と筋肉質な男がリクライニング・チェアに横になった状態で手を上げた。
まぁ、それは俺の父さんなわけだが。
「おはよう。よく眠れたか?」
「母さんに起こされるまでぐっすり」
「旅行前日までみっちり部活だったもんなお前」
「父さんだって仕事だったじゃん」
「お前とは鍛え方が違うんだよ」
と笑って返された。



競泳をしても飛び込みをしても潜っても。
中学に入学してから水泳で母さんに負けたことはない。
運動神経抜群の両親の血を受け継いでいるし、それなりに運動もしている。
だけど。
どうやっても父さんには敵わないんだよなぁ。
何をやっても。



「父さんも泳ぐの?」
そう聞くと、
「いや、俺との勝負はとっくに終わった。だからお前を呼びに行ったんだよ」
と笑った。
「俺は計測係りだ」と時計をトントンと叩く。



なるほど。
早朝から夫婦ふたりで散々に楽しんだ後ってわけか。
俺の両親はいつまでたっても付き合いたてのカップルのように仲がいい。
「―――起こしてくれたらよかったのに」
「お前も疲れてるだろうと思ってな」
「俺だって、母さんと遊びたい」
少し拗ねたように言えば「そりゃ悪かった」と父さんは苦笑してポンと頭を撫でる。



「んじゃ、思いっきり遊んでもらえ」
父さんが目を細める先を見ると、朝日を浴びて、ますます綺麗に輝く母さんが「朝ごはんこっちで食べようと思って、持って来た!」と嬉しそうに走ってきた。
普段露出を好まない母さん。というか、何より父さんが良い顔をしないので過度の露出のない母さんだが、今日の格好はブルーのマリンボーダーの水着だ。モデル体形な母さんは見事にビキニを着こなしている。
普段は隊服、あるいはパンツスーツで隠れている肌は日焼け知らずだ。白く眩しい肌にすらりと伸びた美しい脚が惜しげもなく晒されている。
当然この水着は父さんのセレクトだ。この歳で恥ずかしい!と母さんは最初遠慮していたが、「俺たち以外誰もいないんだから!少しくらい、な?つか、此処で着ずどこで着る!」と熱心に勧めた結果だ。
他の野郎に見せたくないが、俺は見たい!そんな願望丸出しだ。
だけど、そんな父さんの嗜好には俺も賛成だ。
母さんの可愛い姿を見れるのは家族である俺と父さんの特権なのだから!
言動のせいか実年齢より随分と若く、というか幼く見える母さんのビキニ姿は色気よりも溌剌とした活気の方が強い。
手を振ってパタパタと駆け寄る姿はまさに少女だ。
ま〜ったく可愛いよな。なんで俺の母さんってこんな可愛いのか。天使か?天使だな。
頬を緩めていると父さんがきっぱりと言う。
「俺のだからな」
「わかってるって!」
大声を上げると、父さんは「悔しかったら、もっと可愛い彼女を連れて来いよ。まぁ無理だと思うが」と笑った。








母さん以上に可愛い女とか居るわけないだろ!!




















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