保冷袋の中から弁当を取り出して、机の上に広げる。
「堂上の弁当ってさ、極端だよな?」
「何が?」
「基本は色とりどりの豪華ー!な弁当なのにさ」
「―――あぁ」
箸を取り出し、「いただきます」と小さく手を合わせる。
この辺りの行儀に五月蠅いのは実は子供っぽいと称される母の方だったりする。
物心ついたころから徹底して叩きこまれたので、これはもう習慣だ。
「今日はおにぎりと、卵焼きにウインナーにお浸し?まぁオーソドックっちゃオーソドックだけど。
 昨日は飯は三色そぼろだっけ。煮物の人参、椎茸は飾り切りで、こんにゃくは何か結んであったし」
「手綱こんにゃくな。あれすると味の含み良くなんだよな」
「詳しいな」
「ウチ共働きだからな。最低限の家事はできるようになれって」
「へー、しっかりしてんだなお前んとこのお袋さん。ウチも共働きだけど、これで飯買っとけって金置いていかれるくらいだぜ、ウチは」
「母さん以上に、父さんがな」
「なんかそれも珍しいな。厳しい?」
「厳しいっつーか、母さんに甘い」
両親ともに規律に厳しい戦闘職種だからなのかは分からないが、礼節には厳しいが理不尽な締め付けはない。
父さん限定で、ただし母さんに関することを除く、という感じだが。
「母さんの負担になるな!って言われて育ってるから、俺」
「―――それはそれですげぇな。え、じゃあ何?今日のはまさかの自作?」
「や、母さん。子供の弁当は母親が作って当然って思ってる人だから」
「昨日との落差すごくね?」
「昨日のは父さんだ」
「―――お前んとこの親父さんスゲェな」
「母さんを甘やかすことに生きがい感じてる人だから。弁当は時間がある方が作ればいいって母さんを説き伏せた」
そして毎朝、当たり前のように早く起きるのは父さんだ。
「で、そんな親父さんは?」
「今日から出張」
「あ、成る程ね。因に今日の晩ご飯は?」
「・・・多分、鍋」
「夏なのに?」
「父さんから、俺がいない時に無理して手の込んだもの作るなって言われてるから」
「・・・そんなに?」
「まぁ母さんあんまり家事に関して器用な方じゃないし。
 父さんいない間なんかあっても困るから俺としてもそっちのが安心」
父さんの教育の賜物なのか、結局のところ俺も母さんに甘い。

























「・・・っていうことがあったんだけど。」
スーツケースを片付ける父の背中に投げかける。
「ふぅん。まぁあれでも昔より大分マシになったんだけどな」
初めの頃なんて外丸焦げで中は生なんてしょっちゅうだった。
と随分と柔らかい顔で言う父に、少しこちらが赤くなってしまう程で。



両親を残してリビングを早々に退散。
明日の弁当に期待して。



















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