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「兄君さま……」
「うん……?」
「そろそろ、流します」
さっきまでずっと触れていてくれた春歌の指が離れる。
でも、すぐに暖かい流れを伴って戻ってくれる。
「熱かったら、言ってくださいませね」
いつも傍に……優しく、優しく。
Tenderness
「はい……終わりました」
春歌の細く綺麗な指。
着物を繕って、花を活けて、琴を奏でる指……今は、真新しい換えの包帯を小さく結んでくれる。
「ありがとう……春歌」
「いいえ、兄君さまにならこのくらい……当たり前ですわ」
そっと両手で、抱きしめるように……
まだ痛みが引かない手、すっと和らぐ。
「ワタクシ、兄君さまのお役に立つためにここにいるんですもの」
「……ありがとう」
手を繋いだままで、軽く唇を触れ合わせる。
「ぁ……兄君さま」
少し離れると、春歌の手がこちらの前髪に伸びた。
「ん……何?」
「まだ少し、濡れています」
言うが早いか、そっと身体を離す……
「いや、いいよ。すぐに乾くって」
「いいえ、そんなわけにはまいりません」
数秒後……日向の香りのタオルに頭を包まれる。
「じ、自分で拭くから……」
「いけません」
柔らかい、制止。
「ワタクシに、させてくださいませ」
春歌の両手……暖かくて、嬉しくて、優しくて。
「きゃっ……?」
そのまま、春歌の胸に抱かれてしまいたくなる。
「あの……兄君さま?」
「ゴメン……」
けれど、身体は凍りついたように動かない。
「すごく、情けないけど……少しだけ」
「…………」
「少しだけ、このままで……」
居させて欲しい……
その言葉、最後まで言わせてもらえなかった……
「はい……」
抱きしめられる。とても優しく、苦しいほどに……
「兄君さまの望まれるままに」
優しいのは、春歌の手。苦しいのは、俺の鼓動。
「ん……」
「ワタクシも、こうしていたいですから」
この気持ち、本当に表せる言葉が見つからない。
多分、これからも探して……そして、ずっと一緒にいる。
END