ある日、俺はネコを拾った。
「なんだよ、腹でも減ってんのか? 仕方ねェな。ちょっと待ってろっ」
ひょいと抱き上げて、冷蔵庫を覗き込む俺の手を、ネコは、んなんな鳴きながら、ガジガジかじってくる。
「いてェって、かじってもうまかねェだろ。ん〜と、そうだな。鳥のささ身に……」
適当な皿に、ささ身を茹でてほぐしたものをのっけてやったら、喰う喰う。
「んな、んなな〜って、おまえ喰いながら、しゃべんなよ。っと、水もいるか……」
水の用意をしていたら、あいたくねェヤツがきた。
「なんだ、てめェも拾ったのか」
「はァ〜〜〜? てめェもかよ」
見れば、マリモの手の中に小さな毛だまりがいた。しかも、緑色の毛玉だ。
「てめェの子か?」
「バカか? てめェと一緒にすんな!」
悪ィな。俺の拾ったのは、金色のネコだったからな。
しかしな〜変な色のネコもいるもんだなァ〜
と、二人で首をかしげちまった。
どうするよ?
って顔で見たらよ。
「飼う」
即答かよ。
「船のネズミ捕りくれェすっだろっ」
二匹のネコが肩並べてエサにありついてんのを、んな嬉しそうに見ていられたら、俺は、ダメだって言えねェじゃねェか。
クソ甘ったるい顔しやがって。そういや、こいつ、小動物に弱かったな。
うわっ! こいつ、怖ェ〜〜〜〜〜っ! 金色のほうと遊びだしやがった。しかも、抱っこでちゅ〜〜〜だぁ? オイオイオイ、そりゃ反則だぞ。そこまで可愛がるかねェ。
緑のほうは、ん? 即行で寝てるじゃねェか! しかも、俺の上着が寝床かよ!
仕方ねェな。ナミさんの許可もらってくるか。
クソマリモがメロメロになっちまったから、飼ってやってくださいってな。エサはマリモの分からまわしときますからって。
緑のほうは「ドリ」
金色のほうは「キン」
って、ナミさん……マジですか!? なんつ〜〜〜ネーミングセンスなんだ、と脱力しそうになったが、俺は耐えた。
「クソ可愛い名前ですね」
にっこり笑ったつもりだが、引きつった顔はバレバレだったらしく、ナミさんは、
「あ〜なんだったら、緑はタマでもよくってっよ」
なんて言うもんだから、
「それだけは勘弁!!!!」
と叫んじまった。
キンとタマなんて、呼べねェだろ?
「キン!! タマ!! メシだぞ!! 」
呼べるか!!! んなもん!!!
仲がいいのか悪ィのか、知らねェが、キンとドリは顔つきあわせりゃ、
”フゥーーーーーーーッ!!! ”
”シャーーーーーーーッ!!! ”
どたばた追いかけっこが始まる。クソ可愛いキンに何してくれてやがる! ドリをひょいとつまみあげて
「仲よくしなきゃダメだろうが? てめェ、エサ減らすぞ? 」
と威嚇するが、「ンナッ! 」と一声鳴いて、俺の肩に上ったと思ったら、思い切り寝てるし。
キンはどこ行った? とあたりを見渡しゃ〜よ。クソマリモにじゃれついてやがる。
筋肉ダルマの串団子が振り下ろされる瞬間を狙って、ネコパンチだ。アホか!? そのうち死ぬぞ?
あきれ返ったマリモが、俺をちらっと見て、
「クリソツ」だと?
か〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!! バカがてめェ? キンのどこが俺に似てんだよ!?
んなこと言ったら、コイツはどうだよ? 俺の肩でグースカいびきまでかいて寝ているドリはどうなんだ? てめェそっくりじゃねェかよ!
マテ、コラ? 俺は何を考えている。マリモが俺の肩でお昼寝? さぶっ!!! さぶいぼが出ちまう!!! よせよせよせ!! 俺のバカ! 変なこと想像するんじゃねェ!
起きてるときは追っかけっこで、意地でも一緒にいるもんか! ってな感じなのによ。二匹のネコ寝るときはお互いの腹に頭をのっけて、ネコ団子になって寝ていやがる。クソ可愛ェ〜〜〜。どっちもオスだ、と思っていたら、意外にもキンがメスらしい。
ドリが追い掛け回すのは、アレか!? 俺は笑いがこらえきれねェ。
「ぐふっ……ぷくくっ! 」
「キモッ!!! てめェよがるんなら、普通によがれ! 」
「ば〜〜〜か。まだ気持ちよくもなんともねェよ」
何ゆえ、俺はお前の下に組み敷かれてんだよ。うおっ! カチンときたらしいな、首筋に攻撃開始か……んなにサカるな。
「なぁ、エロだるま」
「だれが、だるまだ! てめ……」
スッとキスしてやったら、赤くなっちまうてめェのことだ。
「キンな、メスらしいぞ」
きょとんとしたマリモにさらに言ってやった。
「ドリはオスだな。女の扱いがなってないとこ、てめ、そっくり。案外、やり方知らねェんじゃね? 」
言外に残した意味を察知したらしいエロだるまは、ガンガン腰使いやがって、おれは腰砕けになっちまう羽目に。言うんじゃなかった、と深く後悔しちまったじゃねェか。クソやろー。
正常位から1発。すかさず、バックから2発目。で、ちょい休憩で甘ったるい3発目。何回やりゃ気が済むんだ! てめェいい加減にしろって〜の。4発目なんてツラしやがるから、もうやめてくれって頼んじまったじゃねェか。
ドロドロに疲れきった朝、俺の顔にドリがジャンプしてきてよ。起こされた。
アレ? 夕べちゃんとドアに鍵までかったハズだが……
「んな〜〜んななん。んなぁ〜〜〜〜ん」
ゲッ! キンまでいるじゃねェか? ああ、そっか。こいつら、この部屋で昨日は寝てたんかよ。
おおあくびをかまして、クソマリモを見たら、にまにま笑いながら寝てやがる。クソむかつく。こちとら、てめェにやられまくって、腰もケツも痛ェのによ。満足しました! ってツヤツヤのツラみてたら、もう怒りマックスだ。
程よい具合に毛布に隙間を空けてやった。クソ楽しみだ。
トントントン。なんつ〜機嫌のいい音なんだ。おう、俺様、朝から機嫌がいいからな。さっきの悪戯の成果を、まだかまだかと待ち望んでっからよ。
けっけっけっ。早くやんねェかな、あいつ。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーっ!!! てん、め!!! イッテェーーーーーっ!!!! 離れろ、バカキン!!!!」
ぎゃっはーーーーーーーーっはっははっははっは!!!!
成功! 腹イテェ。 キンGJ!
実はな、おとといの朝な、キンのバカ、おれさまの朝立ちの竿にネコパンチしやがってよ。痛さに悲鳴あげた俺を笑ったあいつを恨んでんの。仕返しだ。いてェだろ。クソマリモ。
おお、ドスドスドスドス。怒りが足音にみなぎってるな〜クソマリモ。
「てめ〜〜〜〜〜な! 」
「んぁ? なんだよ」
青筋おったてたマリモン。けっけけっ、俺は何も知らんぜ?
「サンジくん、おはよ〜〜〜」
「あ〜ナミさん、おはようございます。コーヒーですか? それとも紅茶? 変わったトコでトマトジュースなんかいかがです? 」
けっけっけっ、ナミさん登場でナニも言えなくなってやんの。ザマミロ、俺を笑った罰だ。
「あっ! そうだ。サンジくん」
「はい! なんでしょ〜〜〜う! ナミさん! 」
「あのね、ドリなんだけど、今日はどう? 捕った? 捕ってない? 」
「ああ、えっと、その……」
ナミさんが言いたいのは、ネズミを捕ったか捕らねェかだ。
キンは結構働きもんらしく、まめにネズミを捕ってくるから、ナミさん的には問題ねェらしい。
問題はドリだ。寝てばっかしで、まったく捕ってこねェからな、ナミさんはおかんむりだ。 ごくつぶしに食わせるメシはねェ! ってことらしい。だがな〜ナミさん、そればっかしは仕方ねェんじゃねェ?
ネズミを捕るのが得意なヤツもいりゃ、鳥を捕るのが得意なものいるしよ。蛇捕るヤツもいるんだぜ。
チョッパーの通訳によりゃ、『ネズミは旨くねェ、おれは蛇が好みだ』って言うからよ。
”んな〜〜〜んなんななぁ〜〜〜”
おっ! タイミングよろしくキンとドリがきたな。
「な、ナミさん! 」
なんと、ドリがネズミを銜えてやがる。んでもって、それをキンの前にぽとり。
……これは求愛か? ネコのプロポーズなんか、初めてみたぞ!
「まっ、やればできるじゃない。よし! 」
お、ナミさんのOKもでたか。よかったな〜ドリ。てめ、サニーにいていいってよ。
その夜、またもや、マリモに襲われる俺を興味深げにドリが見ていた。
「バカ! ドリが見てっからヤメロ!!!! 」
「はん! あほくせっ! 」
お構いなしかよ。クソったれ。ガンガン腰振ってんじゃねェ〜〜〜つの!
”ぬわ〜〜〜〜〜ごっ! んななぁ〜〜〜〜ご! ”
いきなりのキンの鳴き声に、げっ! 何事と振り向いたら、
キンを押さえつけて、正常位で腰ふるドリがいた。
目が点になるってこういうことか!? クソマリモと目があっちまって、盛大に吹きだしちまった。
まぁ、その後はな、想像通りだ。
クソヤロー、覚えとけよ。絶対、明日もネコパンチの餌食にしてやら〜〜〜〜〜〜!!!!