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刹那の永遠
なぜ自分はこのような苦しい想いを、荊の道を進む事を選んだのだろうか。
叶わない想いなのに。
契る合うことも出来ないのに。
いつかはピリオドを迎える関係なのに。
けど、現実の残酷さに打ちのめされて絶望を見るために自分はあなたに心寄せたわけではない。
幼い頃から追い続けた優しいぬくもり。愛しさに溢れた言葉。自分を包んでくれる腕。私は追い続けながらアナタに依存していく。
アナタがいないと私は弱いから生きてはいけない。私は自分が生きていく為にアナタに依存している。
アナタを愛するということで自分は気の遠くなるような幸福感に包まれる。それが狭い世界での刹那なモノだとしても。
誰にも祝福されない想いなど。天すらサジを投げる想いなど。想いの先にあるのは笑顔でいられる幸福などではないだろう。
解っている。それは私は痛い程解っている。
それでも私はアナタを愛したことを後悔しない。
それどころか、まだ私は信じている、祈っている、想い続けている。
絶望を見たいわけでもましてやそれから生じる痛みを感じたいわけでもない。
アナタを愛し、アナタに愛されてないと私は生きていけないから。刹那な幸福とそれに伴う痛みがアナタと私を繋ぐ鎖だから。
そうでなければ私は不安でならないから。
当たり前のように傍にいたアナタがある日突然、私の前から消えてしまう。そんな夢を何度も見た。そして夜空を見上げ涙しながら私は
祈る。切に祈る。
永遠に・・・アナタの傍にいたい。
愛しているから。この想いは本物だから。
神サマお願いです。
私の最愛な人を奪わないでください。
永遠に私の傍で微笑んでいて欲しいのです。
この絆が破滅へと誘わせたと嘆きたくはない・・・・・・
「お兄様ゴメンナサイ、待った?」
今日はお兄様とのデートの日。いつもなら私が先に待ち合わせ場所で待っていて、お兄様が「咲耶、ゴメン待った?」と言うのだけれど、
今日は行く前に少しうたた寝をしちゃって私焦っちゃったわ。だから私、慌てて家を飛び出して息を切らして走ってきちゃった。それで
お兄様の前でハァハァと呼吸を乱している私にお兄様は腕時計と私を交互に見て笑ったの。
「うんにゃ、約束の時間までまだ15分もあるぞ」
「たった15分?」
「なんでそんなに不満そうな顔をする」
「だって、いつもなら1時間は早く私が来て、そしてお兄様はその10分後にはやってくるのよ?つまり約束より50分も早く二人は
出会えるのよ?たかが50分だとお兄様は思うでしょうけど、私にとって50分も早くお兄様と会えて50分長く一緒に居られるのは
ダイヤモンドよりも貴重なモノなのよ。解る?」
そんなもんかねぇ。とお兄様は呆れたように苦笑したわ。もう!本当にお兄様ったら乙女心が解ってないんだから!!
けど、私のそんな気持ちが伝わったかどうか解らないけど、お兄様は突然私の手を優しく握って、自分の頬にあてたの。そしてゆっくりと自分の唇
に移動させて、今度は手の甲を唇にあてたの。私、驚いてお兄様を見上げたの。そしたらお兄様ったら。
「まぁ、これで落ち着いてくださいな、お姫様」
とか言ってまた笑ったの。何か、今日のお兄様ったら少し大胆だわ。私のラブが伝わっている証かしら?ウフフ。
そして、お兄様と私は歩きだした。空は隅の方がややオレンジ色に染まり初めていた。そう、今日のデートはいつもと違う夕方デート。
お兄様と一緒に街はずれの丘にある小さな公園で夕焼けを見ようって前々から約束してたのよね。
私はお兄様の腕にしがみ付いた。お兄様は突然しがみ付いてきた私に驚いて「さ、咲耶!?」とか言って慌てたけど、結局は少し頬を
紅くしながら黙認してくれた。優しくて可愛いお兄様。
お兄様の腕に頬を寄せると、服越しに伝わってくるお兄様の温もりと匂い。五感のすべてがお兄様を感じたとき、私は心の底から安堵した。
お兄様はここにいる。私の傍にいる。こうして私はお兄様に触れられる。
あんな夢を見た直後だからだろうか。私は目尻に安堵の涙が滲んできた。私はそれを隠す為にわざとお兄様の腕に顔を埋めた。
「お、おい咲耶、歩きにくいだろうが」
「いいじゃない。お兄様の腕に抱かれて歩きたいだもん」
「抱く身にもなってくれよ・・・・・・」
「嬉しくないのお兄様?」
「いや、そういう問題じゃなくてだな・・・」
他愛ない会話をしながら私はつい先程見た夢を思い出していた。
思い出したくない悲しい夢を。
何もない。ただどこまでも真っ白な世界が私の眼前に広がっていた。
私はぼんやりと立ち尽くしていた。
・・・・・・ここはどこだろう。
当りを見回しても何もない。誰も居ない。何も聞こえない。白が統べる世界に自分一人がいた。
いや、自分の目の前に人がいた。それも誰よりも一番知っている人。世界中の誰よりも愛している人。
・・・お兄様!
お兄様が笑顔で私の前に立っていた。私は嬉しくなってお兄様の元に駆けていこうとした。
けど、出来なかった。
私とお兄様の間を遮るかのように小さな女の子が現れたのだ。白いワンピースを着ていて、手には白い薔薇の小さなブーケを持っていた。
私はその女の子の顔を見て息を呑んだ。
その少女は私だった。幼い頃の私だったのだ。
幼い私は後ろにいるお兄様と同じで笑顔だった。無垢で無邪気で、この世界のような真っ白な笑顔。
私が呆然と「私」を見ていると「私」は笑顔のまま明るい声で私に告げた。
「貴女はこれ以上来ちゃ駄目だよ」
その言葉に私は目を見開いた。なんで?どうして私はお兄様の所に来ちゃ駄目なの!?
「私」は笑顔のまま明るい口調で告げる。
「だって、これ以上進んだら貴女は一生癒されない傷を負うことになるんだから」
癒されない傷?何のことなの?私はそんな傷を負う理由なんてこれっぽっちもないわ!!
「嘘吐き」
「私」は無邪気に私を罵倒した。
「嘘吐き、貴女は知っているはずよ。これ以上お互いを求め合ったら絶望を見てしまうということを」
私は「私」の言葉に絶句して青ざめた。わけもなく身体が震えだしてきた。
「私」は笑顔のまま言葉を続ける。
「お兄様は”お兄様”以上にはなりえない。貴女も”妹”以上にはなりえない。愛を誓いあったって結局は家族に対する愛情以上には
なりえない。身体を触れ合わせても契りあうことはありえない。そんな事をしたら世界は貴女を破滅へと追いやるわ」
私は耳を塞いだ。髪を激しく振り乱しながら首を横に強く振った。頭の隅でその行為が無駄だと解っていても私はやめられなかった。
いや、聞きたくない。そんな事聞きたくない!!どうしてずっと傍に居る事が罪なの!?どうしてありのままにお兄様を愛してはいけない
の!?どうしてお互いを求め合ったらいけないの!?ただ私はあの人を愛しているだけなのに!!
「それはインモラルなことなのよ?」
そんなもの誰が決めたの?昔の偉い人間が勝手にタブーにしただけじゃない!この想いは誰も否定する資格なんてないわ!!
「それは世間から石を投げられることなのよ?」
心狭い人間達の罵声なんて私は恐れないわ。私達を受け入れてくれる場所ならどこかにきっとある筈よ!!
「それは親や友人達を嘆かせることなのよ?」
構わない。私はお兄様さえ居れば他に何も望まない。お兄様以上に嘆き悲しませたくない人なんていないのだから。
「じゃあ、お兄様は?」
「私」の言葉に私はビクッと肩を揺らした。
「貴女はさっきから自分は平気って言ってるけど、お兄様はどうなの?お兄様の事を考えてるの?お兄様は世間から石を投げられること
に耐えられるの?お兄様の親、友人が嘆く事にお兄様は平気なの?そもそもお兄様は貴女程に貴女を思ってるの?」
私は金縛りにあったかのように動けなくなった。ただ青ざめた顔を「私」に向けるだけであった。
「私」は笑顔で静かに言葉を続ける。
「貴女の独りよがりな考えでお兄様を苦しめる資格が貴女にはあるの?貴女の独占欲を満たす為だけにお兄様を絶望へと誘うの?貴女の
我侭だけでずっとお兄様を縛りつけることが本当にできるとでも思ってるの?」
やめて・・・・それ以上言わないで!!聞きたくない!!!直視したくない!!!突きつけられたくない!!!!
私は膝をついて蹲った。「私」の声が頭に響く。
「今なら引き返せる。今なら将来振り返ってみて”あぁ、美しい思い出だった”と言えるのよ。僅かな幸福を得る為に取り返しのつかない絶望
を呼ぶことはないのよ」
私は声にならない呻きを口端から漏らした。そんな事できるわけがなかった。それは私にとって死刑宣告を告げられるぐらいに恐怖を感じた。
助けて・・・お兄様。私、潰されそう。恐怖と悲哀に潰されて白い世界に消えていってしまいそう。助けてお兄様。お兄様!!
ゆっくりと顔を上げると、お兄様は笑顔で立っていた。けど、お兄様と目が合った瞬間。お兄様は私と「私」の前から消えてしまった。まるで、今
までその場にいたのが幻だったかのように。
お兄様!!私を置いていかないで!!お兄様!!!
「叶わない願いなのよ」
半狂乱になってお兄様の名前を呼ぶ私に「私」はポツリと呟く。
「どんなに想い続けても、どんなに愛しても、どんなに苦しんでも叶わないのよ」
私は「私」を見た。「私」は笑顔だった。けど、その瞳からは涙が溢れ、静かに頬を伝った。
「私」は手に持っていた白薔薇のブーケを上に高く投げた。私は無意識に目でソレを追った。ブーケが白い空に舞った瞬間。私の意識は
暗転した。
「永遠の愛って、本当にあるのかなぁ?」
「私」の悲しみに満ちた声が遠くから聞こえた・・・・・・
「・・っや!・・・・咲耶!!」
私はお兄様の声で我に返った。隣を見上げると、お兄様が心配そうな顔をして私を見ていた。
「大丈夫か?さっきから一言も喋らないで黙って俯いてたし、声かけてもなーんも答えやしねぇし」
私は呆けたように辺りを見回すと、既に私達は目的地である公園の展望台まで来ていたの。お兄様は私の顔を覗きこんだ。
「なぁ、どっか体調が悪いなら今日はもう帰るか?」
「う、ううん!なんでもないの!ちょっとボーッとしちゃっただけだから」
私は微笑してお兄様を安心させようとしたけど、お兄様はそれで安心するほど楽観的な人じゃなかった。
「公園着くまで何考えてたか知らないが、歩いてる間のお前、今にも手首切りそうな顔してたぞ」
私は、自分の顔が強張ったのを感じた。
「何かあったのか」
お兄様は真剣な顔で私を正面から見た。私もお兄様を真っ直ぐ見つめ返した。
誠実で優しい瞳。今その瞳は自分だけを映している。
ずっとずっと自分だけを見続けて欲しい。きっと自分は弱くて狭量だから、あなたが自分以外の人間を見てると考えただけで気が狂いそう
になる。ずっと私だけを・・・・・・
叶ワナイ願イナノヨ。
脳裏に「私」の声が響く。
ドンナニ想イ続ケテモ。
嫌だ信じない。絶対信じない。
ドンナニ愛シテモ。
誰がそんなことを決めるのよ?たとえ神サマが決めても私は承服したくない。
ドンナニ苦シンデモ。
私は報われない苦しみを選んだ覚えはない。そんな現実なんて認めない。認めたくない!
叶ワナイノヨ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤダ!!!
私の中で何かが弾けた。
「・・・お兄様、私のことは・・・好き?」
私の唐突の質問にお兄様は怪訝な顔をしたけど、すぐさま真面目な顔に戻って。
「もちろん好きだ」
と言ってくれた。
「ねぇ、その好きは・・・妹として?それとも異性として?」
今度はそう質問すると、お兄様はかなり困った顔をしたわ。「うーむ」と首を捻って考えてたわ。
「まぁ・・・少なくともなぁ、妹としてではないなぁ」
お兄様ったら、ちゃんと答えて欲しかったわ。でも、今はその答えだけで充分。だって少なくとも”妹”としてでは見てないというんだか
ら。
横に少し目を向けた。展望台からオレンジ色に染まっていく街が一望できた。鮮やかな太陽の残照とゆっくりと近づいてくる夜の闇が美しい
グラデーションを醸し出していてとても綺麗に思えた。夢に見た白い世界とはまったく違う。何もかもが鮮烈に私とお兄様を包んでいく。
私はお兄様にしがみ付くように抱きついた。
「さ、咲耶!?」
お兄様が狼狽してるのを無視して、私はお兄様の耳元に唇を寄せた。
「お兄様・・・愛してる」
「咲耶・・・・・・」
だからね。そう囁いて私は手をゆっくりとお兄様の喉に持っていって指に力を込めた。
「!!」
私はお兄様の喉を力一杯締め上げた。お兄様が驚いた顔で私を凝視していた。私は微笑した。愛しさを込めて。
「お兄様、死にましょう?アナタに抱かれて私はアナタを殺す。そしてアナタの胸の中で私も死ぬ。これで”永遠”は叶うはずだから」
狂ってはいない。頭は酷く冷めている。自分でも驚く程に冷静だ。
叶わないなら叶えてみせる。たとえどんな方法だろうとも、私は躊躇い無く実行してみせる。
アナタを誰にも渡したくないから?いいえ、多分違うわ。
私は気づいただけ。どうやったら幸せを、永遠の愛を手にする事ができるのかを。
幸福に包まれながら共に死ぬ。
息絶える最後の瞬間まで幸福だったと感じればそれで永遠は叶うから。
永遠の愛って本当にあるのかなぁ?
こんなにも容易く手に入るのよ。
私は「私」に答える。もう数分後にはすべての痛み、苦しさ、絶望から解放されるのだ。私は二度と最愛な人が目の前から消えてしまうと
いう恐怖に怯えずにすむのだ。ずっと、お互いを求め合ってればいいのだ!
そう・・・・この指先にもう少し力を込めれば。
私は指先にさらに力を込めようとして・・・・・・・できなかった。
お兄様は抗わずに黙って私に首を締め上げられていた。静かに私を見つめているだけだった。それを見て私の脳裏に再び夢の光景が映った。
貴女の独りよがりな考えでお兄様を苦しめる資格が貴女にはあるの?
「あっ・・・・」
私はその言葉を思い出して言葉を失った。
そうだ、私は今、お兄様の事をまったく考えずに自分の欲望だけを自分の独りよがりな妄想だけが頭を支配していた。
私が幸せとお兄様の幸せはイコールじゃない。そんな事とっくに解ってた筈なのに。
お兄様は私と一緒に幸せになりたかった筈だ。それなのに自分は今何をしようとしてたのだ。
私の顔から血の気が失せた。力一杯締め上げていたお兄様の喉を震えながらゆっくりと手離した。
そして、自分は今更ながら気づく。未来に待ち受ける破滅を見たくないが為に、自分は今この瞬間破滅しようとしていた。
いいや、破滅させてしまったのだ!何もしなければまだ続いていたであろう幸福を壊してしまったのだ!!
「あ・・・・あぁ・・・・・わ・・・私・・・」
私は両手で顔を覆った。この場から逃げ出さなかったのは足が震えて逃げ出せなかったからだ。全身の震えが止まらない。このまま錯乱し
てもおかしくなかった。
「あ・・・!」
私が絶望の叫びを上げそうになったときだった。
お兄様が私を強く抱きしめたのだ。私は驚いてもがこうとしたけど。お兄様は私を放さなかった。
「大丈夫だ、落ち着け」
ぶっきらぼうな口調だけど、穏やかで包容力のある声音だった。そんな声に囁かれながら抱きしめられた私は、自分の犯した罪を忘れて
お兄様の温もりに身を預けた。
そして、夕焼けが追い払われて夜の闇が空を占領したとき、お兄様が私を抱きしめながら見下ろして呟いた。
「すまんな、咲耶」
お兄様の言葉に私は驚いて顔を上げた。
「どうして・・・・お兄様が謝るのよ」
「・・・・・・・・・・」
「私は・・・お兄様を殺そうとしたのよ。独りよがりな妄想して、勝手に永遠だとか何とかって言って、お兄様の事なんてこれっぽっちも
考えないで・・・」
私の目から涙が流れた。お兄様は黙って私の話を聞いていた。
「私は最低よ。お兄様の事を世界で一番愛しているのに世界で一番お兄様を信じていない。信じてないから心中して自己満足自己完結し
ようとしてた!私はなんて弱いんだろう!!私は何でこんなにも狡賢い人間なんだろう!!私は・・・・!」
言葉になったのはそこまでだった。後はお兄様の胸の中で嗚咽混じりに自分でも訳の判らない事を言っていた。お兄様はそんな私の髪の毛
を指先で梳きながら「だからだ」と言った。
「お前がそんな思いをして、そこまで追い詰められていたなんて。俺はこれっぽっちも気づいてなかった。俺がもう少しまともにお前の
想いに答えてやってればよかったかもしれないな・・・・本当にすまなかったな」
少し目を上げると、お兄様はとても苦しげな顔をしていた。その顔を見て私は直感した。
お兄様も私と同じ想いをしていたのかも知れない。
だって、私でさえここまで懊悩したんだもの。お兄様も私を見ていてやっぱり多少の苦悩はあったと思う。いいえ、思いたいな。
お兄様の首には、私の手の痕が赤く残ってた。私はそれを見てまた自分の犯した罪に胸が重くなった。
お兄様、アナタは優しすぎる。そんなに優しくされると私は離れたくなくなってしまう。アナタの温もりに依存してしまう。
契りあわなくても既に私はアナタなしでは生きられなくなってしまった。アナタ以外に他の誰かを愛することなんてもう出来ない。
叶ワナイ願イナノヨ。
解ってる。
ドンナニ想イ続ケテモ。
解ってる。
ドンナニ愛シテモ。
解ってる。
ドンナニ苦シンデモ。
解ってる。
叶ワナイノヨ。
それでも私は想い続ける。愛し続ける。苦しみ続ける。
未来なんていらない破滅なんて知らない。ただ、私は愛すだけだ。そして私は手にするのだ。
刹那な幸福を刹那な永遠を。
その後にのた打ち回る痛みや苦しみがくると解ってても。私は目の前にある愛しい人の温もりが欲しい。
嘲笑されても冷笑されてもいい。私は弱いからもう末期中毒患者だから。
荊の道を歩んだことを後悔したくないから。私は歩き続ける。刹那の幸福を、最愛な人の愛を泡沫だとしても独占するため。
残酷な現実を飲み下して私はアナタを愛し続ける。
「お兄様」
私はお兄様の首に腕を回して顔を近づけた。そして様々な想いを込めて囁いた。
「愛しているわ」
冷やかな月が夜空と街と私達を照らしていた。
完