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 とても、安心できる……この場所は優しいから。

だから、それは心地よい眠り。

 

 

見上げる寝顔、キミの唇

 

 

「……?」

 目が覚めて、それでもまるで夢の中。

 現実と思う事を躊躇わされるほどに、幸せで綺麗な時間だから。

「春歌……」

 穏やかな寝顔。

 安らかな寝息。

 優しすぎる肌のぬくもり。

 ほのかに漂う優しい香り。

「…………」

 全身で、全感覚で春歌を感じる。

 とても、とても嬉しくて……忘れたくなくて、その感触を心の奥底に閉じ込める。

「寝てた……のか」

 冗談半分――本気も、半分――に膝に甘えた俺。

 そんな俺をくすぐったくなる微笑みで受け入れてくれた春歌。

 その二人。

 この世界に、たった二人。

「ありがとう」

 呼吸のため、僅かに開いた小さな唇……

 そこを見つめながら囁く。

 それでも行き場を見つけられなかった愛しさが、無意識に手を伸ばさせる……艶やかな、髪。

「綺麗、だな……」

 さらさらと、指先に切なくなるような感触を残して零れていく。

 僅かな灯りさえも返し、最高の装飾に変えながら。

「すごく、綺麗だ」

髪は女の子の命と言うけれど……

それなら、春歌の髪で遊ぶ俺は春歌を自分のものとして許されるのだろうか?

そうであって欲しいと思う。

そうであるなら、これ以上嬉しいことはない。

「許して、くれるか……?」

 そう問いかけても、綺麗な寝顔は動かない。

 それでも、そんな表情を見せてくれていることを免罪符にして……そっと、頬に触れる。

 その場所を、最も素敵な感情で染めたくて。

 春歌のココロ……その繊細な琴糸を、震わせたくて。

 

 

 …………

 

 

「ん……」

 うっすらと開けられた瞳。

 その視界を、独り占めできる……そんな幸せの形。

「おはよう」

 その言葉に、瞬く瞳。

 凛とした光が蘇える。

「兄君……さま」

「ああ」

 瞳同士の距離と、添えたままの手……

 戸惑いは、見せないで欲しい。

 それを理由に箍が外れそうになる。

 まあ……

「起きたばっかりだけど」

「ぇ……?」

 どちらにしても……結果は同じ、なのだけれど。

 不思議そうな表情を引き寄せる。

「もう一度……目、閉じて」

 言ったままに、大人しく……

 僅かにくちびるが上を向く。

「可愛いよ」

 望んでくれる。

 だから、許される。

 胸を突く感情は激しすぎて……それでもただ一つのことを命じる。

「…………」

「……はい」

 月並みの台詞……でも、それでも。

 伝えられるなら、それでいい。